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我が社はどれくらい愛されているのだろうか?エンゲージメントからわかること

自社の製品やサービスをより多くの顧客に販売するために行うのがマーケティングです。マーケティングにおいて重要な指標のひとつにエンゲージメントがあります。しかし、エンゲージメントの意味を詳しく知っていますか。また、どうしてマーケティングでエンゲージメントが重要視されているのでしょうか。そこで、エンゲージメントの意味や扱い方などを詳しく説明します。

エンゲージメントとは

エンゲージメントから「婚約」を思い浮かべる人も多いでしょう。婚約指輪がエンゲージメントリングと呼ばれるように、エンゲージメントには婚約という意味があります。ただ、エンゲージメントには婚約だけでなく、従事や契約などの意味合いもあるのです。ビジネス用語として用いられるエンゲージメントには、従事の意味合いが強いでしょう。企業の商品やブランドに対する知名度、ユーザーからの愛着度を意味する用語として、エンゲージメントが使われています。

エンゲージメントは、企業とユーザーとの関係性を示し、マーケティングの領域だけでなく人事関連やSNSといった分野でも活用が可能です。ビジネスシーンにおけるエンゲージメントは、顧客エンゲージメント、従業員エンゲージメント、SNSにおけるエンゲージメントの3つの分野で使われています。ここからは、これらの3つの分野におけるエンゲージメントについて詳しく紹介します。

顧客エンゲージメント

新規の顧客獲得だけを目標にしていると、長期的なビジネスの継続は期待できません。新規で集めた顧客を、固定客にすることが重要です。そこで必要となるのが顧客エンゲージメントなのです。顧客エンゲージメントは、顧客が企業の製品やサービスへどのくらいの信頼や愛着を寄せているのかを知ることです。企業と顧客との間に深い信頼性や関係性を築くことで、企業のファンを増やします。新規顧客に企業のファンになってもらうと、継続的や契約や購入につながるのです。企業のファンであれば、企業の製品やサービスを優先的に選ぶようになるでしょう。このように、企業にとって優良顧客との良好な関係を維持し、ファンを増やすことは、企業戦略において非常に大切です。

従業員エンゲージメント

従業員エンゲージメントは、社員のモチベーションを測ることです。言い換えると、社員が企業へどのくらい貢献したいと考えているかを表します。従業員エンゲージメントが高まると、この企業で継続的に働きたいという意識が強まり、離職率が減りやすくなるのがメリットです。従業員エンゲージメント率が低い企業では、社員の欠勤数が多く、安全性に関する事故が頻繁に起こるようになるでしょう。また、離職率が高くなるのも、従業員エンゲージメント率の低い企業の特徴です。

一方で、従業員エンゲージメント率の高い企業では生産性や収益性、顧客からの評価が高い傾向にあります。社員の欠勤日数や、安全に関する事故も少ないことから、社員の主体性が向上すると言えるでしょう。従業員エンゲージメントは、企業の収益性や生産性、離職率にも大きく関係しますので、企業の発展のために取り組んでおきたい課題です。

SNSにおけるエンゲージメント

顧客との信頼や関係性の向上のため、SNSを利用する企業も増えています。SNSにおけるエンゲージメントも企業戦略として重要な方法のひとつです。SNSにおけるエンゲージメントは、ユーザーと企業とのつながりを示すものとして考えられ、企業とユーザーのあいだの絆を表します。SNSを利用すると、企業がユーザーと簡単にコミュニケーションが取れるのが魅力でしょう。ユーザーと密にコミュニケーションを図ることで、企業の認知度が向上します。

しかしながら、企業側は何を発信してもいいというわけではありません。ユーザーに共感してもらえる内容を発信する必要があるのです。ユーザーから共感を得ているかどうかを知るためには、エンゲージメント率を確認しましょう。SNSでは、ユーザーの投稿に対する反応や絆を、エンゲージメント率として表しています。エンゲージメント率が高い場合には、ユーザーと企業のあいだに深い絆があることがわかるでしょう。常に一定のエンゲージメント率がみられる場合には、ユーザーからの安定した支持を得ていると判断できます。

ただし、エンゲージメント率だけでは、ユーザーが企業にどのくらいの愛着を持っているのかを判断できないこともあります。なぜなら、投稿に対する閲覧数というのは一定ではないからです。投稿内容や投稿時期などによって閲覧数が変動することはめずらしくありません。また、閲覧数やフォロワー数だけではユーザーの企業への絆は判断できないでしょう。閲覧数やフォロワーが多くても、エンゲージメント率が低いケースでは、ユーザーの愛着度は低いと考えられます。企業の認知度だけを追い求め、フォロワー数を増やすだけ方法では、企業に関心を持ってもらうことは難しいと言えるでしょう。ユーザーが興味を持ち、共感する対象を把握し、それに見合った興味深いコンテンツを発信することが重要です。

顧客エンゲージメントが重要視される理由

顧客エンゲージメントが最適化されていると、顧客は企業の製品やサービスを優先的に契約・購入するようになります。企業のファンとなることで、友人や知人に企業のサービスや製品を紹介することにもつながるでしょう。その結果、業績に直結します。顧客エンゲージメントが重要視される理由のひとつとして考えられているのは、市場が成熟したことです。似たような製品が市場にあふれるようになり「どれを使っても同じ」と考えるユーザーは増える傾向にあります。そのことで、製品やサービスの差別化を図るのが難しくなりました。

また、インターネットによって情報が増え、企業の製品やサービスに関する情報の入手が容易となったことも理由です。その結果、ユーザーは企業を比較しやすくなりました。そのうえ、企業ブランディングでさえ難しくなり、大手であれば安心という大手主導の考え方も崩れつつあります。そういった状況下において、企業は顧客の信頼をしっかりと獲得すべく、戦略的に顧客の囲い込みをする必要があると言えるでしょう。顧客との関係性を継続させるためには顧客エンゲージメントが非常に重要です。

顧客エンゲージメントの調査方法

顧客エンゲージメントを測るにはいくつかの方法があります。なかでも、既存顧客のデータ分析や、アンケート、エゴサーチは非常に重要な方法です。ここからは、この3つの顧客エンゲージメントを測る方法について、それぞれ詳しく紹介します。

既存顧客のデータ分析

既存顧客のデータ分析には、まず顧客の満足度を知ることから始めましょう。顧客の満足度からわかるのは、企業が顧客からどれだけ期待されているのかといった点です。さらに、顧客の期待に応えられているかも知ることができます。顧客の満足度が高い場合には、企業の商品やサービスに対し、期待通り、もしくはそれ以上の質を感じていることがわかるでしょう。反対に、満足度が低い場合には、期待を裏切られたと考えているのです。顧客満足度を知るためにはアンケートを用います。アンケートの回答データには、既存顧客の個人情報を結びつけておくのがいいでしょう。そのことにより「どのような顧客が」「どんな商品やサービスのどのような部分に」「どれだけ満足しているか」がわかります。

既存顧客のデータは、単純集計を行いましょう。単純集計とは、アンケート結果を集計したものであり、特定の回答を選択した人の割合が簡単にわかります。たとえば、満足していると答えた人が60%、不満と答えた人が12%、どちらでもないと答えたのが28%など、アンケートの結果を全体像として把握できるのが単純集計です。

単純集計で全体がわかれば、クロス集計を行いましょう。クロス集計とは、アンケートの結果に顧客データを掛け合わせて表にすることです。クロス集計を行うと、どのような年齢の人が満足しているのか、不満と答えた人の性別の男女比などがわかります。単純集計から深掘りするために非常に重要なのがクロス集計であり、クロス集計の結果によって課題となるポイントも絞り込めようになるでしょう。もし、過去にもアンケートを実施しているのであれば、過去のデータをプラスした時系列分析もできます。時系列分析を行うと、過去に何があったのかを知ることができ、トレンドや季節による変動などが把握できるでしょう。その結果、将来的な需要予測も可能になります。

アンケート

アンケートの方法には、大きく2種類があります。まず、顧客が企業の製品やサービスに関して純粋に思い起こせるかを測る純粋想起という方法です。この方法によって企業の認知度を測ります。純粋想起では「○○のメーカーと聞いて思い起こすブランド」を挙げてもらいましょう。自社のブランド名を挙げた人が何%いるのかによって、ブランドの認知率(純粋想起率)がわかるのです。ブランドの認知率は純粋想起率ともいわれています。回答者が最初に思い出したブランド名は、第一想起です。自社ブランドが最初に挙げられた確率が第一想起率であり、第一想起率が高いブランドほどユーザーにとって関心が強いと言えるでしょう。

また、アンケートの方法には助成想起という方法もあります。これは、回答者を助成し、思い起こしてもらう方法です。たとえば「○○というブランドを知っていますか」というアンケートを作成し、ブランド名を質問文の中に具体的に示します。そうすることで、認知率を測る方法です。100人にアンケートを行い、88人が知っている場合には、認知率は88%だと言えるでしょう。また、助成想起にはいくつかのブランドを列挙し、そのなかから知っているブランドをすべて選ぶ方法もあります。

アンケートでわかるのは企業やブランドの認知率だけではありません。市場での位置づけも測れます。多くの分野で市場競争が激化しているため、企業のブランドのシェア率をアンケートによってチェックすることは非常に重要です。自社ブランドが、市場でどのように評価されているかも、アンケートによって確認できます。

エゴサーチ

顧客エンゲージメントを測る方法にはエゴサーチがあります。エゴサーチとは、検索サイトやSNSなどで企業名やブランド名、商品名などを入力し、検索することです。自我や自己愛といった意味を持つ「ego」と、調べるという意味のある「search」を組み合わせて作られました。英語では「egosurfing」とも呼ばれ、世界中で使われている方法です。有名人などが個人の評判を調べるために使うことも多く見られますが、ビジネスシーンでも企業の評判を知るためにエゴサーチが行われています。

エゴサーチによってヒットするのは、自社で管理するwebサイトやニュースだけではありません。ユーザーがSNSやブログなどで発信した情報も出てくるでしょう。エゴサーチでは、ユーザーの意見をダイレクトに調べられることから、本当の評判を知ることが可能です。その一方で、マイナスイメージにつながるような情報も見つかります。しかしながら、マイナスイメージの情報はリスク対策につながりますので、向き合うことも大切です。

顧客エンゲージメントを高めるには

顧客エンゲージメントを高めるには、顧客のニーズに応えるという方法があります。また、自社で運営するオウンドメディアやSNSも上手に活用するのがいいでしょう。ここからは、これらの方法を使った顧客エンゲージメントを高める方法を紹介します。

顧客のニーズに応える

顧客エンゲージメントを高める方法のひとつであり、企業の営業活動においても非常に重要なのが顧客ニーズに応えることです。顧客ニーズに応えるために必要となるのは、データ分析をしっかりと行い、顧客のニーズをつかむことでしょう。顧客ニーズを把握するために必要なのは、徹底したヒアリングを行うことです。自社が扱っている商品を顧客がどのように感じているのかを知り、ニーズに対応した筋道をつけていきます。そのためには、カスタマーサービスを徹底しておきましょう。ユーザーと企業との窓口となるカスタマーサービスは、ユーザーの声が直接届く場所です。ユーザーが気軽にアクセスできるカスタマーサービスを設け、ユーザーとのコミュニケーションを密に行うことで顧客ニーズが把握できます。

カスタマーサービスへのつながりにくさを解消したことで、顧客エンゲージメントが高められた企業は多く見られます。カスタマーサービスの充実で企業のブランディング化に成功した例もあるのです。また、ユーザーにとって居心地のいい店舗づくりも求められています。店舗に対しユーザーが居心地のよさを感じると帰属意識が高まり、リピーター率が上がりやすくなります。従業員の教育にも力を入れ、笑顔での接客を徹底しましょう。そうすることで、ユーザーの記憶に残る店舗となるのです。その結果、ブランドの認知率が高まると言えるでしょう。

オウンドメディアやSNSの活用

オウンドメディアやSNSも顧客エンゲージメントを高める方法のひとつです。オウンドメディアというのは、自社で保有するメディアをいいます。自社で運営や発信をするメルマガやブログのようなものがオウンドメディアにあたるのです。オウンドメディアやSNSを上手に活用することで、既存顧客とのエンゲージメントが高められると言えるでしょう。それだけでなく、新規ファンの獲得にもつながります。また、オウンドメディアやSNSで、ユーザー参加型のプロモーションやキャンペーンなどを配信するのもひとつの方法です。企業からの一方的な発信だけでなく、企業と顧客が双方向でコミュニケーションを取り合うことで深い関係性が築けます。

さらに、動画をプロモーションとして利用すると企業の認知度も高まるでしょう。顧客エンゲージメントに重要な企業のブランディング戦略は、顧客からの認知を深めるだけでなく企業のメッセージをダイレクトに届けることが大切です。そういった理由から、SNSやオウンドメディアは有効な手段であると言えます。SNSの場合には、ユーザーが情報をシェアすることで情報の拡散が可能です。口コミが広がることで、より多くの人に企業を認知してもらえます。顧客にとって有意義なコンテンツを届けるだけでなく、顧客とコミュニケーションを取り合う場としてもSNSは活用が可能です。コミュニケーションが取りあえることで顧客の信頼を高められます。

エンゲージメント重視のビジネスモデル「サブスクリプション」

エンゲージメント重視のビジネスモデルの一つとして、今、「サブスクリプション」型に注目が集まっています。
サブスクリプション(サブスク)とは、一定期間に対して一定の金額または利用料を支払うことで商品やサービスを受けることができるビジネスモデルです。サブスクリプションは、ソフトウェアの契約方法として、頻繁に利用されるようになっています。さらに、ソフトウェアなどのデジタル分野だけにとどまらず、非デジタル分野にも取り入れられるようになりました。例えば、定額制動画配信サービスをはじめとして、毎週旬の魚が自宅に届けられるサービスや、一定期間ごとに車が乗り換えられるサービス、毎月自分の好みの洋服を届けてもらえるサービス、高速道路を一定料金で利用できるサービスなどがあります。

これらのような、利用期間に対して対価を支払う方式の時間型サービスは、たくさんの分野に活用が可能です。アイデアさえあれば、どんな分野でもサブスクリプション型ビジネスに転換させることができます。サブスクリプション型ビジネスは、これまでのプロダクト販売のビジネスから一転し、必要に応じて必要な量だけのサービスを提供します。ただし、提供するサービスは、顧客にとってメリットがあり魅力的であることが条件です。顧客が求めるサービスを提供するために必要となるのはマーケティングでしょう。その点、サブスクリプション型ビジネスは、さらに進化を続けるテクノロジーとの融合によって常にマーケティングを可能にします。

ユーザーの生活に企業がつながりを持てるようになることで、顧客エンゲージメントが高められていくのです。その結果、継続利用へとつながり収益へと結びつきます。このように、新たな売り上げを獲得する方法として、サブスクリプション型ビジネスはおすすめです。

サブスクリプションについて、以下の記事でさらに詳しく解説しています。
▶「サブスクリプションとは?定額制サービスとの違いやメリットを解説 !」

サブスクリプション(サブスク)とは?意味やメリット、ビジネスモデルの事例を解説

まとめ

マーケティング分野におけるエンゲージメントは、企業や製品に対する顧客の愛着や信頼を示すものです。エンゲージメント重視のビジネスモデルにはサブスクリプションが広がり、収益を伸ばしています。しかしながら、新しいビジネスモデルであるため導入にはコツが必要です。導入を考えているのであれば、サブスクリプションに特化したコンサルティングに相談するのがいいでしょう。

監修
【監修】藤田 豪人 株式会社ROBOT PAYMENT 執行役員

2019年当社に入社、執行役員に就任。
当社に入社以前は株式会社カオナビにてコーポレート本部長、複数の情報IT企業にてCMOなどを歴任。
現在は、当社のフィナンシャルクラウド事業及びマーケティング全般を統括。
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