電子帳簿保存法改正が事業者に与える影響とは?主な変更点や対応方法を解説

請求書 請求業務

Facebook にシェア
Pocket


デジタル社会が当たり前となった今、経理の電子化も急速に進んでいます。経理の電子化を後押しするものとして、2022年1月に行われた電子帳簿保存法の改正があります。
しかし、電子帳簿保存法改正によって実際は何が変わるのか、また、どのような対応が必要なのかわからないという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、電子帳簿保存法の法改正によって与える事業者への影響と変更点、対応策などについてご紹介します。

【無料EBOOK】 請求管理サービス7社を徹底比較!導入する際のポイントなども解説

電子帳簿保存法の基礎知識


電子帳簿保存法により、国税関係帳簿・書類などを電子データとして保存することが可能になりました。しかし、電子データとして保存するには要件を満たす必要があり、書類の種類に寄っても異なります。ここでは、電子帳簿保存法の概要と3つの保存区分をご紹介します。

電子帳簿保存法の概要

電子帳簿保存法は、帳簿書類を紙媒体ではなく電子データで保存を認める法律です。データ保存時の負担軽減を目的としており、ペーパーレス化の促進によるバックオフィス業務の効率化やデータ管理の徹底による内部統制の強化が期待できます。
電子帳簿保存法は、主に2つの柱でできています。まず1つ目が、各税法で原則紙保存が義務付けられている帳簿書類に対して、定められた要件を満たした場合に電子データ保存を認める規定です。そして2つ目が、電子データを活用して取引書類をやり取りしている場合の保存義務等を定める規定です。電子帳簿保存法の対象となる企業は、所得税や法人税の国税関係帳簿書類の保存義務者で、法人・個人事業主ともに企業規模は問いません。

電子帳簿保存法の対象となる書類

「電子帳簿等保存」における帳簿には、仕訳帳・総勘定元帳・売掛帳・買掛帳・現金出納帳・固定資産台帳等が含まれます。

次に、決算関係書類として挙げられるのが賃借対照表・損益計算書・棚卸表などです。また、取引先から受領した請求書・領収書・見積書、ならびに自身が発行した取引関係書類の控えも含まれます。

そして「スキャナ保存」に該当するのは、紙媒体で受領した契約書・領収書・請求書・納品書・見積書・注文書等です。ただし、棚卸表や賃借対照表、損益計算書などは対象に含まれません。

電子取引情報として定義されている書類は、電子取引によってやり取りした請求書・注文書・納品書・見積書・領収書などです。なお、電子取引とはEDI取引、インターネット、電子メール等オンラインで取引情報を授受する取引方法を指します。

電子帳簿保存法における3つの保存区分

保存区分は3つに分類されます。
1つ目が、電子帳簿保存です。会計ソフト等で作成した帳簿あるいは決算関係書類などを、CDやクラウドサービスに電子データのまま保存することを指します。保存には一定の要件を満たす必要があり、なお優良帳簿で保存する場合には、検索要件を満たすシステムの準備も不可欠です。

2つ目がスキャナ保存で、紙で作成・受領した書類をスキャンして保存することを指します。スキャナ保存では、電子データの存在・改ざんされていないことを証明する「タイムスタンプ」の付与が必要です。タイムスタンプを付与した上で、必要要件を満たして保存します。スマートフォンやデジカメで撮影して保存するケースもあります。

最後に3つ目が、電子取引です。電子的に授受した取引情報を電子保存することを指します。スキャナ保存と同様に、タイムスタンプの付与と電子保存要件を満たさなければなりません。

電子帳簿保存法改正の目的

電子帳簿保存法改正の背景には、経理業務の生産性向上を目的としたデジタル化の推進が挙げられます。
本来、国税関係帳簿書類の保存は紙媒体の保存が原則です。しかし、バックオフィス業務の負担が強いられることや印刷コストがかかることから、1998年に電磁帳簿保法が施行されました。その後、時代の変化とともに法改正をしてきましたが、未だに紙媒体での保存がルールになっている企業も少なくありません。
しかし、新型コロナウイルスの流行をきっかけとしたテレワークの増加やインターネットの普及に伴う消費者行動の変化など、時代はデジタル化へと移行し始めています。さらに、2023年にはインボイス制度も施行されるため、帳簿書類の電子化は急務です。そのため、インボイス制度が施行される前に多くの企業にデジタル変革をしてもらうのが狙いだと考えられます。

電子帳簿保存法改正による変更点


2022年の法改正によって、国税関係帳簿書類の要件緩和、電子取引時の電子データ保存の義務化、罰則の強化といった変更がありました。特に、国税関係帳簿書類の要件緩和では5項目が変更されています。ここでは、法改正によって変更となった5項目の内容を詳しくご紹介します。

事前承認手続きの廃止

これまで、帳簿書類の電子保存には原則、保存する3か月前までに税務署に承認手続きを届け出る必要がありました。しかし、電子帳簿保存法に対応するためには、実際の運用までに数か月から1年程度の期間を要することも珍しくないため、事前承認手続きは企業にとって大きな障壁になっていました。
そのため法改正によって事前承認手続きが廃止されることで、導入フローが簡素化され導入する企業が増加すると考えられます。ただし、法改正前に承認申請された場合は、取りやめの届出書を提出しない限り以前の保存要件を満たす必要があるのでご注意ください。

タイムスタンプ要件の緩和

タイムスタンプとは、ある時刻に該当する電子データが存在していたことと、それ以降改ざんされていないことを証明する仕組みです。法改正前は、取引先から領収書などを受領した際、受領後3営業日までに自署して書類をスキャンし、タイムスタンプを付与する必要がありました。しかし、法改正によって自署が不要になり、タイムスタンプの付与も最長約2ヶ月と概ね7営業日以内に延長されました。また、データの訂正・削除の履歴が残るシステム、訂正・削除ができないシステムに保存した場合は、タイムスタンプは不要です。
ただし、タイムスタンプを利用する際に法改正後の付与期間にするためには、取引情報の授受から当該記録事項にタイムスタンプの付与までの各事務処理に関する規定を定めておく必要があります。

検索要件の緩和

これまでは、国税関係帳簿書類に応じた主要な記録項目を、検索要件として設定する必要がありました。具体的には取引年月日及び金額については、2つ以上の任意の記録項目を組み合わせて検索できなければなりませんでした。
法改正後は、検索に必要な項目が取引年月日、金額、取引先の3つに緩和されています。電子帳簿保存に関して、優良な電子帳簿保存については法改正前の検索要件を満たす必要があるものの、その他帳簿では検索要件を全て満たす必要はありません。

適正事務処理要件の廃止

適正事務処理要件とは、相互牽制や定期的な検査及び再発防止策の社内規定整備などのことです。法改正前は、領収書などをスキャンして電子データ保存するためには、2名以上が関与する体制構築と、定期検査が完了するまでの間は紙の原本の保管が必要でした。しかし、法改正によって適正事務処理要件が廃止され、1名でも事務処理の実施が可能になりました。また、スキャンされた書類もすぐに破棄できます。そのため、スキャナ保存を導入する障壁が下がり、データ保存の電子化を取り入れる企業が増えると期待できます。

電子取引の書面での保存の廃止

所得税や法人税などの電子取引に対するデータ保存では、従来は紙媒体での保存も認められていました。しかし、改正後は電子データでの保存が義務付けられています。

電子帳簿法に関する注意点


先程もご紹介しましたが、電子帳簿保存法には3つの保存区分があります。その中でも、スキャナ保存と電子取引の保存要件には注意しなければなりません。ここでは、スキャナ保存と電子取引の注意点をご紹介します。

スキャナ保存の注意点

スキャナ保存では、3つのポイントに着目しておきましょう。1つ目は、白黒でのスキャンは一般書類のみに限定されていることです。つまり、契約書や請求書などの資金や物の流れに直結する重要書類のスキャンは、カラーでなければなりません。
2つ目は、一度にスキャンできない書類は、複数回に分けてのスキャンが必要なことです。契約書や請求書などが複数枚に及ぶ場合、一度でスキャンできないからといって、原本の大きさを変更したコピーをスキャンすることは認められていません。
3つ目は、スキャンした書類は一定期間保管しておく必要があることです。スキャンした書類をすぐに破棄してしまうと、入力期間が過ぎていた場合や定期的な検査で不備があった場合などで困るケースがあります。そのため、定期的な検査があるまでの期間は原本を破棄しないようにしましょう。

電子取引の注意点

電子取引の保存には、真実性の要件と可視性の要件という2つの保存要件を満たす必要があります。真実性の要件とは、保存するデータが改ざんされていないことを証明することです。具体的には、タイムスタンプが付与されたら訂正・削除の確認が可能なシステムあるいは訂正や削除が行えないシステムで、取引情報の授受・保存を行います。それと並行して、保存者又は監督者に関する情報を確認できるようにしておきます。事前に訂正や削除に関する事務処理規定を設けることも重要です。
可視性の要件とは、保存したデータを検索・表示できることです。具体的には、保存場所に電子計算機処理システムの概要書を備え付けて、画面・書面に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておきます。また、取引年月日や金額の範囲などを検査できる機能も確保しましょう。

電子帳簿保存法改正に伴う企業の対応


今回の法改正では、保存要件が大幅に緩和され、電子帳簿保存法に対応しやすくなった一方で、紙での保存が一切認められないことによる紙離れの急加速が予想されます。
近年は、テレワークの普及も一因となり実務上のデジタル化も求められているので、さらにペーパーレス化が進んでいくでしょう。そのため、自社の業務フローにおけるデジタル化、ペーパーレス化の現状を確認して、法改正に対応する体制作りを検討していく必要があります。また、保存要件の緩和によって不正リスクが高まることから、不正時の加重措置による罰則が法改正によって強化されています。そのため、加重措置の対象にならないように一定の社内規定を設けましょう。
具体的な法改正に伴う対策としては、既存システムの改修や保存要件を満たす新たなツール・システムの導入、新たなデータ保管場所の追加などが挙げられます。

電子帳簿保存法改正にも対応した請求書の発行も可能な請求管理ロボを導入しよう!

電子帳簿保存法改正に対応するためには、単に改正された要件を満たせる環境を整えるだけではなく、ツールやシステム導入後の運用ルールまでしっかりと内部統制しておくことが大切です。電子取引情報の電子保存の義務化には、2年間の猶予が設けられていますが、ツール導入や運用ルールの設定までを考えると、時間に余裕があるとは言えません。早急に取り掛かることが重要です。しかし、自社に合うツールやシステムの選定は簡単ではないでしょう。

電子帳簿保存法改正への対応にお悩みの方は、ROBOT PAYMENTが提供する請求管理ロボの導入をぜひご検討ください。
請求管理ロボは、毎月の請求業務の負担を解放するクラウドサービスです。ネット環境が整っていれば、クラウド上でどこでも請求作成が行えます。顧客の都合に合わせて請求書類の電子化も可能なので、ペーパーレス化を実現します。
口座振替やクレジットカード決済など、異なる経路での入金結果も簡単に把握できるので、取引先ごとの入金方法や金額の管理も容易です。また、他社の会計ソフトとの連携もできるので、取込データをエクスポートできます。一連の管理業務を自動化し、転記作業を削減することで、大幅な業務効率化に貢献します。

まとめ


デジタル化が進む現代において、帳簿書類を紙で保存するのは効率的ではありません。2022年の電子帳簿保存法改正によって、一部書類の電子データでの保存が義務付けられたこともあり、さらにペーパーレス化の流れは加速すると予想されます。法改正には2年間の猶予期間が設けられているものの、早めの対策が重要です。今のうちからツール・システムの導入を検討しましょう。
ROBOT PAYMENTが提供する請求管理ロボは、取引先の都合に合わせて請求書の電子化が可能なクラウドサービスです。毎月の請求業務も請求管理ロボに一任することで、業務負担が約80%削減されます。使いやすい管理画面や万全の運用サポート、高度のセキュリティ対策など充実しており、規模問わず500以上もの企業から導入されています。手間を抑えて経理業務の効率化を実現したい方は、ぜひ請求管理ロボの導入をご検討ください。

監修
【監修】藤田 豪人 株式会社ROBOT PAYMENT 執行役員

2019年当社に入社、執行役員に就任。
当社に入社以前は株式会社カオナビにてコーポレート本部長、複数の情報IT企業にてCMOなどを歴任。
現在は、当社のフィナンシャルクラウド事業及びマーケティング全般を統括。
  • 請求書の作成から発行まで自動化「請求管理ロボ」
  • 請求管理ロボ