事業プランの見直しで業績アップを目指す!ビジネスモデル研究の必要性
利益を継続的に生み出していく仕組みのことをビジネスモデルといいます。起業をする際、どのように利益をもたらしていくのかを考えることは重要な基本です。しかし、起業時だけでなく事業を発展させながら維持していくには、常にビジネスモデルの研究を怠ってはいけません。そこで、ビジネスをするうえで大切な4つの条件やビジネスモデルを決める際に押さえておきたい4つの要素、検討事項などについて解説していきます。
目次
ビジネスモデル研究からわかるビジネスに大切な4つの条件
ビジネスモデルという言葉が日本で聞かれるようになり、注目を浴びるようになったのは2000年10月以降のことです。ところが、ビジネスモデルとは何かといった定義について、確かなものが特に存在しているわけではありません。これでは、ビジネスモデルを検討するうえで何をどのように進めていいかわからない人は多いでしょう。ビジネスモデルについてはさまざまな人が論文を発表していますし、日本でも研究されているテーマです。そこでここでは、2001年に発表されたアミットとゾットの論文からビジネスモデルの理想的な4つの条件を紹介していきます。
1.効率性
ビジネスモデルの基礎として掲げられるのが「効率性」です。ここでいう効率性とは、できる限りコストを抑えてビジネスを展開することをいいます。コストを抑える手段にはさまざまなものがあげられますが、その代表例にネットショップがあります。ネットショップで商品を販売する場合、まず抑えられるのが人件費です。実店舗を用意して商品を販売することを考えると、通常は接客をしなければなりません。開店させている以上、客が来る来ないに関係なく店員を置く必要性が出てきます。そのため、最低でも1人以上の人件費をかけることは避けられないでしょう。
また、実店舗があれば売上に関係なくかかってくるのが光熱費です。扱う商品にもよりますが、店内が暗かったり空調が完備されていなかったりすると客は「入りにくい店」という判断をしやすくなります。その結果、次第に客足が遠のくという事態にも発展しかねません。他にも店舗の賃借料や通信費なども必要です。もちろん、ネットショップも通信は必要ですし、商品を置くための保管場所を用意する必要があります。しかし、店舗のように集客しやすい立地を考慮することはないため、郊外の安い物件や商品を置くだけの狭い物件にすればその分コスト削減につながるのです。
物販に限らず、製造業でも原料の仕入れや製造コストを抑えることで効率性を図ることができます。例えば、安い原材料が大量に入手できる地域に工場をかまえるという方法もその一つといえるでしょう。そのうえ人件費が低い地域であれば、さらにコストを抑えることは可能です。ただし、この場合は現地で製造することで輸送費がかさんでしまうこともあります。しかし、製造場所で販売まで行うことができれば、それだけコストも抑えることができるでしょう。このように、単にコストを抑えるといっても人件費や建物の維持費、仕入れなどさまざまな方法をあげることができるのです。
2.補完性
ビジネスモデルの2つ目の条件にあげられるのが「補完性」です。補完性とはわかりやすく言い換えればシナジー効果のことで、事業提携や協業といった事業間での相乗効果を狙うことを指します。事業提携を目的とした手法の一つといえばM&Aでしょう。自社では実現できない分野を他社と提携することで獲得し、ビジネスチャンスを広げていくという点では大きな相乗効果が期待できるといえます。例えば、製品の製造技術や特許を持っていても、それを販売できるルートや手段がなければそれで事業は足踏み状態になってしまいます。
一方、販売ルートだけ確保できていても、目玉となる製品の確保や製造に必要な技術がなければビジネスは成立しません。しかし、それぞれを持っている両社が事業提携を行えばお互いの不足部分を上手に補い合うことができ、大きなビジネスチャンスを得ることが可能です。さらに長期に亘って需要が見込める製品であれば、企業として安定しながら成長することができます。また、中小企業が大手企業の傘下に収まることも補完性が期待できる手段の一つです。大手企業は巨大なマーケットと知名度という武器を持っています。一方、中小企業の場合は知名度が低いことが多く、事業を展開することがなかなか難しい面もあります。
しかし、大手企業の傘下に入ることで知名度という恩恵を受け、それまでに比べて収益を上げることも可能なのです。これに対して大手企業側は異業種への参加が容易になるというメリットが期待できます。また、同じ業種であれば、子会社化することで少ない資金での事業拡張が図りやすくなるでしょう。補完性にはいろいろな手法がありますが、成功したビジネスモデルの一例としてあげられるのは楽天市場です。国内のインターネットモールとしては最大手であり、証券会社や銀行、旅行サイトなどさまざまサービスを展開しています。こうしたグループ事業としての展開以外にも、楽天市場で出店する店舗の多くが顧客を獲得しやすいという相乗効果を得ているのです。
3.顧客の囲い込み
「顧客の囲い込み」もビジネスモデルの重要な条件といえます。顧客の囲い込みとは、既存の顧客をできるだけ維持して継続的に利用してもらうということです。自社が提供する商品やサービスを利用している顧客は、いつどのタイミングでライバル会社に流れるとも限りません。顧客離れは企業にとって大きな損失を生みます。新規顧客の開拓に力を入れることも大切ですが、実は新規顧客の拡大には顧客維持に比べて5倍ものコストがかかるといわれています。つまり、顧客の囲い込みをする方が大幅にコストを抑えられるということです。
もちろん、1人でも多く自社の顧客として囲い込むためには、さまざまな戦略を打ち立てていく必要があります。例えば携帯電話会社の多くが実施している「継続割引」や「ファミリー割引」などがそれに該当します。利用期間が長いことで割引が期待できるサービスや家族も利用することで割引対象になるサービスの提供で、長くたくさんの顧客を囲い込むことが可能になる手法です。
利用金額や頻度に応じたポイント付与のサービスも顧客の囲い込みの一環としては有効といえるでしょう。自社またはグループ企業だけで利用できるポイントサービスもありますが、他社も交えた複数の店舗や施設で共通したポイントサービスに参加する企業も増えています。例えばA社の利用で付与されたポイントでもB社やC社でも使うことができ、利用者にとっても高いメリットがあります。一方、自社だけのポイントも、他にはない付加価値をつけることで顧客の囲い込みにつなげることができます。例えば、一般には販売されていない商品との交換や特別なサービスの利用などです。
他には、顧客の利用頻度やニーズを把握し、データ化することで囲い込みを図ることもできます。例えばどのような商品をどれくらいの間隔で購入しているかといった情報をデータ化することで、プッシュ通知などを用いて購入を促すこともできるわけです。または、同じカテゴリーの製品案内や割引などをいち早く通知することにも役立ちます。購入のタイミングを逃さないことで、顧客満足度を上げることにもつながるでしょう。
4.新奇性
ビジネスモデルとして最後にあげられる条件が「新奇性」です。世の中にはすでに多くの商品やサービス、システムが溢れています。同じようなデザインや機能を持つ商品では価格以外に差をつける手段はなかなか見出せないでしょう。しかし、これでは単なる価格破壊競争に巻き込まれていくだけであり、安定性のある利益を得らえるとはいえません。真に求められることは他社にはない付加価値であり、誰もが欲しいと考える斬新な商品です。つまり新奇性の高い商品やサービスを世に送り出すことは利益を生み出すうえで欠かせない基礎であるといえるでしょう。
新奇性でイメージしやすい事例にiPhoneがあげられます。そもそも、Apple社はそれ以前に音楽をそのまま記録して携帯できるiPodシリーズを発表し、人気を得ていました。中でもクリップタイプで軽量なiPod nanoは世界中で売れるヒット商品につながっています。そこに登場したiPod touchと、iPod touchに電話機能をつけたiPhoneはさまざまな常識を覆すことに大きく貢献した商品といえます。特にすべての操作をタッチパネルにしたことで、わずらわしいキーボード操作から携帯電話を解放したという点やシンプルなデザインには新奇性が十分です。
新奇性の高いサービスの事例としてはFacebookもあげられます。Facebookが登場する以前は、インターネット上で実名を公開することはタブーに近いものでした。もちろん、個人情報をネット上で公開することが危険なことに変わりはなく、抵抗を持つ人も少なくはありません。しかし、Facebookは友人という概念に新しい付加価値をつける点で多くの人に受け入れられたサービスといえます。もっともシンプルな活用方法としては、懐かしい友人との繋がりをネット上で実現できるということです。また、新しい友人やビジネスパートナーに共通の友人を発見できるという魅力もあります。このように、新奇性はビジネスモデルの基礎的な条件であり、利用者にとっても大きな感動や価値をもたらす役割を兼ねているのです。
2.ビジネスモデルを決めるときに考慮すべき4つの要素
ここまで、アミットとゾットの論文をもとにビジネスモデルの4つの条件について解説してきました。どの条件も理想的であり、これらをすべて揃えることができるならビジネスを成功させることは可能です。しかし、実際にこれらの条件をビジネスモデルに反映させていくのはなかなか難しいのが現実でしょう。そこで、もっと具体的に実現させていく手段として4つの要素を解説していきます。
1.顧客
まず考えておきたいのは「顧客」です。どのようなビジネスを展開するにしても、利益を出す以上は顧客を外すことはできません。すでに何らかのビジネスを行っている場合は既存の顧客も重要な存在です。まだ開拓しきれていない見込み客も含めてどのような顧客をターゲットにしていくかを明確にしていきましょう。年齢層はどうするか、性別や既婚、未婚かといったこともターゲットを洗い出していくには重要なポイントです。
例えば、同じ20代の女性であっても既婚と未婚では生活習慣や求めているものには違いが出ます。既婚の場合は出産適齢期であり、育児に関する商品やサービスに関心が高まりやすいといえます。未婚の場合なら結婚を控えている人もいるでしょう。友人との旅行など余暇の過ごし方や美容への関心が高いと考えることができます。また、40代、50代と年齢が上がるにつれて、老後の暮らしや健康管理に関心を持つ人が増えるなど、顧客の年齢層によって事業計画も大きく変わります。
商品やサービスを考える場合、ターゲットが設定されているかどうかで明暗が分かれるといっても過言ではないでしょう。誰に向けたものかわからないものでは、顧客側も魅力を感じるのは難しいからです。誰が使うものかイメージしながら作り上げたものでなければ、欲しいと感じてもらうことはできません。そこには使いやすさや嗜好などがまったく反映されていないことになるからです。まずはターゲットにする顧客の具体的なイメージを作っていきましょう。
2.価値
顧客について絞り込みができたら、次に重要になってくるのは「価値」です。価値とは顧客側から見て感じることが重要であり、どのような価値を与えることができるかを明確にしなければなりません。商品を売るにしてもサービスを提供するにしても、内容に見合った対価を設定するのは当然のことです。しかし、それだけではビジネスモデルを成功させることは難しいといえます。対価以上の価値を感じてもらうことが重要なのです。
例えば、コンビニエンスストアを例にあげてみましょう。食品から日用品に雑誌と、店内には暮らしに必要な物が一通り揃っています。これらの商品は実際にはスーパーマーケットやドラッグストアでも購入することができます。しかし、コンビニエンスストアではATMの利用やコピーサービス、公共料金の支払いとそれ以上のサービスを利用することが可能です。そのうえ24時間利用できるという付加価値があります。つまり、1つの店舗で暮らしに必要な物が揃い、さらに生活にともなうサービスの利用が何時でもできる利便性こそがコンビニエンスストアの価値なのです。
コンビニエンスストアのような位置付けにドラッグストアがあります。コンビニエンスストアとの違いは商品価格が全体的に低いことです。ATM利用やコピーサービスなどは少ない傾向にありますが、深夜営業を行う店舗も増え、利便性の中に手頃な価格という価値を与えています。また、コンビニエンスストアやドラッグストアの場合、独自の商品展開をしているケースも見られます。特に多いのはドラッグストアで、医薬品を自社ブランドとして通常より購入しやすい価格で販売するといった手法は他にはない価値の一例です。
顧客に価値を提供するという手法として、専門性を高めるというものもあります。例えばベビー用品だけを扱うというのもその一例で、顧客に「ここに来ればベビー用品のほとんどが安価で手に入る」という価値を提供しているのです。価値を与えるには、ターゲットとなる顧客が何を求めているかを見極めることがポイントになってきます。選択肢を増やすのか、または専門性を高めるのかで考えていくのもいいでしょう。
3.プロセス
「プロセス」もビジネスモデルにおいて重要な役割を持っています。プロセスとは商品やサービスを顧客に届けるまでの流れや仕組みのことで、これを外すことはできないからです。商品やサービスを決定していくという流れまでは経営者レベルで行うことが多いですが、プロセスについては社員をはじめとしたすべての関係者の協力が重要になります。顧客に届けるまでには商品の製造または仕入れ、実際に顧客へ提供する方法、そして集客方法などどれを取っても専門性が高いものがあります。そして、それぞれの分野に特化した人のアイデアを欠かすことはできません。
例えば、新しい化粧品を販売する場合、原材料や容器を調達して需要に見合った供給量を維持することが求められます。実店舗の販売かネットショップだけにするのかといった販売方法の決定も必要です。ドラッグストアでの販売にするという手段もありますし、ネット販売のみに絞ればそこでしか手に入らないという付加価値をつけることも可能です。また、ネット販売の場合に外すことができない物流サービスでは、ワンストップ物流で入荷から出荷までの流れを一つの倉庫でまかなうという方法もあります。
ワンストップ物流を活用すれば商品管理から顧客への発送に至るまですべて任せることができ、コスト削減にもつながるでしょう。プロセスでは、商品やサービスを顧客に届けるまでの流れや仕組みを構築するだけでなく、さらにコストを抑えるための工夫も必要です。もちろん、どのような商品なのか告知する方法もプロセスでは重要な意味を持っています。プロセスが十分に構築されていないと、どのように素晴らしい商品であっても顧客を満足させることはできません。プロセスをしっかり構築し、顧客に商品やサービスを提供する流れを固定させることでビジネスモデルは活きるといってもいいでしょう。
4.収益
「収益」はビジネスモデルで外すことのできない要素です。一見売れている商品でも、必ず利益を生んでいるとは限りません。顧客に好評で販売数を順調に上げている商品であっても、自社に必要な利益が見込めないものは成功とはいえないからです。確かに、低い価格設定をすれば売りやすい商品もあるでしょう。しかし、仕入れから人件費、物流コストなどすべてを引いたうえで十分な利益が出なければ事業として継続は見込めません。つまりビジネスモデルとして成立しないことになります。
まず大切なのは、利益を生むための方法を考えていくことです。収益率が高ければ、それだけ自社に大きな利益がもたらされ、企業としての成長を図ることができます。まず、仕入れや原材料なども含めたうえでどれくらいにすれば利益が出るのか考えていきましょう。ここで重要なのが、ターゲットとなる顧客を意識することです。どれくらいであれば購入しやすいのか、顧客の視線を加味することもポイントになります。他社では同じ商品をどれくらいで提供しているのかリサーチすることも必要ですが、あえて高価にすることで価値を持たせることもできます。
商品やサービスを提供して収益を上げるためには、継続的に売り上げが見込めるものでなければなりません。さらに収益率を意識しておくことも重要です。コストを抑えることは収益率を上げるための一つの手段ですが、必要な部分まで削ってしまわないよう注意しなければなりません。必要な収益を出しながら確実に顧客に購入してもらうには、自社ならではの強みを商品やサービスに活かすこともポイントです。また、顧客から確実に対価が支払われるような仕組みの構築も重要になってきます。
3.注目のビジネスモデル「サブスクリプション」を研究してみよう
ビジネスモデルを構築するうえで有効とされているものの一つに「サブスクリプション」があります。サブスクリプションとは製品やサービスを利用することに対価を支払うシステムのことで、期間が決められているのが特徴です。以前からあるサービスで似ているものに定期購読や定期購入がありますが、サブスクリプションはやや意味合いが異なります。定期購読や定期購入は同じ商品が毎月または毎週といった間隔で継続して利用するものです。
これに対してサブスクリプションにはプランなどが設けられていることが多く、利用者が選択できるという特徴を持っています。サブスクリプションを導入しているものにアプリや動画配信サイトなどがあげられますが、バージョンのアップデートや機能の追加などが自動で行われるという点にも価値を見出すことができます。アプリや動画は製品そのものを購入することも可能なものですが、管理を自分でする必要がない点や常に最新の情報にアップデートされているという部分がメリットです。
また、アプリの場合はグラフィック系のものなど製品版を購入するには高価なものが多いという特徴も見られます。しかし、サブスクリプションを利用することで初期費用を抑えられ、それまで利用が難しかった層も手軽に使えるというメリットも持っています。もちろん、デメリットがないということではありません。利用しないときでも料金が発生するのはデメリットになります。さらに、利用期間によっては製品版を購入するより高くなってしまうこともデメリットといえるでしょう。
サブスクリプションは主にIT分野で多く活用されていますが、アパレルや飲食などにも広がりを見せています。例えば毎月定額料金を払うことでブランドバッグがレンタルできるサービスもその一つです。ブランドバッグは高価なうえに流行に左右されやすい面もあり、自分で購入するにはハードルが高いという人もいます。また、数が増えれば保管場所も必要になります。サブスクリプションは利用者が抱える悩みを解決し、収益を継続しやすいという点で企業にとってもメリットの高いビジネスモデルです。
4.サブスクリプションモデル採用の検討事項
さまざまな要素を考慮したとき、サブスクリプションモデルは自社に安定的な収益をもたらすビジネスモデルといえます。利用者にも大きなメリットがあることから、導入を検討する価値は十分あるといえるでしょう。しかし、すべての企業にサブスクリプションモデルが向いているわけではありません。そこで、サブスクリプションモデルを採用するに当たって検討しておきたい事項について解説していきます。
顧客と自社にメリットがあるか
はじめに押さえておきたいのは、サブスクリプションモデルの採用にメリットが見込めるかということです。ただし、メリットが得られても、それが自社だけでは意味がありません。顧客にとっても高いメリットが見込めることが、サブスクリプションモデルに必要な条件です。自社と顧客に限らず、すべての関係者にとってメリットがあることが重要なポイントになります。
顧客のメリットとして考えるなら、手頃な料金で利用できるという点があげられます。中でも自分で揃えると高価なものになりやすい製品は顧客満足度が上がることも期待できるでしょう。特に動画配信サイトなどは、DVDを自分で購入するとなるとその分保管場所も考えなければなりません。また、物を増やしたくない人にとっても大きなメリットがあります。さらに、契約している限り常に最新のサービスや機能が利用でき、自分で管理するという手間もかからないのもメリットです。動画配信サイトの場合、本の購読や音楽配信なども利用できるサービスもあります。月額数百円という手頃な料金で動画の視聴から雑誌、マンガと幅広く楽しめるなど、顧客目線のメリットを重視することが必要です。
企業側としての立場で見る場合は、導入することで顧客の開拓が図れることをメリットとして考えましょう。それまで利用や購入を迷っていた顧客が、サブスクリプションモデルの採用によって利用の決め手にしてくれることがポイントです。もちろん、できるだけ長期間に亘って継続的に利用してくれることが好ましいといえます。実際にどれくらいの顧客が見込めるのか、webアンケートなど市場調査を実施してみるのも一つの方法です。
継続した関係が築けるか
サブスクリプションモデルの場合、年契約でのプランは多いですが、実際には半年契約から1カ月単位などさまざまです。いずれの場合も顧客が負担にならないうえに、自主的に長く利用できることを優先させましょう。できるだけ継続での利用が好ましいですが、例えば解約手数料を設けるのはやや違うかもしれません。サービスに疑問を感じたり利用しなくなったりしたときに、自由に解約できる方が顧客に安心感を与え、継続して利用したいという気持ちに繋がります。
できるだけ長く利用してもらうには、顧客との信頼関係を作ることが重要です。規約があいまいであったり、管理が杜撰であったりしてはサービスや機能にも影響を及ぼしかねません。顧客が理解しやすく、使いやすいサービス提供を心がけましょう。また、長期での利用を期待する場合の工夫として、料金の割引などがあげられます。料金の割引以外には長期利用者だけに限定したサービスの提供もいいでしょう。さらに、そこでしかできないサービスにするなど付加価値をつけるのも顧客との継続した関係を築く要因になります。
IT関連サービスの場合は、セキュリティ面の強化も重要です。動画配信サイトの場合はダウンロード機能を設けているサイトも多く、不正アクセスによって違法動画の入手経路になることもあります。このような事態は信頼度を下げる結果を招き、顧客離れに繋がりかねません。顧客が常に安心して安定的に利用できるためには、セキュリティを含めた管理に力を入れることも大切なことです。常に安定した質の高いサービスを提供できることで、顧客の自発的な「使いたい」という気持ちを引き出せるでしょう。
気軽に利用できるか
サービスの良さを知ってもらうには、まず顧客に使ってもらうことが第一歩です。そのためにはまずハードルを下げる工夫をしましょう。月額料金を下げるのも手段の一つですが、実際にはそれでも迷ってしまう顧客はいます。そこで、アプリや動画配信サイトに多いのが無料期間です。一定期間を無料で利用してもらうことで、顧客はどのようなサービスなのか体験することができます。満足すればそのまま有料での継続利用ができるという流れが一般的です。
顧客にサービスを試してもらう無料期間は、機能を制限するなどはせず、有料会員とほぼ同じサービスを提供することも求められます。また、登録方法もできるだけ簡素なものにしましょう。会員登録をするだけで時間がかかるサービスに抵抗を感じる人は多い傾向にあります。会員登録の手間を省くための工夫としてあげられるのがSNSなどのアカウント利用です。あらかじめ所有しているSNSのアカウントでログインできれば、会員登録に時間を取られることもありません。
気軽さでいえば、高価なアプリなどを手頃な月額料金で利用できるサービスも一例としてあげられます。自分で製品を購入する場合は何万円もするアプリでも、手頃な料金で使うことができます。通常であればアップデートが必要なアプリでも、使うたびに最新の状態で用意されているため、気軽さを感じてくれる顧客は多いでしょう。もちろん、毎月の料金が手頃であることも気軽さにつながります。そのためには提供するサービスの料金はどれくらいが適切なのか、リサーチしておくことも大切です。
まとめ
ビジネスモデルとは継続的で安定した利益を生み出す仕組みのことです。自社の業績に疑問を感じたときにはビジネスモデルを見直してみるのもいいでしょう。ビジネスモデルを成功させるには4つの条件と4つの要素があります。しかし、実際にはなかなか実現するのは難しいかもしれません。そのような場合は顧客も自社もメリットが得られるサブスクリプションモデルを検討するのも一つの手段といえます。
2019年当社に入社、執行役員に就任。
当社に入社以前は株式会社カオナビにてコーポレート本部長、複数の情報IT企業にてCMOなどを歴任。
現在は、当社のフィナンシャルクラウド事業及びマーケティング全般を統括。