ファクタリングの踏み倒しが生じる要因とは?踏み倒しを防ぐコツなども紹介

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ファクタリング(Factoring)とは、企業が保有する売掛債権をファクタリング会社に売却して、資金調達を図る手法です。日本の企業間では信用取引が一般的ですが、時として代金の受領が商品・サービスを提供した数か月後になることもあります。しかし、決済日まで売掛債権を回収できないとなると、企業の資金繰りが悪化しかねません。そこで、手数料込みで売掛債権を買い取る商売「ファクタリング」に対する需要が生じるのです。

16世紀にイギリスで誕生したといわれるファクタリングですが、手形取引が既に定着していた日本ではなかなか浸透しませんでした。しかし、近年では日本でも徐々にファクタリングが利用しやすい環境が整いつつあります。その背景にある理由として、債権法改正により債権譲渡が行いやすくなったことや、金融機関による電子決済サービスが普及したことなどが挙げられます。

しかし、いくら利用しやすくなったといっても問題がないわけではありません。ファクタリングでしばしば問題となるのが、踏み倒し行為です。
2社間で行われるファクタリングの場合、サービス利用企業自身が売掛金を回収しなければなりません。ファクタリングにかけても利用企業の資金繰りが苦しいままだと、ファクタリング会社に回収金を引き渡せない事態が起きかねないのです。

この記事では、こうしたファクタリングの踏み倒しが生じる要因や、踏み倒しを防ぐコツなどを詳しく解説していきます。

ファクタリングの踏み倒しが生じる要因


企業がファクタリングを有効に活用できれば、入金サイクルの短縮により、資金繰りを改善できるメリットがあります。しかし、実際にはファクタリングをかけたにもかかわらず、売掛先から回収した売掛金をファクタリング会社へ引き渡せなくなる事態の発生が後を絶ちません。

ここでは、そのような事態の原因である「ファクタリングの踏み倒し」が生じる要因について、4つのケースから考えていきます。

売掛先からの支払いが遅延している

2社間ファクタリングの手続きでは、売掛先から売掛金を回収した後に、ファクタリング会社への支払いが行われるのが一般的な流れです。そのため、何らかの理由により売掛先からの入金が遅延すれば、期日までにファクタリング会社に売却した売掛債権の代金を支払うことが叶わなくなります。

支払いが遅れた場合にファクタリング会社がまず疑うのは、ファクタリングをかけた企業による横領や流用などの違法行為です。この時、利用企業が取るべきアクションは2つあります。ファクタリング会社に対して売掛先からの入金が滞っている事実をありのままに伝えることと、売掛先である取引企業に入金を促すことです。

支払期日の延期が認められれば、結果として踏み倒しリスクの低減につながります。ただし、売掛先への入金催促には慎重さが必要です。後述のように、遅延発生時にはファクタリング会社から売掛先に対して、債権譲渡の通知が送付される場合があるからです。

売掛金を流用している

踏み倒しが生じる要因として最も多いのが、回収した売掛金を他の支払に流用しているケースです。
ファクタリングを利用する企業は資金繰りに窮していることが多く、仕入費用や従業員の給与などのさまざまな支払に追われる状況にあります。いけないとは知りつつも流用するのは珍しいことではありません。

一旦流用したとしても、期日までに支払えれば問題はないでしょう。しかし、目先の支払いを何とかクリアできたとしても、事業を続ける限り何かしらの支払義務を負うことになるのが常です。その場しのぎの対応に終始していると、いずれ踏み倒すことになるのは避けられないでしょう。

ファクタリング手数料が高額である

ファクタリングを通じて企業が売掛金を早期に現金化できるようになるとはいえ、売却した売掛債権分のお金を満額手に入れられるわけではありません。実際に受け取れるのは、売掛債権の金額から手数料や諸費用が差し引かれた残額です。

しかし、実際にファクタリング会社に返済すべき額が売掛債権全額であることに変わりはありません。通常の2社間ファクタリングでは、手数料が割高に設定されるため、返済額と入金額との差が大きくなり資金繰りが改善しなかったケースが多い傾向にあります。この時、売掛先から回収した売掛金をファクタリング会社に引き渡せなければ、結果として踏み倒しに至らざるを得ないでしょう。

回収不可能な売掛債権を売却している

既にファクタリングを通じて売却した売掛債権を別のファクタリング会社に持ち込み、重複してファクタリングにかけることを「二重譲渡」といいます。二重譲渡を行えば、1つの売掛債権で倍の資金調達が可能です。しかし、二重譲渡は売掛金の持つ代金請求権という目に見えない特性を悪用した違法行為であり、発覚すれば横領罪や詐欺罪に問われます。

2社間ファクタリングの実務では、二重譲渡によるファクタリング会社の買取債権未回収リスクを防ぐために、第三者対抗要件を具備できる債権譲渡登記を行うのが一般的です。しかし、誰もが情報を閲覧できてしまう登記を要するとなれば、取引先にファクタリング利用の事実を知られずに資金調達が図れる、2社間ファクタリングのメリットが失われかねません。そのため、債権譲渡登記を行わないファクタリング会社の需要も依然として高く、踏み倒しの余地が残されているのが実情です。

一方、二重譲渡よりもさらに悪質なのが、実体のない請求書や決算書で「架空債権」をでっち上げるケースです。架空債権譲渡も二重譲渡同様、詐欺罪に問われる完全な犯罪行為にあたります。しかし、売掛先の承諾なしに秘密裡に進められる2社間ファクタリングの性質上、善意のファクタリング会社が架空債権譲渡を虚偽であると立証するのは簡単なことではありません。

ファクタリングで踏み倒しをしてしまうとどうなるのか


実際にファクタリングを踏み倒してしまうとどうなるのでしょうか。以下で、起こりうる事態2つについて解説していきます。

売掛先に債権譲渡が通知される

2社間ファクタリングを利用するメリットの1つが、売掛先にファクタリング利用の事実を知られずに売掛債権の現金化が図れる点です。しかし、ファクタリング会社に踏み倒しをしたとみなされると、売掛先に対して債権譲渡通知が送付される可能性も出てきます。

確かに、既に債務を果たした売掛先に対して、新たに支払義務を生じさせるなどといった実体的な不利益を被らせることはありません。しかし、突然の通知によりファクタリング利用の事実が発覚すれば、売掛先からの信用を瞬く間に失うでしょう。今後の取引を解消されるなどのリスクは避けられない可能性が高いです。通知は、売掛債権をファクタリングにかけざるを得ないほど資金繰りに窮していることを明らかにするだけでなく、回収したお金を流用したり、着服したりしている可能性を示唆するものでもあるからです。

売掛先への債権譲渡の通知は、ファクタリング利用企業に対して支払期日における確実な債務の履行を促すための、高い心理的圧力を与える措置です。そのため、実務ではいきなり債権譲渡通知を送付するのではなく、督促の意味で通知を示唆する場合も少なくありません。

刑事罰に問われることもある

ファクタリングで踏み倒しを行った企業は、ファクタリング会社に対して債務不履行による損害賠償責任を負います。
ファクタリング会社にとってみれば、踏み倒しは想定内のアクシデントに過ぎません。ひとたび踏み倒せば、あらゆる手段を駆使して全力で回収に向けた法的措置が講じられます。そうなれば、預金口座や資産だけでなく、翌月の入金や本件以外の売掛金も差し押えられ、多くの取引先を失いかねないのです。

ファクタリング会社の中には、親や親戚にまで連絡したり、恐喝まがいの取り立てを行ったりする悪徳業者も存在します。場合によっては、事態の解決のためにファクタリングの実務やトラブル対応に長けた弁護士に相談しなければならないケースも出てくるでしょう。

また、ファクタリングにおける踏み倒し行為は、民事上の責任に問われるだけでなく、刑事罰に問われる危険性もあります。

ファクタリングでは、債権をファクタリング会社に譲渡するだけでなく、譲渡した債権の回収代行をファクタリング利用企業に委託する契約も同時に締結するのが一般的です。この場合、利用企業が回収した売掛金を他に流用するなどして返せなくなれば、横領罪に問われる恐れがあります。委託契約に基づいてファクタリング会社から預かっているに過ぎないお金を「自分の物」にしたとみなされるためです。初犯であれば5年以下の懲役刑が科せられる「単純横領罪」が、踏み倒し行為の繰り返しに業務性があると認められれば10年以下の「業務上横領罪」が成立するでしょう。

さらに、踏み倒しが欺罔行為に基づくものであれば「詐欺罪」も成立します。罰則は、業務上横領罪と同じく10年以下の懲役刑です。ただし、ファクタリング会社が二重譲渡の事実や架空債権であることを知りながら契約に応じたなどの事情がある場合は、この限りではありません。

支払いの先延ばし・分割での支払いは可能か?


当初はきちんと支払うつもりでいても、ファクタリング契約締結後に事情が変わるなどして、期日までに売掛金が支払えなくなる場合があります。ここでは、解決手段として支払いの先延ばしや分割での支払いが可能なのかを解説します。

支払いの先延ばしはできるのか

期日までに支払うのは難しいが、少し猶予してもらえれば工面できるケースもあるでしょう。この場合、支払いの先延ばしは可能です。ただし、長くても1か月程度であり、ファクタリング会社による承諾は必要不可欠です。事情を包み隠さず打ち明けるとともに、先延ばしにしてもらえれば支払いの見通しが立つことを誠意を持って伝えましょう。もちろん、支払える根拠を提示する必要性もあります。

ただし、ここでも悪徳業者の存在には要注意です。先延ばしを認めた後に、法外な遅延利息を請求してくるケースが少なくありません。長期の先延ばしに気軽に応じてくれる業者などは、安易に信用しない方が良いでしょう。

支払いを分割にできるのか

ファクタリングは、法的には売買契約に基づく指名債権の譲渡であり、融資とは異なります。債務の履行は期日での一括払いが原則で、分割払いは基本的にできません。

分割払いを認めれば、未払い分の売掛金に対して金利が生じるため、実質的な貸付としてみなされてしまいます。この時、ファクタリング会社が貸金業登録を済ませていれば問題はありませんが、実際には未登録でファクタリング業を営む会社も多く存在します。金銭の貸し借りを伴わないファクタリング業務は、要件が厳格な貸金業登録が必須とされていないのが理由です。貸金業法に抵触するリスクを負ってまで分割払いに応じるファクタリング会社はまずいないでしょう。

反対に、ファクタリング会社の方から分割返済を持ちかけてくる場合は、悪徳業者である危険性が高く、注意が必要です。迂闊に手口に乗ってしまえば、偽装ファクタリングの1種である「ジャンプ」の落とし穴にはまってしまうかもしれません。

ジャンプとは、利息だけを払って元金の返済期限を先送りできるシステムで、悪徳な貸金業者の常套手段です。ジャンプの繰り返しにより増額される手数料の支払いで手一杯になれば、いつまで経っても元金を返せない状況に追い込まれます。

従って、まともなファクタリング会社であれば分割払いを提案してくることはありません。たとえ財務状況が苦しくても、回収した売掛金は速やかにファクタリング会社に支払うことが大切です。

ファクタリングで踏み倒しを起こさないためのコツ


ファクタリングによって一時的に資金調達を図ることができたとしても、売掛金を回収した時点で再びキャッシュが必要になる事態に陥ることは十分考えられます。ファクタリングの利用を検討する会社は、資金繰りに関して構造的な問題を抱えていることが少なくないからです。ここでは、ファクタリングで踏み倒しを起こさないためのコツを3つ紹介していきます。

キャッシュフローを改善する

会社を存続させようとする限り、現況にかかわらず資金繰りの健全化に向けた対策は疎かにできません。特に、ファクタリングを利用せざるを得ないような財務状態にある会社であれば、早急にキャッシュフローの改善に努める必要があります。

キャッシュフローの改善は、具体的には以下の方法で実行すると良いでしょう。

● 支払いをできるだけ遅らせる
手元資金を減らさないためです。取引先に支払いの先延ばしや締め日の変更を交渉する、法人キャッシュカードで決済するなどの方法が考えられます。

● 売掛金をできるだけ早く回収する
支払いサイトを延ばしつつ売掛金を速やかに回収できれば、手元の資金に余裕ができます。一括で回収できない場合には、一部でも良いので入金させましょう。手形取引を現金取引に切り替えるのも有効です。また、入金催促も不可欠です。期日に入金がない場合の催促はもちろん、遅延を繰り返す取引先に対する入金日遵守の念押しも忘れないようにしましょう。

● キャッシュの獲得に努める
売掛金の早期回収が難しければ、過剰在庫を一掃したり、遊休資産を売却したりすることで手元資金を確保する手もあります。不動産担保融資や補助金・助成金制度の活用を検討しても良いでしょう。

● 経費削減を徹底する
無駄な経費の見直しなくしてキャッシュフローの改善はない、といっても過言ではありません。複数の見積もりを取って仕入先やサービスを選ぶ、不要在庫が出ないよう管理を厳格にするなどの方策が必要です。

手数料の低いファクタリング会社に乗り換える

ファクタリングの利用手数料は高めに設定されているのが普通です。そのため、もともと資金繰りを改善するために利用したにもかかわらず、利用することでかえって資金繰りを悪化させてしまうことにもなりかねません。

そこで、資金繰りが苦しくなってファクタリング会社への支払いができなくなる前に、手数料の低いファクタリング会社への乗り換えを検討するとよいでしょう。かかる手数料が高いことに変わりはなくとも、会社によりまちまちであるのも事実です。複数の会社から相見積もりを取って低率のサービスに乗り換えることで、返済計画が立てやすくなります。

ただし、ここでも手数料の安さを謳う悪徳業者には気をつけましょう。手数料が安すぎる会社の場合、手数料とは異なる名目で思わぬ費用を別途請求してくるケースもあります。かかる費用の説明を内訳までしっかり行うなど、対応が真摯なファクタリング会社を選ぶことが大切です。

専門の弁護士に相談する

キャッシュフローを改善するための方策やファクタリング会社の乗り換えでは、踏み倒しリスクが避けられない場合があります。そのような場合は、ファクタリング専門の弁護士に相談してみましょう。ファクタリング会社とのさまざまな交渉を代行依頼することが可能になります。具体的な対応としては、回収金の分割払いや減額の交渉、過払い手数料の返還請求、和解や債権譲渡通知の発送留保に向けた交渉などが挙げられます。

なお、融資ではないファクタリング業務に、貸金業法をはじめとする「貸金三法」は適用されません。利息制限法を上回る手数料を取っているからといって、違法であるとは言い切れないためです。また、弁護士に依頼しても、踏み倒しにつながる事態が確実に解消されるという保証はありません。交渉がうまく進み、回収金の多少の減額や過払い金の返還に成功しても、弁護士に支払う報酬が高くなっては本末転倒です。

考えた結果、弁護士に頼る必要はないと判断する方も少なくありませんが、悪徳業者によって資金繰りが苦しくなったり、踏み倒しの寸前にまで追い込まれたりすることもあります。そうなる前に専門家を頼るのは賢明な判断でしょう。

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まとめ


売掛債権の売却によりスピーディーに資金を調達できるファクタリングですが、一方ではさまざまな要因から踏み倒しリスクが生じかねないのが実情です。踏み倒してしまうと、債権譲渡の通知により取引先を失うだけでなく、横領罪や詐欺罪などの刑事罰に問われる恐れも出てきます。

踏み倒しを避けるために、ファクタリング会社に支払いの先延ばしや分割払いを認めてもらうことも不可能ではありません。しかし、悪徳業者による偽装ファクタリングに取り込まれるリスクもあることを考えれば、可能な限り期日での一括払いに努めることが大切です。

監修
【監修】藤田 豪人 株式会社ROBOT PAYMENT 執行役員

2019年当社に入社、執行役員に就任。
当社に入社以前は株式会社カオナビにてコーポレート本部長、複数の情報IT企業にてCMOなどを歴任。
現在は、当社のフィナンシャルクラウド事業及びマーケティング全般を統括。