与信管理の方法を解説!管理基準を設ける際のポイントも!

経理

Facebook にシェア
Pocket

企業間の取引では、取引を円滑に進めるために与信という取引形態を取ることが一般的に行われています。しかし、与信取引は代金を回収できないリスクを伴っているので、取引先の情報を収集して信用力を分析しつつ、取引額を調整し代金を確実に回収できるように与信管理をする必要があります。

この記事では与信の定義、与信管理の方法、与信管理基準を設けるポイント、注意すべきことについて解説します。

与信とは?


与信とは、企業間で取引を行う時に、商品やサービスを納入してからその代金の支払いを受けるまでの間、取引相手に対して信用を与え付与することです。納入と同時に代金の支払いが行われる場合には与信は問題になりませんが、納入から代金の回収までの間にタイムラグがある場合は、取引先を信用して取引を進める必要があります。

このような与信は企業間の相互信用に基づいていますが、同時に取引をしてもいい相手かどうかを見極めることと、どの程度までなら万が一代金の回収ができなくても諦めることができるかという限度を想定することでもあります。そして、リスクと信用のバランスが取引の限度額を決める際の基準になります。

与信管理とは?


与信管理とは、経営が安定していて倒産する恐れが低い取引先に対しては与信を大きくし、倒産する恐れのある取引先に対しては与信を縮小して取引を小さくしてリスクを回避もしくは低減することです。企業を運営していく以上、利益や売上を維持または伸ばすことが求められます。その目的を追求していく過程では、売掛債権や与信金額を増やすことは避けて通ることはできません。

しかし、与信金額を増やすということは不良債権の発生や代金回収の焦げ付きが発生するリスクを高めることにもつながります。そのような中で売掛債権を増やしつつ、損害の発生を抑制させるように管理を行うことが与信管理の目的です。

与信管理には大きく分けて信用調査と与信限度の設定・適用の2つの業務があります。信用調査は取引先の経営内容を吟味し、与信取引をしてもいいかどうかを判断するための情報を入手・分析することです。与信限度の設定・運用は、与信取引の最大限度額を算出して取引金額と与信金額の限度を設定することです。

与信管理の重要性

取引先が納入した商品やサービスの支払いを行う前に倒産してしまうと、売上代金が未回収となって貸し倒れが発生します。貸し倒れになるとそれまで努力して築いてきた利益が損なわれ、会社の財務内容を悪化させるのみならず与信管理が甘いとして対外的な信用失墜になりかねません。

また、仮に利益率が10%の取引で100万円の貸し倒れが発生したとします。その損失分を穴埋めするためには100万円÷10%=1,000万円の売上を確保しなければならず、会社として非常に大きな負担になります。

信用調査会社の東京商工リサーチが実施した調査によると、1998年には16.1%だった法的倒産(会社更生、民事再生、破産、特別清算)が2012年には82.7%と急速に増え、倒産形態の主流が明らかに変化しています。そして、私的倒産(銀行取引停止、内整理)と比べると法的倒産は売上金の回収が困難なため、事前の予防策として与信管理の重要性が増しているのです。

さらに、与信管理の役割は与信リスクを回避することだけではなく、取引先との関係を監視するという不祥事防止を担う役割も持っています。財務報告の信頼性を高めて内部統制としての機能を果たすという意味でも、与信管理は重要なのです。

与信管理を失敗したときに起こるリスクは?

資金繰りが悪化する要因として大きなものに、債権の貸し倒れおよび代金回収の遅延があります。これらが起きるのは主として対外的な要因によるものであり、発生する時期を予測することは困難です。このリスクを管理すること、すなわち与信管理を失敗すると取引の規模が大きい場合は会社の財務状況への影響も大きなものになります。

与信管理をおろそかにしている企業は、貸し倒れや代金回収の遅延に遭うリスクが大きく、大きな被害がいつ出るか分からない危険な状態にあると言えます。

与信管理の方法


与信管理を行う方法としては、信用調査を行う方法と調査会社に依頼する方法の2つがあります。以下にそれぞれについて解説します。

信用調査方法の種類

取引先の信用を調査する方法には、内部調査、直接調査、訪問調査、外部調査、依頼調査の5種類があります。

内部調査は、社内の関係部署が保有している情報を調査するものです。これは社内調査とも呼ばれ、社内に蓄積された多くの情報を調査すると共に、さまざまな情報を持っている営業担当者にヒアリングして情報を集めます。

直接調査は、取引相手の企業に直接コンタクトして情報を入手する方法です。直接調査には取引先企業に出向いて調査する訪問調査、取引先企業が遠方にあって訪問できない場合や追加で調査する場合に行う電話調査、そしてこれらの調査を補足するためのメール・FAX調査の3種類があります。

訪問調査では取引先の従業員から直接聞き取りを行います。また、取引先企業の従業員の働きぶり、倉庫の在庫状況、設備の稼働状況など数値には現れない部分を確認します。

外部調査は、取引先企業以外のリソースから情報を入手する方法です。代表的な手法は、官公庁に登録されている商業登記簿や不動産登記簿を閲覧する官公庁調査です。その他にもWebサイトや企業情報データベースから情報を得る検索調査、取引銀行や販売先、仕入れ先などから情報を入手する側面調査もあります。

依頼調査は信用調査会社に調査を委託する方法です。信用調査を専業としている会社に依頼することで自社調査では入手できない情報を入手したり、独自の評価基準で取引先を評価・判定したりすることができます。

おすすめの調査会社

ここではおすすめの調査会社として帝国データバンク(TDB)、東京商工リサーチ(TSR)、リスクモンスター(RISMON)の3社をご紹介します。

・帝国データバンク(TDB)
日本国内の信用調査としては60%のシェアを持っており、信用調査会社として1位の座を誇っています。現場・現物・現実の3現主義を貫いており、取引先企業の経営陣に直接取材したことなどを織り込んで報告を行います。また、事業内容、最新の業績、会社の特色などといった項目について、調査員の定性コメントも載っており報告内容も充実しています。

・東京商工リサーチ(TSR)
信用調査会社として20%のシェアを持っており、帝国データバンクに次ぐ国内2位の会社です。アメリカの大手信用調査会社であるD&B(Dun & Bradstreet)と提携しており、海外企業の信用調査に精通しています。調査の対象になる企業について契約を結ぶ前に、調査可能な内容と費用について事前に把握できる予備調査も行っています。

・リスクモンスター(RISMON)
同業他社4社の調査書も1つにまとめて報告を行う点が特徴です。調査対象は1社から対応しており、海外でもとくに中国企業に精通しています。

与信管理基準を設けるポイント


与信管理基準を設けるポイントとして、必要な情報の種類と入手先、収集した情報の評価、与信限度の設定の3つがあります。以下にそれぞれについて解説します。

必要な情報の種類と入手先

まず、安心して取引が行える相手であるかどうかの判断基準を策定します。業種が異なればビジネスモデルも異なるので、業種ごとに策定しましょう。

基準を策定したら信用度を評価するために必要な情報を収集します。必要な情報の種類は以下のとおりです。

・会社の規模・資本金金額・事業内容などの会社の基本的な概要
・損益・キャッシュフロー・貸借などの決算書に記載されている情報
・人物像や経歴などの経営者および役員に関する情報
・債権譲渡・不動産・動産譲渡などの登記関連情報
・事業の拡大・縮小・投資などの将来的な事業計画情報

このような与信管理基準となる情報を効率的に収集するために、営業部門内に与信管理部門を設置する例も多くあります。しかし、営業部門は売上を優先とするあまり設定した与信管理基準を守らずに取引を行うこともあるため、営業部門からは独立した形で与信管理部門を設置した方が中立性を守れます。

収集した情報の評価

情報を収集したら定量データと定性データの2種類に大別します。定量データは決算書などの数値情報、定性データは数値では表せない企業の特徴や性質に関する情報です。定量データ・定性データを分析・評価するには以下の3つの分析を用いましょう。

・計数分析
経営上バランスの取れた運営をしているか、適正な事業内容か、異常性はないかなどを分析します。

・比較分析
競合他社や同等規模の企業、業務展開地域内の他企業と比較してどのような特徴を持っているのか、または優劣はどうかといったことを分析します。

・予測分析
過去と現在の実績や状況から将来的な企業像を分析します。

いずれの場合も定量データでの評価を主としつつ、そこに定性データの評価を加えてより正確な評価を行うようにします。

与信限度の設定

情報を収集・評価したらそれを元に企業の信用度に応じて与信限度を設定します。取引可能な金額を目いっぱいに設定するのは危険なので、代金未回収の事態が起こるリスクを想定し、未回収が起きても経営に大きな影響がない範囲に設定します。ここでは与信限度額を設定する方法として、手形期間や売掛期間から設定する方法と、純資産とウェイトから設定する方法の2種類をご紹介します。

・手形期間や売掛期間から設定する方法
相手先と継続的に取引をしていく場合におすすめの手法です。基本的には手形機関や売掛期間に販売見込み額を掛けて設定します。

例えば月末締め・翌月末振出・振出日起算60日手形という取引を想定した場合では、取引日から起算して売上金を現金として回収できまるまで4ヶ月かかることになるので、月間販売見込額に4ヶ月を掛けた値を与信限度額とします。

・純資産とウェイトから設定する方法
単発での取引が多い場合におすすめの手法です。これは取引先が保有している純資産額から代金未回収の許容金額を設定し、それに各取引先の信用度に応じて決めた率(ウェイト)を掛けて設定します。

7段階から10段階程度のウェイトを設け、評価の高い取引先には高いウェイトを、評価の低い取引先には低いウェイトを掛けます。

与信管理で注意すべきこと


与信管理で注意すべきこととして現場の情報共有と与信調査のコストの2点が挙げられます。以下にそれぞれについて解説します。

現場の情報共有

与信管理部門が営業部門とは独立しているならば、営業現場との情報共有が大切になります。営業担当者は販売活動に専念し、与信管理は経理部などの管理部門に任せればいいというのは間違いです。

管理部門が取引先を分析するには、第一線で取引先に対応している営業担当者との現場の情報共有が不可欠です。与信管理の主役は現場の営業担当者と言っても過言ではないでしょう。

与信調査のコスト

取引先の情報を収集する際、どこまでやるかは与信調査にかかるコストを鑑みて決めなければいけません。例えば一回の商取引で10万円の利益が出る案件に対し、与信調査に30万円費やしていては意味がありません。

与信調査は会社の利益を守り、取引を安全に進めるために慎重に進めなければなりませんが、迅速に行動しないとビジネスチャンスを逃してしまいます。自社で与信調査を行うコストと時間、外部の調査会社に依頼するコストと時間を天秤にかけ、与信調査の実務ルールを決める必要があります。

「請求まるなげロボ」なら与信管理も自動化できる!

与信管理を自社で行うのが難しいと思われている方は、「請求まるなげロボ」をご活用ください。請求まるなげロボとは、与信管理・請求・入金の各プロセスにおけるリスクをなくし、業務の全てを自動化する請求管理代行サービスです。

契約前の与信調査も代行いたしますので、与信調査に時間を割く必要はありません。取引先の会社情報と取引金額を共有するだけで、与信管理も請求も督促も消込も全て請求まるなげロボが代行します。人的リソースに依存しないので、取引先を増やしても事務処理の負担が増えることはありません。

取引先の与信審査にかかる日数も最長で3日なので新規取引を開始するまでの時間が短く、スムーズに契約に入れます。また、契約をした後も請求まるなげロボが与信管理を行い、継続的に取引をモニタリングしていきます。さらに、売掛金を100%保証するので、督促の必要もなく、貸し倒れのリスクもありません。

まとめ

企業は与信に関するリスクが顕在化した時に備えて、影響度を考慮したリスク管理をしていく必要があります。与信リスクは企業経営環境に伴うリスクであり、同時に管理体制を構築することで防止できるリスクでもあります。しかし、与信管理には手間と時間がかかるのも事実です。スムーズかつ確実な与信管理を行いたい企業は、ぜひ請求まるなげロボの利用をご検討ください。

監修
【監修】藤田 豪人 株式会社ROBOT PAYMENT 執行役員

2019年当社に入社、執行役員に就任。
当社に入社以前は株式会社カオナビにてコーポレート本部長、複数の情報IT企業にてCMOなどを歴任。
現在は、当社のフィナンシャルクラウド事業及びマーケティング全般を統括。
  • 請求管理クラウドサービス「請求管理ロボ」
  • 請求管理ロボ