【次世代の収益モデル】リカーリングとは?仕組みからメリットまで解説
“recur”は「再発する」「繰り返される」という意味を持つ言葉で、リカーリング(Recurring)は継続的に収益を上げるビジネスモデルという意味で利用されています。大企業も中小企業も、リカーリングを取り入れることで「継続的に収益が生み出せる」仕組みを構築できます。
従来であれば、商品を売って一度きりの収益を得るのが一般的なビジネスモデルでしたが、これからはシェアリングエコノミーや継続課金といった方法の収益モデルがオーソドックスになっていくでしょう。勝ち組になれるビジネスを構築するためのリカーリング、その仕組みやメリットを解説します。
リカーリングとは、1つの商品を販売することで継続的な利益を生み出せるビジネスや、商品を販売せず、サービスだけを継続して利用してもらうことで利益を生み出すビジネスのことです。
最も有名なのが、プリンターで有名な「キャノン」の例です。キャノンでは、原価に満たないほどの安価でインクジェットプリンターを販売し、専用のインクを高額で販売、本体ではなく付属品によって継続的に安定して利益を生み出すモデルを確立しました。
インターネットビジネスでは、コンテンツへの課金もリカーリングの一つのモデルです。新聞社や出版社では、認証システムを利用してデジタルコンテンツを月額料金で提供し、現在では多くの人が利用しています。こういったコンテンツの課金は、継続課金だけではなく都度課金も含まれており、一つの契約で大きな利益を生み出す可能性を秘めています。
最近活発になっているのはシェアリングエコノミーによるビジネスです。例えばカーシェアやサイクルシェアといったものが有名ですよね。数名で1台の車をシェアするカーシェアは、都心部を中心に人気を集めています。
リカーリングはこのように、幅広いビジネス形態に対応します。古いものでは、有料衛星テレビやケーブルテレビの設置料金からの継続課金、生命保険、映画やドラマのシリーズ物も、広い意味でのリカーリングに当たります。
媒体はソフト・ハードを問わず、ビジネス展開する業種も問わないのがリカーリングの特徴です。ハードおよびソフトの開発や新しいIoTシステムを生み出すことができれば、中小企業でもリカーリングによって成功を収めることができるでしょう。
時代は「所有から利用へ」。豊かな時代に生まれた子供たちが大人になった現在、物欲や所有欲は日本全体で薄れつつあります。このようなことから、これからはリカーリングビジネスの時代だと言われています。
目次
リカーリングビジネスのメリット
リカーリングビジネスの最大のメリットは「利用者がいる限り収益が続く」ことでしょう。これまでは物やサービスが売れなければ収益が出ませんでしたが、リカーリングでは一度の契約で長期間収益を得ることができます。
顧客を取り込める
コンタクトレンズを例に考えてみましょう。以前は、長期間同じものを利用するために高いコンタクトレンズを購入していました。現在では、毎日、毎週、毎月取り換えるタイプの新しいコンタクトレンズが主流ですよね。
4万円で購入したコンタクトレンズを10か月使用したときと、毎月5千円でコンタクトレンズを購入したとき、どのような違いが生まれるでしょうか。
10か月間の収益を見ると、高価なコンタクトレンズの場合には、売れたその時しか売り上げはカウントされません。しかし毎月定期購入してもらうことで、毎月一定額の収入を得ることができます。
ここにはもう一つの利点が隠れています。それはリカーリングによって「定期顧客になる確率が上がる」というメリットです。
高価なコンタクトを1度きりしか買わなかったとき、あなたは次も確実にそのお店でコンタクトレンズを購入すると言い切れますか?次に買う時には、もう少し安いお店を探して購入するでしょう。もしくは、知り合いのお店を紹介されてしまったり、新しいサービスや商品に心奪われてしまうことも考えられます。
もし、コンタクトを定期購入していたら、しかもそれが「定期便」で毎月自宅に届くのであれば、わざわざ新しいお店を苦労して探す気もなくなりますよね。
リカーリングビジネスは、「より顧客ファーストなサービス」を展開し、顧客をつかんで離さないことでどんどん利益を上げていきます。IoTであらゆるものがインターネットとつながるようになった現代では、「わざわざ手間をかけて高額の商品やサービスを購入しない」のが当たり前になってきました。
「高付加で高額」よりも、「手間なく安価でしかも継続できる」ものが売れる時代です。
販売戦略が定めやすい
リカーリングビジネスを行う上での利点はもう一つあります。リカーリングビジネスは、顧客を一定数獲得することで顧客の購買や視聴データを活用できるようになります。そのことでマーケティングが容易になり、データをもとに今後の販売戦略がしやすくなります。
現在の顧客はどのような層が厚いのか。30代女性がメインであれば、さらにファッショナブルな要素をプラスするサービスを加えたり、50代男性がメインであれば体力向上に貢献できるサービスを加えたりと、具体的な販売戦略をサービス開始の早期から立てていくことができます。
リカーリングビジネスのデメリット
リカーリングビジネスは、顧客数と継続率が重要となります。ビジネスを開始した当初は、当然顧客数は0ですので、一定数の顧客を達するまでの資金力は必要です。事前にしっかりとした資金計画を立て、余裕を持ってビジネスを展開しましょう。そして、獲得した顧客がすぐに離脱するような状況では、顧客獲得コストを考えると収益をあげられません。顧客の多くが利用し続けることがビジネス成立の前提となるため、提供する商品・サービスの質はごまかせません。常に質のアップデートが必要となります。
また、リカーリングビジネスでは従来の売り切り型と比べて、顧客一人当たりの管理業務が増え煩雑化します。顧客数増加に成功したとしても、それに比例してバックオフィスの人数も増やさなければいずれ対応できなくなり、顧客満足度の低下・解約率増加につながります。もし人を増やせないのであれば、業務の一部をシステム化・自動化する必要が出てきます。
リカーリングを成功させるカギを紹介!
リカーリングを成功させるためには、きちんとポイントを把握しておくのが重要です。リカーリングを成功させるカギは、以下の3つです。
1つ目は「料金以上の価値を提供する」ことが挙げられます。どんなに自信のある商品やサービスであっても、ユーザーが料金以上の価値を感じなければ、飽きられてしまう可能性があります。顧客が飽きずに長く利用し続けられるように、料金以上の価値を提供するのが大切です。
2つ目に「顧客のニーズを把握する」こともポイントです。顧客が求める商品やサービスを常に考えて提供することで、満足感を高められます。さらに、顧客が継続利用しやすいように電話窓口を設けるなど、サポート体制を整えるのも重要です。どうしたら商品やサービスをずっと利用し続けたくなるのか、顧客の立場になって考えてみると良いでしょう。
3つ目は「自社だけの強みを確立する」ことが挙げられます。顧客の興味を引くような新しい商品やサービスは、世にどんどん生まれています。競合他社との差別化を図れる、自社ならではの強みを見つけておくのが大切です。継続的に使用したいと思わせるような、自社ならではの商品やサービスを提供しましょう。
リカーリングでの注意点とは?
リカーリングビジネスを始める際は、以下の点に注意するのが肝心です。まず、注意点として挙げられるのは「ある程度資金を蓄えておく」という点です。リカーリングビジネスを始めたからといって、すぐに収益につながるとは限りません。ある程度の顧客を獲得できるまで、事業を続けるための資金力が必要になります。あらかじめ、資金計画をきちんと立てておきましょう。また、ある程度資金を蓄えたうえで、ビジネスを展開するのが大切です。
さらに、「原因の究明を徹底して行う」のも注意すべきポイントとして挙げられます。利益取りこぼしの際に、原因をきちんと究明し、常に改善していくことができなければ、顧客が離脱してしまうリスクが高まります。離脱を防ぐためにも、究明は徹底して行いましょう。また、「市場を常に把握しておく」のも注意点の一つです。市場の動きやターゲットをきちんと把握できていないと、時代に合うビジネス展開をするのがむずかしくなります。時代やニーズに合うビジネス展開を行わないと、顧客が一気に離れてしまう可能性があるため注意が必要です。現在の市場はどうなっているのか、またターゲットとなる顧客はどのような年齢層が多いのかなど、常にアンテナを張って情報の収集・分析を行いましょう。
たとえば、提供しているのが動画配信サービスだとして、利用している顧客の主な年齢層が20~30代の女性である場合は、よりファッションやトレンドを意識したコンテンツを作成するのも一案です。また、利用者の主な年齢層が50~60代の男性の場合は、体力向上や健康維持に役立つコンテンツを加えるのも良いでしょう。市場やターゲットを常に意識し、具体的な販売戦略を考えることで、リカーリングビジネスに失敗するリスクを低減できます。
まとめ
リカーリングビジネスは、従来の売り切り型に比べて多くのメリットがあり、顧客数増加・収益向上を見込めます。そのためには、新規顧客獲得よりも既存顧客維持に力を入れるべきです。ただ、顧客維持に成功すると煩雑な管理業務が増えることにもなります。ビジネス拡大に合わせたバックオフィス効率化をおこないましょう。
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2019年当社に入社、執行役員に就任。
当社に入社以前は株式会社カオナビにてコーポレート本部長、複数の情報IT企業にてCMOなどを歴任。
現在は、当社のフィナンシャルクラウド事業及びマーケティング全般を統括。