toggle

サブスクは儲からないといわれる理由、儲けるための仕組みとポイント

サブスクは儲からないといわれる理由を、音楽業界における「CDとサブスク形式の配信サービス」を比較しながら解説。音楽業界に限らず、幅広い業界・市場における「儲からないサブスク」の特徴も紹介します。サブスクで儲けるための仕組みやポイントも紹介するので、自社のビジネスモデルの見直しにぜひ役立ててください。

音楽業界に見る、サブスクは儲からないといわれている理由

音楽業界において、「サブスクは儲からない」という声が度々聞かれます。その理由は、従来のCD販売と比較した際に、アーティストへの収益構造が大きく異なる点にあります。

CDは1枚売れるごとに一定の金額がアーティストに還元される仕組みですが、サブスクは楽曲が再生された回数に応じて収益が発生します。1再生あたりの収益も低く、楽曲が数多く再生されない限り、アーティストの収入は微々たるものとなってしまいます。

また、サブスクの収益はプラットフォーム事業者、レコード会社、アーティストといった複数の関係者間で分配されるため、アーティストに支払われる金額はさらに少なくなります。特に新人アーティストや知名度の低いアーティストは、楽曲の再生回数が伸び悩む傾向にあり、サブスクからの収入だけで生計を立てることは困難です。

さらに、サブスクは定額制であるため、ユーザーは追加料金なしで数多くの楽曲を聴けます。CDを購入するよりもサブスクを利用する方がお得だと感じるユーザーが増え、CDの売り上げが減少しています。CDの売り上げ減少はアーティストの収入減に直結することも、サブスクは儲からないという声につながっているのでしょう。

CDとサブスクでの「アーティストへの収益」を比較

CDとサブスクでは、アーティストへの収益構造が大きく異なります。CDの場合、アーティストは1枚の販売につき一定の金額を受け取ります。たとえば、CDの価格が3,000円の場合、アーティストには10%程度(計算をわかりやすくするための数値であり、実際の相場とは異なります)の金額が支払われるとすると、1枚あたり300円の収入となります。

サブスクの場合、アーティストへの収益は楽曲の再生回数に応じて支払われます。しかし、1回の再生あたりの単価は非常に低く、1円以下であることも珍しくありません。楽曲が数百万回再生されなければ、CDと同じだけの収益を得るのは難しいといえます。

たとえば、あるアーティストの楽曲が100万回再生されたとします。1再生あたりの単価が0.1円の場合、アーティストの収入は10万円となります。これは、CD333枚分の売り上げに相当します。CDであれば数千枚から数万枚の売り上げを記録するアーティストも珍しくありませんが、サブスクで同等の収益を得るには、数百万回以上の再生が必要となるのです。

このように、CDとサブスクでは、アーティストへの収益構造が大きく異なるため、サブスクは儲からないという声につながっているのです。

儲からないサブスクの特徴

サブスクリプションサービスは、安定的な収益が見込めるビジネスモデルとして注目されていますが、成功しているとはいい難いサービスも存在します。その原因は、サービス内容や運営方法に問題があるケースが多いです。

具体的にどのようなサブスクが儲からないのか、特徴を紹介します。

そもそもサブスク(定期利用)に適さないサービスである

サブスクは、顧客に継続的に利用してもらうことで収益を上げるビジネスモデルです。そのため、そもそも定期的な利用に適さないサービスは、サブスクに向いていません。極端な例ですが、冠婚葬祭のようなライフイベントに関わるサービスは定期的な利用が見込めません。

また、顧客のニーズや嗜好が多様化している現代において、画一的なサービスを提供するだけでは顧客の継続利用を促すことは難しいでしょう。顧客のニーズに合わせた柔軟なサービス提供ができない場合、サブスクは顧客にとって魅力的な選択肢ではなくなってしまいます。

サブスクのお得感だけを前面に押し出している

「お得」という言葉は顧客の購買意欲を刺激する効果がありますが、サービスそのものの価値が低ければ、一時的な利用に留まってしまいます。価格が安くても、利用したいと思えるほどの魅力がなければ、顧客は継続利用には至りません。

また、サブスクは定額制であるため、利用頻度が低い顧客にとっては費用対効果の面で魅力を感じられない場合があります。たとえば、月に1回しか利用しないサービスに月額料金を支払うことは、顧客にとって負担に感じるでしょう。

サブスクで成功するためには「お得感」だけでなく、サービスそのものの価値を高めることが重要です。顧客が継続的に利用したいと思えるような、質の高いサービスを提供することで、長期的な収益確保が可能となります。

価格設定が不適切

サブスクの価格設定は、サービスの継続率に大きく影響します。高すぎる価格設定は顧客の利用意欲を削ぎ、安すぎる価格設定は収益の確保を困難にします。適切な価格設定を行うためには、サービスの価値や競合サービスの価格、ターゲット層の支払い能力などを考慮しなけれなりません。

価格は一度決めたら終わりではなく、市場の変化や顧客の反応に合わせて柔軟に見直していくことが重要です。価格変更は顧客の反発を招く可能性もありますが、適切な価格設定は、長期的な収益確保に不可欠です。

既存の顧客やファンを無視している

新規顧客の獲得に注力するあまり、既存の顧客やファンをないがしろにすることは、サブスクビジネスにおいて致命的なミスとなり得ます。既存顧客はすでにサービスの価値を理解し愛着を持っているため、適切なアプローチを行えば、長期的な収益源となる可能性が高い存在です。

しかし、既存顧客向けの特典やサービスが不足していたり、コミュニケーションが疎かになっていたりすると、顧客は不満を抱き解約してしまうかもしれません。サブスクで成功するためには、新規顧客の獲得だけでなく既存顧客の維持にも力を入れ、良好な関係を築くことが重要です。

ユーザーからの反応を集計・分析していない

サブスクサービスの改善や成長には、ユーザーからのフィードバックが欠かせません。しかし、ユーザーの声を集めるだけで満足し、具体的な分析や改善につなげられていないケースも少なくありません。

ユーザーアンケートやレビュー、SNSでの反応などを定期的に収集し、サービスの改善点や新たなニーズを把握することで、顧客満足度の向上や解約率の低下につなげられます。また、データ分析ツールなどを活用し、ユーザーの行動パターンや利用状況を分析することで、より効果的なマーケティング施策を展開することも可能です。

「顧客と一緒にサービスを創っていく意識」がない

サブスクは、顧客との長期的な関係を築くビジネスモデルです。そのため、一方的にサービスを提供するのではなく、「顧客と一緒にサービスを創っていく」という意識を持つことが重要です。

顧客の声に耳を傾け、要望や意見を積極的に取り入れることで、顧客満足度の向上やサービスの改善につなげられます。また、顧客とのコミュニケーションを密にすることで、サービスへの愛着やロイヤリティを高めることも可能です。

顧客を単なる消費者としてではなく、サービスを共に創り上げていくパートナーとして捉えることで、サブスクビジネスはより持続可能なものとなるでしょう。

サブスクで儲けるための仕組み

サブスクで成功するためには、適切な収益モデルを構築することが不可欠です。ここでは、代表的な2つの収益モデル、「プラットフォーム運営者」と「コンテンツ提供者」の仕組みについて解説します。それぞれの特性を理解し、自社のサービスに最適なモデルを選択することが重要です。

プラットフォームの運営者

プラットフォーム運営者は自社でコンテンツを制作するのではなく、他の事業者や個人が提供するコンテンツを集約し、ユーザーに提供する役割を担います。プラットフォーム運営者の主な収益源は、ユーザーから徴収する月額利用料や年会費です。

このモデルのメリットは、コンテンツ制作にかかるコストやリスクを負う必要がない点です。プラットフォーム上でのコンテンツの流通量やユーザー数を増やすことで、収益を拡大できます。

しかし、プラットフォーム運営者は魅力的なコンテンツを確保し、ユーザーを獲得し続ける必要があります。競合サービスとの差別化や、ユーザーニーズに合わせたコンテンツの拡充も求められます。プラットフォームの使いやすさや機能性も、ユーザーの継続利用に影響を与える重要な要素です。

プラットフォームの構築や維持にかかる費用も莫大で、「コンテンツ制作にかかるコストを負う必要がない」といっても、それ以上に多額のコストがかかることも多いです。

コンテンツ提供者

コンテンツ提供者は、自らが制作したコンテンツをプラットフォーム上で提供し、収益を得る役割を担います。主な収益源は、コンテンツの再生回数やダウンロード数に応じた報酬です。

このモデルのメリットは、自らのコンテンツ制作に集中できる点です。プラットフォームの集客力やブランド力に頼ることで、より多くのユーザーにコンテンツを届け、収益を拡大できます。

しかし、コンテンツ提供者は、プラットフォームのルールや収益分配の割合に縛られやすいです。また、プラットフォーム上で他のコンテンツとの競争にさらされるため、質の高いコンテンツを継続的に制作し、ユーザーの支持を得ることが重要です。

サブスクで儲けるためのポイント

サブスクで成功を収めるには、サービスの特性や市場環境を踏まえ、適切な戦略を立てることが重要です。ここでは、サブスクビジネスを成功に導くための具体的なポイントを3つ紹介します。これらのポイントを参考に、自社のサービスを見直し、改善していくことで、収益向上を目指しましょう。

本当にサブスクが適しているのか考える

サブスクは魅力的なビジネスモデルですが、すべてのサービスに適しているわけではありません。自社のサービスが本当にサブスクに適しているのか、慎重に検討する必要があります。

たとえば、高額な商品や頻繁に利用されないサービスは、サブスクには向いていないかもしれません。顧客が継続的に利用するメリットを感じられなければ、解約率が高くなってしまうでしょう。

また、競合サービスとの差別化も重要です。すでに類似のサブスクサービスが存在する場合、価格やサービス内容で差別化を図らなければ、顧客を獲得することは難しいでしょう。

自社のサービスの特性や市場環境を分析し、本当にサブスクが適しているのか、慎重に見極めることが大切です。

既存のプラットフォームを利用しない

サブスクサービスを始める際、既存のプラットフォームを利用する選択肢もありますが、必ずしもそれが最適な選択とは限りません。

既存のプラットフォームを利用するメリットは、初期費用を抑え、短期間でサービスを開始できる点です。しかし、プラットフォームのルールや手数料に縛られるため、自由度が低いというデメリットもあります。

また、プラットフォーム上には多くの競合サービスが存在するため、自社のサービスが目立たず、顧客獲得が難しい場合もあります。

自社で独自のプラットフォームを構築することで、サービスの自由度を高め、ブランドイメージを確立できます。長期的な視点で考えると、独自のプラットフォームを持つことは、競争優位性を築くうえで有効な手段となるでしょう。

運営費を抑える方法、ツールを探す

サブスクサービスの運営にはコンテンツ制作費やシステム開発費、マーケティング費用など、さまざまなコストがかかります。これらの費用を抑えることは、収益向上に直結するため、非常に重要です。

たとえばコンテンツ制作においては、外部のクリエイターに依頼するだけでなく、自社で制作したりユーザーからコンテンツを募集したりすることで、コストを抑えられます。

システム開発においては、オープンソースのソフトウェアを活用したり、クラウドサービスを利用したりすることで、初期費用や運用コストを削減できます。個人でオンラインサロンやコンテンツ配信サービスを運営するなら、Discordのような無料のツールを利用するのもいいでしょう。

さまざまな方法やツールを検討し、自社のサービスに最適な方法で運用コストを抑えることが、サブスクで成功するための重要なポイントです。

サブスクで儲からない主な原因は戦略や収益構造、ユーザー視点の欠如

サブスクリプションサービスは、安定的な収益が見込めるビジネスモデルとして注目されています。しかし成功するためには、適切な戦略と収益構造、そしてユーザー視点を持つことが欠かせません。

既存のプラットフォームを利用するのではなく、独自のプラットフォームを構築することで、競争優位性を築くことも可能です。運用コストを抑えるための工夫や、顧客との長期的な関係構築も、サブスクビジネスの成功に欠かせない要素です。

これらを踏まえ、自社のサブスクサービスを見直し改善していくことで、収益向上を目指しましょう。

監修
【監修】藤田 豪人 株式会社ROBOT PAYMENT 執行役員

2019年当社に入社、執行役員に就任。
当社に入社以前は株式会社カオナビにてコーポレート本部長、複数の情報IT企業にてCMOなどを歴任。
現在は、当社のフィナンシャルクラウド事業及びマーケティング全般を統括。
関連記事