内税と外税の違いを知ろう!インボイス制度の影響は?
代金を請求する際に、商品の値札の総額が税込みの場合は「内税」、税抜きで消費税を別表記しているものを「外税」といい、2014年に消費税率が8%に変わった時期から総額表示という義務付けが緩和されました。「内税」と「外税」のどちらの方法にするかは請求先の会社のルールによって異なります。このコラムでは、内税と外税の違いと税務上の取り扱い、経理方式などについてご紹介します。
内税と外税について
内税とは消費税を含む価格で、外税は消費税を含まない価格を指します。しかし、内税・外税の違いを明確に理解していない方も少なくないでしょう。ここでは、内税と外税の違いやそれぞれの計算方法についてご紹介します。
内税と外税の違いとは
内税と外税の違いは、商品やサービスの価額に消費税が含まれて表示されているか否かの違いをいいます。同じ商品を販売するにあたり、消費税が「含まれた金額」か「本体部分」だけの金額かで、消費者は高いような安いような錯覚をしてしまいます。この経緯から消費税が3%から5%にあがったときに、消費者が商品の価格比較が容易になるよう総額表示の義務付けが行われました。
2014年の8%の税率アップでは、税金が上がったのにまるで商品が値上げをされたかのように消費者に思われたまま転嫁できず、事業者が苦しむことがないように総額表示の義務化が緩和されています。現在は、総額表示である「内税」と税別表示の「外税」方式が混在している状態です。例えば、100円ショップの商品が、今まで105円表示だったものの、108円と表示しなければならないのですが、中には100円税8円という合計していない表記をしているところもあります。または、レジの際に商品本体の合計を示して、「消費税がかかりまして、合計○○円です」という提示がされます。
内税の計算方法
内税の計算は、2つの税率を区分する必要があります。そのため、請求書の作成時には、品目ごとに適用すべき消費税率を判断して、適切な消費税額を算出し税込金額を計算しなければなりません。税込価格を計算する場合、「税抜価格に課される消費税額」と「税込価格に含まれる消費税額」で計算式が異なります。税抜価格に課される消費税額を算出する場合は、「消費税額=税抜価格×消費税率」で導き出せます。
一方で、税込価格に含まれる消費税額の算出は、「消費税額=税込価格÷(1+消費税率)×消費税率」で導き出せますが、円未満の端数が生じる場合は切り捨てや切り上げ、四捨五入といった方法を取りましょう。消費税の端数処理については、法律上明確な規定が定められていないため事業者側が設定できます。また、前者の計算式を応用して税抜価格から税込価格を直接計算することも可能です。
外税の計算方法
内税の計算方法ご紹介した税込価格に含まれる消費税額の計算式を活用することで、税込価格から外税として税抜価格を算出できます。計算式は「税抜価格=税込価格÷(1+消費税率)」から導き出せます。内税と同様、端数処理に関しては四捨五入等を行いましょう。
税込価格の表示(総額表示)の義務について
2021年4月より、商品・サービスを提供する事業者は値札やチラシなどにあらかじめ消費税額を含めた価格(総額表示)の表示が義務化されました。実店舗やネットショップなど販売方法問わず該当する事業者は総額表示を実施しなければなりません。
そのため、これまで外税表示だった事業者は値札などの価格表示を変更する必要があります。ここでは、総額表示義務の概要から必要性、該当するもの、外税表示が認められるケースについてご紹介します。
総額表示義務の概要
事業者が消費者に対し、事前に消費税額を含めた価格表示をすることの義務です。これまでは、同一の商品を税抜価格で販売する事業者と税込価格で販売する事業者が混在していいたため、消費者側が実際の価格を判断するのに苦労する側面がありました。そのため、最初から税込価格で表示を統一すれば、消費者に混乱を与えることなく購入できることを配慮して実施されています。総額表示義務は、税込価格での表示を義務付けているものであるため、税込価格である旨の表示はいりません。
注意点としては、消費者がすぐに認識できる位置に価格を表示することと、消費者を誤解させるような表示に関しては景品表示法に違反する可能性があるので注意してください。また、割引商品関しては総額表示の対象になりませんが、値引前と値引後の価格を提示する場合は総額表示の対象になります。
総額表示義務はなぜ必要なのか
本来、総額表示は2004年の4月から義務化されていますがなぜ今頃になって注目されるようになったのでしょうか。総額表示義務は、2013年10月から2021年3月末まで特例措置が取られていました。その理由は、2014年4月・2019年10月と短期間の間で2度も消費税が引き上げられ、事業側が値札の張替など事務負担が増大するのを懸念したことによる配慮だと言われています。
消費税転嫁対策特別措置法では、税込価格と誤解されない表示であれば税抜価格での表示が認められています。しかし、特別が失効された2021年4月からは消費税法の規定に基づき、税込価格表示への変更を余儀なくされました。総額表示義務の必要性としては、先程もご紹介した通り消費者の利便性を高めるためです。消費者に周知される商品やサービスの価格表示が統一化されることで、ひと目で商品・サービスの価格を把握できます。
総額表示義務に該当するもの
総額表示は、チラシや値札・商品カタログなど、不特定かつ大勢の人を対象とするものに対して事前に価格表示しなければなりません。実店舗の場合は値札、配布チラシ、商品パッケージの印字など、ネットショップの場合は販売ページ、ホームページ、Web広告などが該当します。ただし、消費課税事業者の中には、総額表示義務が発生しないケースもあります。
例えば、メニュー表に価格を記載していないお店や口頭で価格をお伝えするなど、販売する商品などに価格を表示させないケースです。あくまで、総額表示は消費者に商品やサービスを販売する際、価格を提示している場合に義務が生じます。そのため、上記のようなケースや見積書や請求書、契約書などの書類は対象外となります。
外税表示が認められるケース
先程もご紹介しましたが、消費税の引き上げによって値札の付け替えや広告表示の変更など事業者側への負担を考慮して、2021年3月31日までは特別に外税表示を認められているケースもあります。ただし、外税表示も○○円(税抜き)や○○円(税別)のように消費者に分かりやすく提示しましょう。また、お店の分かりやすい場所に「当店は税抜きです」と掲示しておくとより分かりやすくなります。
税務上の取り扱い
これまで、外税表示と総額(内税)表示が混在し消費者が本来の価格を把握しづらいという懸念点から2021年4月より総額表示の統一が義務化されています。総額表示の義務化によって消費税の処理も変化があります。特に、請求書の消費税処理は適切に実行できないと正しい消費税額が算出できません。ここでは、請求書の消費税処理が異なると税務上に問題があるのか、請求書の書き方についてご紹介します。
取引先によって異なる処理だと税務上の問題はある?
取引先によって、内税と外税の違いがある処理を行うと税務上の問題はあるでしょうか。
内税と外税の違いは、あくまで表示上の問題ですので消費税の申告について問題になることはありません。ただし会計ソフトの入力時には注意が必要です。総額で入力して消費税額を自動計算させる場合が一般的ですので、外税の場合でも消費税設定を変更しないまま本体価格で入力してしまうと総額が変わってしまいます。内税と外税の表記が混在する場合には会計ソフトの消費税設定に注意して入力しましょう。
請求書の消費税部分の書き方
消費税法において請求書の記載が求められる項目は、「発行事業者の氏名または名称」「取引年月日」「取引内容」「取引金額」「取引事業者の氏名又は名称」の5つです。これに加え、2019年から導入された区分記載請求書保存方式により、「軽減税率の対象品目である旨」と「税率ごとの合計額」の記載が追加されています。消費税法では、税率ごとの合計額を税込で表記するように定めていますが、表記方法についての指定は特にありません。そのため、内税表記か外税表記どちらを選べばいいのか経理担当者にとっては悩みの種です。内税・外税によって請求書における消費税の書き方も異なります。
内税の場合、品目ごとに税込金額を記載して単価も税込表記にします。2つの税率がある場合は、分かりやすいマークを付けて軽減税率か否かわかるようにしましょう。そして、消費税が8%と10%それぞれの品目にかかる消費税の合計を記載し、最後に総額を消費税込みで「小計」「合計」に記載すれば完了です。
外税の場合、内税とほぼ同じですが品目ごとの金額又単価については税抜価格で記載することと、商品総額の小計を税抜記載、合計は税込記載に分けて請求書を作成します。
税抜経理方式と税込経理方式
法人税等の計算方法には、税抜経理方式と税込経理方式の2つがあります。消費税の納付している課税事業者は、両方の方式を自由に選択できます。しかし、消費税の納税義務が免除されている免状事業者は、税込経理方式しか選択できません。2つの方式はそれぞれ特徴や強み・弱点が異なります。ここでは、それぞれの特徴とメリット・デメリットについてご紹介します。
税抜経理方式とは
仕入れ時に業者に支払った代金又は商品を販売して受け取った代金を消費税分と本体価格に分けて処理する方法です。仕入れ時の代金に含まれる消費税は仮払消費税、受け取った代金の消費税は仮受消費税として区分され、決算時に双方を相殺させます。相殺させた後に納付しなければならない消費税分は未払消費税として処理しましょう。原則、取引は同一の経理方式を採用しますが、税抜経理方式の場合、固定資産等又は経費のどちらかを税込処理する「混合経理処理方式」が認められています。
税抜経理方式のメリット・デメリット
メリットとしては、取引の都度発生する消費税を仮払消費税、仮受消費税として仕入れ額・売上額とは別に計上するため、期中でも損益が正確に把握できます。また、当期純利益と売上高を割って算出される売上高利益率は、税込経理方式よりも高くなります。売上高利益率が高いと、効率的な経営が実現できている証拠であり、財務指標も良くなるでしょう。さらに、法人税の減価償却に関する特例判定でも有利になります。
一方デメリットは、消費税額と本体価格を区分しなければならないため経理処理に手間がかかることです。会計ソフトを導入していればさほど問題ではないでしょうが、導入が難しい中小企業にとっては大きな負担となるでしょう。他にも、取引ごとに1円未満の端数処理を行うため取引回数が増えるたびに仕入れ税額控除額も減っていく可能性があります。
税込経理方式とは
仕入れ時に支払った代金と、商品を販売した際に受け取った代金の消費税分を本体価格に合算して処理する方法です。消費税の納税義務が免除されている免税事業者は必ずこの方式を活用しなければなりません。決算時の段階で、未払いの消費税分を租税公課として処理します。また、課税売上に係る消費税額は売上金額に、課税仕入れに係る消費税額は仕入れ金額にそれぞれ計上させます。
税込経理方式のメリット・デメリット
メリットは、消費税額と本体価格を合算して処理できるので仕訳が簡単に済みます。会計ソフトを導入していない事業者にとっては利便性が期待できるでしょう。また、免税事業者は設立から3期以降で課税事業者となった場合でも形式を統一していれば、前期との比較がしやすくなります。課税売上が5,000万円以下の事業者は簡易課税制度が受けられますが、消費税額の計算方法が通常と異なるためまとめて処理できる形式がおすすめです。さらに、機器等を購入した際に適用される特別償却や特別税額控除の額も大きくなるため節税対策に効果があります。
一方デメリットは、期末に確定した消費税額を損益に反映させて最終利益を確定させるため、期中の損益ができません。他にも、10万円未満のものを購入した際に消耗品として一括計上できる減価償却の判定時に税込価格で判定されるため本体価格が10万円未満でも消費税額を上乗せして超えた場合に経費として処理できないデメリットがあります。交際費に関しても同様で、年間800万円以下の交際費は損金として計上できますが、800万円を超えた部分は課税対象に該当してしまいます。
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