民泊決済と宿泊料金をめぐるトラブル

決済全般

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今、国内で最も注目されている産業の一つが観光業といっても過言ではないでしょう。中国、韓国などアジアからの訪日客が伸びをけん引し、クルーズ船の寄港が拡大したことが要因となり、2016年の訪日客は2,400万人を突破し、10年前(約670万人)と比較すると4倍近くになったことが明らかとなりました。みずほ総研のリサーチ(2017年2月)によると、2020年の訪日外国人数は政府目標の4000万人に到達する計算になると言われています。

インバウンド施策が一定の成果をあげたことで、急増する観光客の受け皿となる宿泊施設が不足しているという問題が表面化し、環境面の整備が急ピッチで進められていることは皆さまもご存じのことでしょう。そして、民泊ビジネスを後押しするための旅館業法の見直しといった問題だけでなく、宿泊料金の支払いについてのトラブルも頻発しており、宿泊業をとりまく大きな波は「決済」の領域にも影響を及ぼしています。

今回は、訪日観光客による宿泊料金をめぐるトラブルや、宿泊に関するお金のやり取りを便利かつ安全にする様々なツールについて、決済代行業者として実際にご相談があった事例や民泊業を営む上での注意事項も交えながらお話ししてまいります。
20170718

訪日観光客急増の裏で起こった宿泊料トラブル

観光客が増えるに伴い、宿泊料金を巡るトラブルの中で最もありがちなのが、キャンセル料金の回収をめぐるトラブルです。

予約していた宿泊予定客が急なドタキャンなどによって、宿泊費用や食事の材料費等を支払わないまま連絡が取れなくなったため、キャンセル料がそのまま店舗側の負担になってしまっている問題です。

訪日客の中には、日本人も同じですが、平気でドタキャンをする人も残念ながらいます。その際に事前決済のツールが無い場合は、店舗はとりっぱぐれになることに注意が必要です。

また、近年ブッキングドットコムなどの海外ユーザーからの予約・決済を受け付けるサイトやサービスも増えています。しかし、決済ができたとしてもキャンセル料などの決済ができないことが多く、キャンセル料をとりぱぐれてしまうため対策を立てたいといったご相談をいただくケースも過去にはありました。

次によくお伺いするのが、海外からの宿泊費決済を行う上でついて回る高額な決済手数料を何とかしたいというものです。

日本に来る前に、海外から日本の宿泊施設に予約を行う、予約当日来店して、支払いを行う、というのが一昔前のルールでした。

近年では、国内向けでも予約完了後、事前にコンビニや銀行振込で決済ができるようになっているのが普通になってきましたが、海外からの予約の場合、海外送金などでは手数料が高額になるため観光などのシーンで利用されることは稀です。

上記のようなトラブルの根本的な要因として、日本国内の宿泊施設におけるクレジットカード決済導入の遅れがあげられていました。しかし、昨今ではトラブル回避の意味合いもあり、ご利用を検討する宿泊事業者からのお問合せを多くいただいております。

例えば、訪日客の増加に伴いカード決済の需要が急激に増加しており、観光地のお土産屋などはカード決済端末の設置が必須要件になってきています。カード決済ができないために、極端な例をあげると2割4割程度売り上げが落ちてしまった店舗もあるため、売り上げを維持するためにも対策が急務であるとも言えます。

私共もクレジット決済の店舗端末の導入についてご相談を受けることがありますが、その際よくお伺いするのが、銀聯(ギンレン)カードなど海外独自のカードブランドの利用についてです。

10年ほど前には中国ブランドである銀聯カードの導入をしている店舗は少なかったのですが、近年の中国からの観光客の増加に伴い追加契約を検討する方が多くいらっしゃいます。

しかし、端末の種類によっては、決済端末は既存のままなのに銀聯ブランドの追加費用がかかったりと、別途費用が発生する場合もございますので注意が必要です。

また、クレジット店舗決済端末だけでは、対面での決済しかできないため来店前の決済ができません。予約と同時に事前の決済が可能なオンライン決済と組み合わせて導入されることをお勧めします。

未払いリスクの高い民泊サービス

決済の必要性が認知され、普及がすすむ一般的な宿泊施設に比べ、訪日客に合わせてニーズが一気に高まった民泊事業における決済に関してはまだまだ改善の余地が多く残されています。そもそも民泊とは、広く旅館業法で定められた施設ではない一般の方の家に宿泊することを指すため、これまで事業として捉えられていなかった経緯があります。

実態として、これまでにも「民泊」という行い自体は存在していましたが、基本的には無償であることが多く、また、見ず知らずの人を泊めるという事は基本的に想定されていませんでした。しかし、これまで述べてきたようなインバウンドの需要が急増したことにより、民泊が国内においても新たなビジネスモデルとして再定義され、宿泊施設より安く、より旅行先の国の生活文化に触れ合える宿泊方法として、世界的レベルで普及が進んでいます。

一度は利用したことがある方が多いとは思いますが、ホテルのように何でもあるわけはないものの、現地の方の生活感や価値観も生でみることができ、素晴らしい体験を味わうことができること点からもサービス面において、その価値は確かなものであると言えるでしょう。

しかし、民泊には旅館業法上の許可が必要なのではないかという認識が徐々に顕在化し、法律でもグレーゾーンとなっています。これから規制緩和はされていくとおもいますが、まだまだしっかりと定めてられていない部分も事実です。

決済の面においても、民泊施設のホストと宿泊客の支払い手段や方法などもまだまだ整理されておらず、トラブルが頻発しています。大きな要因として、クレジット決済の導入にあたり、クレジット会社審査基準に宿泊施設導入の際は旅館業許可書保持が一般ルールのため、現金以外の決済手段の導入自体が難しいという背景もあります。

宿泊前にしっかりとルールを認識し、相互の同意の元、サービス提供をおこなう必要があります。ただ、2020年のオリンピックに向け、都市部の宿泊施設不足で民泊施設の活用も重要視されているため、これからさらに環境の整備は進むと思いますが、民泊受け入れを検討されている方などは「支払い」については特に慎重にオペレーションを組んでおく必要があります。

今後の民泊業界のいくさき

カード会社の審査がネックとなり、中々クレジットカードなどの導入が進まない民泊の決済。現在最もメジャーなのが、Airbnbなど民泊を斡旋する外部の事業者に決済も委託する方法です。外部の仲介システムを利用することで、民泊事業者と宿泊客が直接お金やり取りを行うことなく、決済も仲介業者が代行する方法が増えています。

本来の決済手数料の他にもサービス手数料など、一般的な宿泊施設が自社で導入する場合よりも手数料が高額なものの、仲介業者がいることでお金周りのトラブルが未然に防止できるため、民泊事業者にとっては最善の手段の内の一つであることは間違いありません。

民泊業界に大きな需要があり、そこに多額の決済が介在するチャンスも多いことから、実績を積んでいけばクレジットカード導入の敷居も下がってくる可能性が無いとは言えません。私ども決済代行会社も、民泊をはじめとした宿泊業の成長と周辺環境の変化には今後とも注視してまいりたいと思います。

追記(2018/03/12):民泊決済を提供開始

2018年3月15日より始まる住宅宿泊事業の届出手続きと6月からの民泊新法施行に先立ち、民泊ホスト/民泊サイトに向けたクレジットカード決済ソリューションを提供開始しました。宿泊費の支払い漏れや宿泊者の情報管理など、宿泊費・ウィークリー・マンスリー家賃支払いの様々な問題を解決する民泊領域に特化した決済サービスです。
ROBOT PAYMENTの民泊決済サービス

著者プロフィール
辻 ひかり
ROBOT PAYMENT入社後、決済サービス営業部へ配属。入社一年目で四半期MVPを獲得。これまで実店舗決済、オンライン決済合わせて1,000店舗以上の決済システムの導入に携わる。
現在はオンライン決済事業部のリーダーとして、決済システム導入の相談から運用まで、顧客の課題を解決へ導いている。

監修
【監修】藤田 豪人 株式会社ROBOT PAYMENT 執行役員

2019年当社に入社、執行役員に就任。
当社に入社以前は株式会社カオナビにてコーポレート本部長、複数の情報IT企業にてCMOなどを歴任。
現在は、当社のフィナンシャルクラウド事業及びマーケティング全般を統括。