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顧客に選ばれ続けるために意識すべきLTV!その重要性と戦略を徹底解説

業績が低迷しているときには、原因を探り分析することが重要です。マーケティング戦略の再構築に役立つものの1つにLTV分析があります。成熟した大企業からベンチャー企業に至るまで、非常に注目を集めている分析方法です。そこでLTVとは何なのか、どのように利用するのかについて解説します。また、LTVの分析方法を上手に活用しているビジネスモデルであるサブスクリプションについても紹介します。

LTV=顧客が企業にもたらす価値

LTVとは「Life Time Value」の略で「顧客生涯価値」と訳されます。意味は、顧客との継続的な取引によって企業にどれぐらい価値をもたらすか、ということです。つまり、1人(または1社)の顧客が生涯にわたって企業にもたらす利益を数値化したものです。このLTVを算出するためには、一般的に、平均購買単価、平均購入頻度、平均継続購買期間を元にします。

たとえば、ある家電量販店において会員となった人が、入会から5年の間にゲームソフトを平均して3カ月に一度継続して購入してくれていたとします。一方、同じ条件において、もう1人の会員は、ゲームソフトのほかにカメラや家電なども購入してくれているとします。この場合、LTVが高いのは、前者よりも後者の会員です。しかし、後者が5年で会員を辞める場合、前者が会員をずっと続けてくれれば、LTVが逆転することも考えられます。

このような考え方は、商品ごとの売上や利益率などではわからない、顧客が企業にもたらす価値を明らかにしてくれます。しかしながら、LTVを正確に求めるためには、ある程度蓄積されたデータが必要です。そのため、LTVは成熟市場でよく利用される数値です。多数の顧客データがあれば、どの程度のリピート率があるか、どれぐらいの期間を顧客でいてくれるか、などが予想しやすいと言えます。

ただし、LTVは成熟市場や既存の顧客を多く獲得している企業が利用するだけのものではありません。ベンチャー企業やスタートアップの事業計画で用いられる指標でもあるのです。新しい事業形態においては、製造業のように粗利益を計算するだけでは現状の分析・将来予測が難しいためLTVを活用しています。ベンチャー企業は事業内容を示して出資を募ることも多いでしょうから、LTVを算出して提示することは、資金調達の面でもメリットがあるといえます。

なお、LTVと同じ意味の言葉にCLVがあります。CLVは「Customer Lifetime Value」の略で、LTVと同じように使われています。

LTVが重要視される背景

成功しているといわれる企業の多くは、何らかの形でLTVを重視しているといわれています。たとえば、Office製品をサブスクリプション型で提供しはじめたマイクロソフトは、商品をパッケージで購入してもらうことによって生じる単発の利益より、長期間Office製品を使用してもらうことを重視する方向にシフトしたと言えます。また、成熟した大企業だけでなく、ベンチャー企業やEC事業者、アフィリエイトなど比較的新しい分野の事業者も、積極的にLTVの考え方を取り入れようとしています。このように、LTVが重要視される背景には、主に3つの要因があります。

1つ目は「市場が成熟し、差別化が難しくなった」ということです。たとえば、家庭用プリンターなどは世の中に似たような製品がとても多くあります。そのため、このような分野では、他社との違いをアピールして顧客を獲得することは難しくなっているのです。また、その企業の愛用者となって、長いあいだ継続してユーザーになってもらうことも難しく、企業は顧客の囲い込みに今まで以上に注力する必要が出てきました。

2つ目は「顧客のニーズが多様化している」ことです。このような状況においては、新製品を開発して大ヒットさせるというのは非常に困難です。たとえ一部の人にとっては画期的ですばらしい商品であったとしても、他の人にとっては全く関心を引かないこともあり得ます。そのため、すでに獲得している顧客を重視することが不可欠となってきています。

3つ目は「新規顧客の開発にかかるコスト」です。商品を作るメーカーでは、新商品の開発コストや広告費などがかかります。また、新たな顧客を獲得するために、新しいサービスを考案するなども新規顧客の開発にかかるには多大なコストが発生してしまうことがしばしばです。もちろん、このような企業努力によって、新規顧客を開拓することはとても重要なことです。しかし、既存の顧客と比べて新規顧客から利益を得るためには、一般的に5倍のコストがかかるといわれています。

これら3つの要因によって、既存の顧客を大切にする傾向が強くなりました。そして、これを実現するための分析方法として有効なLTVが、重要視されるようになってきたのです。

LTVの分析方法

LTVの一般的な計算式は

LTV=平均購買単価×平均購入頻度×平均継続購買期間×収益率

です。企業によっては、顧客のロイヤルティを考慮するなど、カスタマイズして計算する場合もあるようですが、基本的な計算式はこのようになります。そして、LTVを分析するということは、その数値が企業の求める水準を満たしているか、どのようにすればより高くできるか、高い状態にキープできるか、などを検討することです。

分析をしやすくする方法のひとつに、グラフによる視覚化があります。

視覚化によるメリットは主に3つあり、1つ目は顧客あたりの平均収益の推移が把握しやすいということです。それを実現するには、まず、すべての顧客またはグループ分けした顧客のLTVを求めて集計しておきます。そして、期間ごとにLTVの平均を出してグラフを作成すれば、LTVの推移が一目瞭然です。それにより、たとえば顧客重視の取り組みが結果に結びついているか、などがわかります。

2つ目は企業が行った対策・改善の成果が確認しやすいことです。LTVによる分析では、顧客のLTVを個々に算出します。そのため、たとえば新サービスを開始したときに、そのサービスに魅力があれば平均購買単価や平均購入頻度が増え、LTVは高くなるはずです。LTVが優れている点は、数値の増大によって、将来に渡りどのような効果を生み出すかを把握しやすい点です。つまり、1顧客あたりにいくら企業に利益をもたらすかについて将来を含めて予測しやすいのです。これは、月ごとの売上げを集計する、といった単純な分析ではできない予測を可能とします。

3つ目は新規顧客の獲得戦略や事業計画を立てることに役立てられることです。もし、ある企業の施策によってLTVが増大しているなら、その方向に進むことは企業の成長にとって有効であると推測できます。似たようなアプローチによって新規顧客の開拓を狙うなら、ある程度、成果の目安やリスクの度合いも把握できるでしょう。また、LTVを分析することによって、どんなことが顧客に喜ばれているか、どんな潜在的ニーズがあるのかなどが見つかる場合もあります。つまり、LTVを高くするために何をするかと分析するだけでなく、何がLTVに影響を与えているのか分析することも可能なのです。それには、人間が分析しやすいように、グラフ化しておくのがとても有効と言えます。

このように、LTVの分析後は、顧客一人当たりのLTVをより高める、または高い状態を維持することが重要です。この際、LTVの計算式にある「平均購買頻度」と「平均継続購買期間」をコントロールするのはむずかしいといわれています。なぜなら平均購買頻度と平均継続購買期間は両立しないことが多いからです。

たとえば、オーガニック野菜を定期的に配達するというサービスを提供している会社があったとします。この場合、野菜の量は決まっていることが多く、購入頻度を高めることはむずかしいでしょう。また、動画配信サービスなどは、定額で見られるコンテンツを充実させて、長期的なユーザーとなってもらえることを重視していることが多いと言えます。こうした努力は平均継続購買期間を長くするためでしょう。つまり、コンスタントにサービスを利用してもらうためには、購買頻度を安定させる必要があるとも言えるのです。

また、企業がいろいろな施策をしたのち、平均継続購買期間が延びるかどうかは、だいぶ先になってみなければわからないことです。もしサービスや商品が不要と思われれば、二度と購入することがないかもしれません。そのため、購入頻度と購買期間の2つの要素は、LTVを分析してもコントロールがしにくいといわれています。

購買単価にアプローチする方法

平均購買頻度と平均継続購買期間をコントロールするのが難しいとなれば、必然的に平均購買単価にアプローチするのが有効という結論になります。平均購買単価を上げるためによく利用されている方法に「アップセル」と「クロスセル」の2つがあります。

アップセル

アップセルはより価格の高い商品を購入したり、よりグレードの高いサービスを利用してもらったりすることです。たとえば、自動掃除機などでは、自動ゴミ捨ての機能が付いた機種を販売するなどの方法です。これによって、購買意欲が刺激され購買単価が上がります。アップセルは購買単価も上がりますが、平均継続購買期間を延ばす結果につながる場合もあります。たとえば、電子ピアノの鍵盤は同じにしておき、音色や音楽制作機能を上位機種に付加機能として追加するなどです。この場合、鍵盤のタッチが気に入れば、演奏技術の向上などに応じて、継続的に同じメーカーの商品を購入してくれるかもしれません。

一般的にアップセルが有効なのは、グレードが高くなることによって得られるメリットを顧客が理解したタイミングだといわれています。どの商品を購入しようか悩んでいる人にいきなりアップセルという方法を取っても、単に強引で押しつけがましいと感じられるだけです。また、すでに商品が決まっている人に対してアップセルをするなら、まずグレードアップするメリットを説明することからはじめたほうがよいといわれています。

クロスセル

クロスセルという方法は、他の商品も買ってもらい購入単価をアップさせる方法です。大手のネットショッピングサイトにおいて「こちらの商品もいかがですか」などのポップアップメッセージが出てきます。これはクロスセルを狙っています。また、たとえば大手のファースト店では「今ならお得な価格でチキンナゲットを追加できますよ」といった声掛けをされることがあります。こうしたことも、割引によって少し利益率は下がってしまいますが、トータルで考えるとクロスセルになり購買単価をアップできます。

クロスセルを実行するタイミングは、購入する直前・直後といわれています。人間の心理のひとつに、意思決定をする際には気が緩みやすいという傾向があるからです。これは「テンション・リダクション効果」と呼ばれ、平たく言えば「ついで買い」をしやすい傾向を意味します。

継続購買期間にアプローチするならサブスクリプション型サービスがおすすめ

一般的に、継続購買期間はコントロールしにくいといわれています。しかし、サブスクリプションモデルのサービスは、ほかのビジネスモデルに比べて継続購買期間をコントロールしやすいといわれています。製品やサービスが気に入れば継続利用につながり、長期的な収益が期待できるのが、サブスクリプションモデルです。

サブスクリプション(サブスク)とは、一定期間に対して一定の金額または利用料を支払うことで商品やサービスを受けることができるビジネスモデルです。サブスクリプションは、ソフトウェアの契約方法として、頻繁に利用されるようになっています。さらに、ソフトウェアなどのデジタル分野だけにとどまらず、非デジタル分野にも取り入れられるようになりました。

サブスクリプションについて、以下の記事でさらに詳しく解説しています。
▶「サブスクリプションとは?定額制サービスとの違いやメリットを解説 !」

サブスクリプション(サブスク)とは?意味やメリット、ビジネスモデルの事例を解説

まとめ

LTVは1人(1社)の顧客が生涯にわたって企業にもたらす価値を数値化したものです。これを分析することにより、既存顧客のLTVを高めて業績を伸ばせるようになります。LTVを分析することで新規顧客を開拓したり、ビジネスチャンスをつかめたりすることもあるのです。また、LTVの考え方を上手に活用しているのがサブスクリプションモデルです。継続的で安定的な収益を見込めることから、さまざまな分野で導入されています。

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監修
【監修】藤田 豪人 株式会社ROBOT PAYMENT 執行役員

2019年当社に入社、執行役員に就任。
当社に入社以前は株式会社カオナビにてコーポレート本部長、複数の情報IT企業にてCMOなどを歴任。
現在は、当社のフィナンシャルクラウド事業及びマーケティング全般を統括。
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