外注費と混同しやすい勘定科目とは?税務上の違いや税務調査の際の注意点なども解説

経理

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会計において、外注費の処理の仕方は迷うポイントです。その理由の1つは、支払手数料や販売促進費、給与など他の勘定科目と混同しやすい点にあるでしょう。
税務上、勘定科目を誤って申告した場合、ペナルティが科せられることもあります。そのため、会計処理において、各勘定科目のついて知ることや、経費がどの勘定科目に該当するか把握することはとても重要です。

この記事では外注費や、混同しやすい勘定科目や税務上の注意点を解説し、外注費とは何かについて考えていきましょう。

外注費とは


外注費とは、外部企業や個人事業主と請負契約を結ぶことで発生した費用のことです。たとえば、製菓メーカーが新しいお菓子を開発したとします。そして、そのお菓子のパッケージデザインを外注したとしましょう。この場合、そのパッケージデザインで生じた費用が外注費となります。

また、外注費は幅広い定義を持つ勘定科目でもあります。「自社の業種の一部を外部に委託した時に発生する費用」なので、解釈の仕方によってはさまざまな勘定科目を外注費で括ってしまうことができます。
たとえば、清掃を外部に依頼した場合、社員がいる企業では、清潔な職場環境の提供が福利厚生にあたるため、その費用は福利厚生費として計上されます。一方で、外部の業者に業務を委託していることには変わりないので、損得を考慮しなければ、その費用を外注費としてしまうことも可能です。

外注費と混同されやすい勘定科目


外注費は、幅広い意味を持つため混同されやすい勘定科目です。ここでは、代表的な3つの勘定科目について解説していきます。

支払手数料

支払手数料は士業などの専門家のサービスを利用した際に発生する費用です。士業とは高い専門性を持つ資格職業の俗称で、弁護士や税理士、公認会計士などが士業にあたります。

仕事を外部に委託することから一見すると外注費に分類されるように見えますが、士業などの専門家に報酬を支払う際は、支払手数料の勘定科目で処理を行うのが原則です。

販売促進費

グッズ作成やサンプルの配布など、商品を直接的に宣伝する場合にかかる費用を販売促進費といいます。グッズ作成やサンプル配布は外部業者に委託することから外注費と混同されがちですが、売上アップのために生じた費用は外注費ではなく販売促進費として計上します。

ちなみに、販売促進費と似た勘定科目に「宣伝費」があります。販売促進費が直接的な宣伝にかかる費用である一方、宣伝費はテレビやチラシなど情報媒体を使った間接的な宣伝にかかる費用です。こちらも混同しないよう注意しましょう。

給与

給与は「社内」の従業員に支払われる報酬です。一方「外部」の業者に業務委託した際に支払われる報酬が外注費です。たとえ同じ仕事に対して支払われる報酬であっても、会社の内外という立場の違いから外注費と給与には明確な違いが生じ、それが税務上での扱いの違いにも繋がります。詳しくは後述するのでそちらをご参照ください。

外注費の仕訳方法


外部の法人や個人に業務を委託して支払う報酬は、「外注費」や「外注工賃」などといった勘定科目で計上するのが一般的です。ここでは法人と個人事業主に報酬を支払った場合を例に、具体的な仕分け方法について確認していきます。

法人に支払った場合の仕訳

清掃業者(法人)に清掃業務を委託し、今月分の報酬である50,000円を振り込んだ場合の仕訳帳への記載例は以下の通りです。

借方勘定科目 借方 貸方勘定科目 貸方 概要
外注費 50,000 普通預金 50,000 月額報酬(法人)

相手が法人である場合、処理内容は基本的に追記することはありません。

個人事業主に支払った場合の仕訳

外部の個人事業主に「原稿執筆料」10,0000円を支払った場合、仕訳帳への記載例は以下の通りです。

借方勘定科目 借方 貸方勘定科目 貸方 概要
外注工賃 100,000 普通預金 89,790 原稿料
預り金 10,210 源泉徴収

外注費は原則として、源泉徴収は発生しません。源泉徴収が発生するのは「雇用契約」を結んだ正社員やアルバイトですが、所得税法第204条第1項に該当する報酬・料金については例外となります。「原稿執筆料」もその例外の1つです。そのため、外部の個人事業主に原稿料を支払った場合、記載例にあるように10.21%の源泉徴収が発生します。

税務上の外注費と給与の違い


同じ仕事の報酬であっても、外注費とは給与とでは性質が異なります。ここでは、両者を分ける判断基準、外注費が給与と認められた場合の対処、消費税の違いの解説を通して、税務上の外注費と給与の違いを解説します。

判断基準

外注費か給与かの判断は、「契約」と「業務実態」の2つの観点から判断されます。まず、契約の観点からは、請負契約なら外注費、雇用契約なら給与になります。ただし、一口に請負契約といっても「業務委託契約」や「派遣契約」などさまざまな契約形態があります。民法上も細部まで規定されていないので、契約の定義は曖昧です。

そのため、契約の内容だけでは判断が難しい場合は、業務実態を考慮します。業務実態では主に次の6つの観点を判断基準とします。

1.業務が代替可能か
代替可能なら外注費である可能性が高くなります。契約者本人がいなくても、ほかのスタッフに割り振っても問題ない業務であれば外注費です。

2.請求書発行を行っているか
請求書発行を行っているなら外注費である可能性が高くなります。逆に、請求書が発行されず請負契約の対価が時間単位で計算されている場合、外注ではなく雇用関係にあるとみなされる可能性が高くなります。

3.時間的拘束性があるか
時間的拘束性があると給与の能性が高くなります。これは時間的な拘束性が強いと認められる場合、従属性の観点から給与の該当性を肯定することになるためです。

4.業務の遂行にあたり会社の指揮監督を受けているか
業務の遂行にあたり会社の指揮監督を受けていると給与とみなされる恐れがあります。
雇用契約を結ぶと業務命令に従う義務が発生します。一方で、外注費にあたる業務委託契約や派遣契約は原則として業務命令に従う義務はありません。したがって、普段から業務で具体的な指示を受けていると給与である可能性が高くなります。

5.作業のための費用を自分で負担しているか
外注は、成果物を完成させるために必要な材料や機材を調達していることが前提となります。支給している場合は外注とならない可能性があります。

6.成果物が損失した場合、その作業対価を請求できるか
外注の契約では成果物を損失した場合、その対価を請求できません。給与は業務命令に従って動くため工程も報酬が支払われますが、外注は成果のみに報酬が支払われます。

外注費が給与として認められた場合

税務調査などによって、外注費として処理していたものが給与だと認められた場合、以下のような影響が生じます。

源泉所得税のペナルティ
外注費で処理していたものが給与であると認められると、源泉所得税が「徴収もれ」扱いになり、追徴課税が発生します。主なペナルティは追加納税、不納付加算税、延滞税の3つです。
不納付加算税は、自主的に納付した場合、源泉所得税の金額5%の加算で済みますが、指摘後の納付は10%に引き上げられるので注意が必要です。また、延滞税は法定納期限の翌日から2ヶ月経過するまで2.6%ですが、2ヶ月を経過してからは8.9%になるので、こちらも注意する必要があります。

消費税のペナルティ
ペナルティとして追加納税、無申告加算税、延滞税の3つがあります。無申告加算税は、自主的に納付した場合は消費税金額に5%加算で済みますが、指摘後の納付した場合、50万円以内なら15%、50万を超える箇所は20%の金額がペナルティとして加算されます。延滞税に関しては、源泉所得税と同じく、2ヶ月以内なら2.6%、2ヶ月経過は8.9%の加算となります。

仕入消費税控除の対象外になる
外注費は仕入消費税控除の対象にできるため、仕入消費税が控除されるケースが多くあります。しかし、給与は不課税取引なので取仕入消費税の控除を受けられません。そのため、外注費が給与と指摘されると、今まで控除されてきた分を納税しなければなりません。

消費税の違い

給与は雇用契約に基づく対価なので不課税取引です。一方、外注費に関しては、事業者が請負契約に基づいて行ったサービスの提供に伴う対価なので、課税取引とみなされます。

消費税を抑える方法として、顧客が支払った消費税額を差し引く「仕入税額控除」を活用することが挙げられますが、不課税取引は対象外になります。そのため、結果的に外注費の方が消費税を減らすことができます。

税務調査の際の注意点


外注費は税務調査の際に、指摘を受けやすい箇所です。本来は給与とすべきところ、計上ミスで外注費として扱っていると、大きなペナルティを科せられることになりますので、各注意点を把握しておきましょう。ここでは、外注費と給与の明確化、源泉徴収を支払うケース、請求書発行の徹底について解説します。

事業者と給与所得者を明確にする

報酬を外注費で払うことにはさまざまなメリットがあります。具体的には仕入税額控除の活用で消費税を減らせるほか、支払額の調整できることや、社会保険の加入義務がないなどです。

そのため、従業員が外注費で処理できる個人事業者にあたるか、給与で処理すべき給与所得者にあたるかは、税務調査で厳しく見られる点です。外注費が給与として認められてしまうと、追徴課税が発生してしまうため、事業者と給与所得者をしっかり判別する必要があります。

両者を分ける基準は、前述した外注費と給与の判断基準が有用です。まず、交わした契約が請負契約か雇用契約かで、雇用者が事業者か給与所得者かを分けましょう。書類上での分類ができたら業務形態のチェックです。業務代替の可否、時間的拘束性、具体的な業務命令の有無、作業費用の負担、作業対価請求の可否などに注意して、雇用者が事業者であるか、給与所得者であるか判別しましょう。

源泉徴収を支払うケースを確認する

外注費は基本的に源泉徴収を必要としません。一方で、例外もあります。それが「所得税法第204条第1項」に該当する報酬・料金です。

「所得税法第204条第1項」に該当する報酬・料金は、先述した原稿報酬のほか、以下のものが該当します。

・作曲の報酬
・挿絵の報酬
・デザイン報酬
・書籍の装丁の報酬
・映像作品などの吹き込みの報酬
・翻訳の報酬
・技芸・スポーツなどの教授の報酬
・講演料
・著作権の使用料

これらの源泉徴収の手続きは、会社側に行う義務があるので注意しましょう。

請求書の提出を徹底する

外注先から請求書の送付を徹底してもらうことは、外注費であることを明確にするために大切なことです。また、請求書なしで業務を委託してしまうと「記録に残したくないやり方をしているのではないか」という疑いを税務署にもたれかねません。トラブルの芽を摘むためにも、会社側からも積極的に請求書の発行を促しましょう。

外注と雇用では企業的にどちらがいいのか

企業の立場から見ると、外注と雇用、どちらが望ましいでしょうか。外注と雇用、それぞれのメリット・デメリットについて解説します。

まず、外注のメリットは、人材育成のコストをかけずに専門知識や技能を持つ人材を起用できる点です。社外の高い技術を活用できるため、人材育成や技術開発をゼロから行う必要なく、すぐに業務を任せることができます。
たとえば、経理や給与事務などのバックオフィス業務は企業経営に欠かせません。しかし、コア事業と兼業すると、どうしてもコア事業に割ける時間は少なくなります。そんな時、バックオフィス業務を外注化できれば、正社員はコア事業のみに集中することができます。

一方、外注のデメリットは連携の難しさです。外注の業者と上手く連携できないことで、かえって業務効率を落とす可能性があります。たとえば、外注がガイドラインを理解していなかったことで、修正箇所が膨大に発生してしまうケースもあります。

雇用のメリットは、人材育成によって会社の地力を培うことができることです。雇用は外注に比べ待遇面で優遇されるため、会社への忠誠心が期待できます。また、長期的に勤めることでノウハウも蓄積されるので、最終的には企業そのものを育てることにも繋がるでしょう。

一方、雇用のデメリットはコストがかかることです。外注費とは違い、社会保険、雇用保険は会社が半分負担します。また、給与は不課税取引のため納める消費税が軽減されることはありません。年末調整や社保などの事務的負担を、会社が引き受けなくてはならないのも大きな負担でしょう。

総評すると、短期的な利益で見るなら外注、長期的な利益でみるなら雇用に軍配が上がります。

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まとめ


この記事では外注費とは何か、混同しやすい勘定科目や、その税務上の扱いについて解説してきました。外注費と給与の違いに見られるように、勘定科目を混同するリスクは非常に高く、取り扱いには注意が必要です。
また、外注費を含む請求業務は煩雑になるやすい業務です。社員の生産性向上を目指したい企業は、「請求まるなげロボ」で請求業務を自動化することをご検討ください。

監修
【監修】藤田 豪人 株式会社ROBOT PAYMENT 執行役員

2019年当社に入社、執行役員に就任。
当社に入社以前は株式会社カオナビにてコーポレート本部長、複数の情報IT企業にてCMOなどを歴任。
現在は、当社のフィナンシャルクラウド事業及びマーケティング全般を統括。
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