売掛金は相殺処理できる?相殺領収書の発行方法も解説!

請求業務

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同じ取引先に債権・債務を持つ場合、同じ金額を「相殺」して領収書や請求書の作成の手間とコストを省くことがあります。請求管理業務において処理を簡略化することは業務効率化や生産性向上につながりますが、方法を間違えてしまうと取引先との信頼関係を損なうリスクがあります。

そこで、この記事では突然取引先から相殺をお願いされたときでも問題なく対処できるように、処理の方法から領収書・請求書の書き方まで詳しくご紹介します。また、記事後半にて請求書の発行など請求管理業務をサポートする「請求管理ロボ」のご紹介をしております。ぜひ最後までご覧ください。

売掛金の相殺処理とは?


製品やサービスの売買はその取引毎に代金の支払いが行われますが、BtoB取引においては代金を後払いする「掛け払い」が一般的です。売掛金は将来的に入金される「資産」にあたり、買掛金は将来支払いが必要な製品やサービスの購入代金で「負債」に該当します。このとき、同じ取引先で発生している債権債務の対当額で帳消しにしたり、差し引き額で減額したりする処理を「相殺」といいます。

両者の間で合意があれば相殺処理は可能

基本的には一定の条件を満たし両者の間で合意が済んでいれば相殺することができます。合意が取れていればお互いの売掛金と買掛金を対当額で帳消しや減額させる処理を行うことが可能です。なお、片方だけが相殺してしまうと相手に金銭的負担を与えてしまう場合があり、信頼関係を失うことにつながります。必ずお互いで意思確認を行い、帳消しや減額に同意を得たうえで処理を行うようにします。

相殺処理のメリット

相殺は会計上の負担を減らすメリットがあり、相殺を行うことで買掛金の返還債務を免れたことになります。買掛金の支払いを行ったのと同じ効果が発生しますので、現金が手元から動くことはありません。さらに、請求管理業務において発生する手数料・印紙代などの各コストを削減することも可能です。

そして、売掛金の回収が困難な場合の対処方法にできる点もメリットです。掛取引には貸し倒れや支払い遅延といったリスクが必ずつきまといます。代金の未回収が積み重なってしまうと、キャッシュフローが悪化して経営の健全性を保つことが難しくなります。そこで、相殺を行うことで回収の手間と現金持ち出しを減らすことが可能です。

相殺処理のデメリット

デメリットは領収書や請求書の発行などで、経理担当者の事務負担が増えることです。継続して取引が行われる場合においては、毎月毎に領収書を発行する手間と時間が発生してしまいます。さらに、相殺を行う取引先が複数ある場合には、帳簿からそれぞれの売掛金と買掛金を確認するなどといった煩雑な業務が発生します。

相殺処理の仕訳

売掛金と買掛金の仕訳からご説明します。同じに企業に対して商品を1,000,000円で売り上げ、商品を800,000円で購入した際の仕訳は以下のようになります。

(借方)売掛金 1,000,000円  (貸方)売上 1,000,000円
(借方)仕入れ 800,000円  (貸方)買掛金 800,000円

この仕訳を相殺すると、以下のようになります。

(借方)買掛金 800,000円  (貸方)売掛金 800,000円

この例では相殺が可能となるのは対当額800,000円までです。したがって、売掛金の200,000円は保持されます。その後、入金日に売掛金200,000円の入金確認が済めば相殺処理完了です。本来であれば1,000,000円の回収をしなければならず、さらに800,000円の買掛金の支払いをする必要がありました。しかし、その都度会計処理が必要だったはずの作業を、相殺によって簡略化することができます。

相殺領収書とは


債権債務を持つ両者が行った相殺の事実を証明する文書が「相殺領収書」です。詳しくご紹介します。

通常の領収書との違い

通常のBtoB取引で用いられている領収書は、代金を支払ったこと・支払われたことを証明するために代金を受け取った側が発行する文書です。これには二重請求された場合の反証や二重払いを防ぐ役割があります。

一方で相殺領収書は金銭の授受の証明するものではなく、お互いの債権債務を打ち消したことに合意済みであることを証明した文書です。ちなみに、相殺処理はトラブルが起こったとしても反証・立証がしやすいので、領収書の発行自体がされないこともあります。しかし、相殺を実施した詳細がわかる文書であることは間違いありませんので、できるだけお互いに発行して取り交わすことが望ましいとされています。

相殺領収書が必要な場面

税法上は金銭の授受を証明する文書ではないため必ず発行する必要はありませんが、どちらか一方が発行する場合には同額の相殺領収書を交換しなければなりません。

デメリットの項目でもご説明したように、相殺領収書の発行は担当者の業務量を増加させてしまいます。そのため、場合によっては業務効率化を優先して発行を行わないケースもあり、やり取りを交わすかどうかは取引先の方針や関係性でも変わってきます。

ただし、どちらか一方が相殺領収書を発行した場合は必ず双方での交換が必要です。どちらか一方だけが発行してしまうと、片方だけの債務が消失したことになってしまいます。例えば、片方だけが相殺領収書を発行して片方が発行しなかったとすると、相殺の事実を証明できません。すると、自社の請求分のみが領収されたことになり、取引先の請求分を支払う必要が生じてしまいます。

収入印紙は基本的に必要ない

相殺領収書は金銭の授受を証明する文書ではないため、収入印紙は基本的に必要ありません。税法上の第17号文書で規定する金銭の受取書とは、金銭を受け取ったものが受領した事実を証明するもので、相殺領収書はこれに該当しません。

また、領収書に相殺金額を含めて記載している場合に必要な収入印紙は、相殺にあたる金額を含めずに計算を行います。そして、金銭の授受によって受領したことではないことを明示するため、「上記金額を相殺で受領した」という但し書きを忘れずに記入します。

相殺領収書の書き方


ここからは具体的に相殺領収書の書き方について詳しくご紹介します。

金額

記入する金額については「相殺のみ」と「一部だけ相殺」のケースがあり、それぞれで記入する金額や内訳が異なります。

・相殺のみ
金額欄に記入するのは相殺する金額だけで構いません。両者同じ金額の売掛金がある場合や、取引相手から相殺領収書が発行された場合は、同じ金額を記入するようにします。

例1:自社から取引先に対して50,000円の請求、取引先からも50,000円の請求を相殺した時の記載金額は50,000円です。

例2:取引先から100,000円を相殺した領収書が発行された時、自社も100,000円記載のものを発行します。

・一部だけ相殺
売掛金・買掛金の一部を相殺する際は、相殺金額と領収金額で別々に発行する、もしくは内訳に相殺分を記入してまとめて発行する方法があります。一部だけ相殺で相殺する金額だけを記載して別々に発行する場合は以下のようになります。

例:自社の売掛金250,000円、取引先の買掛金100,000円の状態で、250,000円から買掛金100,000円を相殺する場合、相殺領収書の記載金額は100,000円(但し書きに相殺と記入)で発行し、領収書の記載金額は150,000円で発行します。

一部相殺で領収額をまとめて記載する場合は以下のようになります。

例:自社の売掛金250,000円、取引先の買掛金100,000円の状態で、250,000円から買掛金100,000円を相殺する場合、領収書の記載金額は250,000円で但し書きに「内訳:買掛金と相殺100,000円」と記入します。

日付

記載する日付には特別な決まりは定められていません。しかし、相殺の事実が後に第三者からでも確認しやすいようにすることが望ましいです。なるべく取引先と記載する日付を合わせておいた方が何かと都合が良いでしょう。なお、一部相殺のケースにおいて金銭の授受がある場合には、金銭を受け取った日付を記入します。

但し書き

相殺領収書の但し書きは、相殺の事実を証明する意味を持つため最も重要な意味を持ちます。一般的なフォーマットを流用して証明する文書を発行するため、但し書きを使って「相殺を証明する文書であること」を明示します。

但し書きで相殺の事実を明確に記載することが重要な理由は、明確に記載しなかった場合には税法上通常の領収書とみなされるからです。通常の領収書としてみなされた場合、5万円以上の取引のものについては収入印紙を貼り付ける義務が生じます。

相殺処理を行う場合の請求書の書き方

請求書でもこれまでご説明してきた相殺領収書と同じように相殺を行うことが可能です。この場合においても、領収書で相殺処理を行う時と同様に両者の合意が済んでいることが前提ですので、事前に取引先と連絡・確認を行ったうえで相殺処理を行う請求書を作成します。

相殺処理を請求書に記載して明らかにする場合は、相殺後の金額だけを記載するだけでは成立しません。正しくは相殺前の請求金額を記載した後で、相殺した金額をマイナス表記で記載します。そして、相殺がいつ・何の取引で行われたものかを併せて明確に記載する必要があります。

その他に、請求金額欄にはもとの金額を記載し、別紙を用意してそこに相殺する金額を記載する方法もあります。または「振込金額は相殺した金額を差し引いた額をお願いします」としても良いでしょう。これは両者それぞれの帳簿において相殺の事実を明確にするために確実に行わなければなりません。

また、請求書は取引が発生するたびに発行されるものです。ところが、相殺処理をした請求書の場合は、複数の取引を一つにまとめた請求書が1通だけ作成されることになります。この場合では取引の詳細については明細でしか確認できなくなってしまいます。そのため、大きな金額の取引で相殺している場合は、双方の合意が済んでいて相殺が行われたという証明が必要なため、請求書の提出を求められる場合があります。

なお、このとき作成する請求書においても、金銭の授受を証明するものではなく、相殺して取引の詳細が確認できる書類であれば良いため、収入印紙を貼付けする必要はありません。

請求書での相殺も事前に両者で合意があれば行うことに問題はありません。ただし、上記したように請求書に相殺したことが明確にわかる記載をしたり、別途領収書を発行したりと両者間でルールを設定して処理を行う必要があります。

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相殺処理を仕分けする際には「入金消込」業務が発生します。入金消込は数件であればなんら問題はありませんが、処理数が膨大になると非常に煩雑な業務になってしまい、ミスを誘発するリスクが高まります。取引先との信頼・信用のうえで実施する相殺に不備があると、会社の信用を著しく損なうため絶対にミスが許されません。

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まとめ

売掛金・買掛金の相殺は手間やコストの削減できる方法です。金銭のやり取りが実際に行われる取引ではないため、領収書や請求書を用いて相殺の事実が確実になるようにすることが大切です。また、両者間のみならず第三者が見ても取引額などが正確に把握できる文章を作成しましょう。

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監修
【監修】藤田 豪人 株式会社ROBOT PAYMENT 執行役員

2019年当社に入社、執行役員に就任。
当社に入社以前は株式会社カオナビにてコーポレート本部長、複数の情報IT企業にてCMOなどを歴任。
現在は、当社のフィナンシャルクラウド事業及びマーケティング全般を統括。