前受金を適切に管理しよう!仕訳例や紛らわしい勘定科目も詳しく解説

請求業務

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前受金(まえうけきん)」は、「商品・サービスを提供する前に受け取る代金」のことですが、そのまま売上金として計上できません。この記事では、「前受金とは何か」「他の科目と何が異なるのか」など前受金に関する基礎知識を軸に、前受金を効率的に管理・運用する方法を紹介します。

前受金とは

受注生産や予約販売などで商品が売れると、商品を納品する前に、代金の一部または全額を受け取ることがあります。前受金とは、このように商品代金を先に受領した際に使用する勘定科目です。
ここでは、前受金が負債に分類される理由や、混同しやすい科目との違いを解説します。

前受金は「負債」

帳簿の要素は、大きく分けて「資産」「負債」「純資産」「収益」「費用」の5つです。帳簿を基に、「貸借対照表」や「損益計算書」などの決算書が作成されます。「資産」「負債」「純資産」から構成されている「貸借対照表」は、会社の経営や財産バランスを表すものです。「収益」や「費用」、収益から費用を差し引いた「純利益」から構成される「損益計算書」は、会社の収益や費用、利益率を表しています。

そして、「前受金」は会社の経営や財産バランスを表す「貸借対照表」の内、「負債」を表す勘定科目として用いられるものです。前受金として受領した時点で商品・サービス提供の義務が残っていることから、負債として扱われます。そのため、提供が困難になった場合は返金しなければなりません。商品・サービスの提供が完了して初めて売上として計上できます。

負債は、「流動負債」と「固定負債」の2つに分類可能です。1年以内に支払うものを「流動負債」、1年以上かけて支払うものを「固定負債」と呼びます。前受金は流動負債に分類されることが一般的ですが、受領から商品・サービスの提供までに1年以上を要する場合は固定負債に分類しなければなりません。

売掛金との違い

前受金と間違えやすい勘定科目が「売掛金」です。前受金が商品の提供前に代金を回収するのに対し、売掛金は商品・サービス提供後に代金を回収します。

小売店など消費者向けのビジネスであれば、基本的に商品提供と同時に代金が支払われ、すぐに売上として計上できます。しかし、法人向けのビジネスでは商品提供時に代金が支払われず、決められた期日までに支払う「後払い」が一般的です。後日、商品・サービスの代金を回収する取引を「掛取引(かけとりひき)」といい、売掛金とは掛取引で発生した未回収分を計上する際に用いる勘定科目を指します。

売掛金は、「商品・サービスの代金を受け取ることができる権利」であるため、「貸借対照表」では「資産」としての扱いです。代金を回収し、売掛金という権利がなくなることで、初めて売上高として計上できます。

なお、売掛金として処理する取引で先払いを受けた場合には前受金として記帳し、商品・サービス提供後に売掛金を前受金に振り替えることが可能です。提供が完了していない時点で自社の決算月を迎えた場合、その時点で残っている分を前受金に振り替えられます。

前受収益との違い

前受金と特に混同しやすい勘定科目に「前受収益」があります。前受金と同様に負債として扱われますが、会計上は明確に区別されている別科目です。前受収益とは、前もって受け取った代金が、翌期以降の収益を含んでいる場合に用いられる勘定科目を指します。家賃や地代、定期サーバ契約、サブスクリプションなどの長期契約をした場合に該当することがほとんどです。

1年契約のサブスクリプションサービスを例に挙げます。1年間1万2,000円で動画見放題のサブスクリプションサービスを、顧客が1月から開始したとしましょう。1年分の代金として1万2,000円を前もって受領した場合、まず1万2,000円を12か月で割ります(1か月あたり1,000円)。そしてサービス提供が完了した1か月ごとに、1,000円を売上として振り替え処理するのです。

企業の決算月である3月を迎えましたが、サービス提供は全て完了していません。既にサービス提供が完了した3か月分(3,000円)は売上として処理できますが、残りの9か月分(9,000円)は提供が完了していないので、まだ売上として処理することができません。このような時に使用する勘定科目が「前受収益」です。翌期に繰り越された前受収益は、納品が完了次第「売上」へ振り替えられます。

「収益認識に関する会計基準」における前受金の定義

2021年4月から適用される「収益認識に関する会計基準(新収益基準)」では、「契約負債」という科目が追加されています。契約負債とは、企業から商品・サービスの提供を受けるために顧客から支払われた、または支払い期限に達している対価を指します。

前受金は顧客から支払われた対価のみが対象になっていますが、契約負債は支払い期限に達している対価も含まれていることが相違点です。発行後の商品券、商品・サービスの購入特典として付与されるポイントなどが契約負債に該当します。

新収益基準では、前受金・前受収益に並ぶ表記として契約負債が用いられます。今後は、賃借対照表において前受金とされてきた勘定科目が契約負債へと表記変更されるケースが増加するでしょう。

前受金管理のポイント

前受金管理を適切に行うには、売上計上できるタイミングや前受金の受領、取り崩しの仕訳などを適切に把握しておくことが大切です。会計情報を充分に把握せず管理を行うと、書類が読みづらくなる、書類と実際の会計情報が異なるといった問題が生じるリスクが高まります。ここでは、前受金を計上する際の基準や記帳の仕方など、知っておきたい知識を紹介します。

売上計上できるタイミング

前受金」を売上として計上できるタイミングは、商品・サービスの納品が完了した時です。納品前に受け取った代金は、その時点では売上として計上できません。しかし、お金は受け取っているので、何かしらの処理をしなくてはなりません。

前受金の受領が複数ある場合は、顧客管理を徹底することが重要です。どの顧客からいくら受領しているのか、売上として計上できる日はいつなのかといった区分管理を怠ると「負債」として前受金が残ってしまいます。

3か月・6か月・1年など、企業は一定の期間で損益を計算する必要があります。前受金を売上として振替処理するタイミングがずれると、期間損益に影響を及ぼすためしっかりと管理しましょう。

受け取り時の仕訳

負債の勘定科目は、負債が増加した際は「貸方」、負債が減少した際は「借方」に記載します。例えば、「前受金として1万円を現金で受け取った場合」は1万円という現金(資産)が増えたので、借方に「現金 10,000円」と記載します。一方、前受金という負債が1万円増えたので、貸方に「前受金 10,000円」と記載する仕組みです。

取り崩された時の仕訳

販売が成立すると、商品・サービスを納品する「義務」がなくなるため、負債である前受金も消滅します。これが前受金の「取り崩し」です。

「10万円の商品に対し、前受金として1万円を受領した」時点では、借方に「現金 10,000円」、貸方に「前受金 10,000円」と記載されています。前受金が取り崩された際の仕訳は以下の通りです。

「商品を納品し、代金10万円から前受金1万円を差し引いた9万円を現金で受領した場合」を見てみましょう。この場合、「負債である前受金が1万円減った」「資産である現金が9万円増えた」「収益である売上高が10万増えた」の3つを表す必要があります。

今回は負債が減ったので、まず「借方」に「前受金 10,000円」と記載します。次に資産である現金が増えたので、「借方」に「現金 90,000円」も追記してください。前受金として受け取った1万円と現金で受け取った9万円を合わせた10万円が収益となるため、収益の定位置である「貸方」には「売上 100,000円」と記載します。

取引キャンセル時の仕訳

顧客から料金を受け取った後に取引キャンセルが発生した場合、基本的には受け取った料金を「貸方」、返金する前受金を「借方」に記載します。キャンセル料は事務手数料や損害賠償金といった名目が用いられる場合もあり、請求する条件によって適切な仕訳や消費税の取り扱いが異なる点に注意しましょう。

解約、返金対応等の事務手数料として受領する分は、事務作業の対価に該当するため課税対象です。一方、解約時に損害賠償金として受領する分は、逸失利益の補填に該当するため課税対象にはなりません。また、事務手数料と損害賠償金を区分せずにキャンセル料として一括で受領する場合も課税対象外です。

消費税は課税されない

消費税は資産の引き渡しやサービス提供時に課税されるもので、前受金は課税対象外です。前受金を受領した段階では資産やサービスが顧客へ提供されていないことため、課税されません。

例えば、宿泊施設の予約料金や工事料金などを前払いで受け取った時点では、前受金として扱われるため消費税の課税対象外です。しかし、取引完了後に前受金を取り崩し、売上として計上した時点で課税対象に変わります。前受金を売上計上する際は、消費税が課されることを考慮して仕訳を行いましょう。

受け取った金額に含まれている消費税は仮受消費税として仕訳を行い、決算時に仮払消費税と相殺処理することで未払消費税を算出します。消費税率が異なるものを取り扱っていたり、課税対象にならない取引を実施していたりする場合は、個別に計算が必要です。なお、仮払消費税の方が多かった場合、未収消費税として計上することで還付の対象になります。

前受金として処理する取引の具体例

前受金は金額が確定しており、主目的たる事業に関係する取引において使用される勘定科目です。取引の詳細が明らかになっていない場合には「預り金」や「仮受金」として仕訳を行うことが一般的です。ここではいくつかの業種を対象として、前受金処理の具体例を紹介します。

小売業である場合、取り扱う商品の仕入れ代金を受け取ってから買い付けを行う際の代金、予約販売する商品の料金を受け取ってから販売する際の料金などが前受金に該当します。

飲食業である場合、団体予約や貸し切りなどの利用客から受け取った手付金、ケータリングサービスの利用客から受け取った手付金などが前受金です。

サービス業である場合、回数券や年間パスポート等の購入代金、講演会の参加費用として事前に受け取る料金などが前受金に該当します。

各業種での共通点として、将来的に売上になる手付金、仕入れ代金などは前受金として処理できることが挙げられます。勘定科目の分類に迷う場合、商品・サービスの受け渡し完了時点で売上に振り替えられるかを考慮して分類を決めるようにしましょう。

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まとめ

前受金とは、商品の納品前に代金を受け取った際に使用する勘定科目です。前受金は、商品・サービス提供の「義務」が残っていることから、「負債」として扱われます。前受金を売上計上するタイミングは、商品・サービスの提供後です。提供前は売上として計上できないため、売上高として計上されるまでの間、一時的に処理するために前受金として処理します。

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監修
【監修】藤田 豪人 株式会社ROBOT PAYMENT 執行役員

2019年当社に入社、執行役員に就任。
当社に入社以前は株式会社カオナビにてコーポレート本部長、複数の情報IT企業にてCMOなどを歴任。
現在は、当社のフィナンシャルクラウド事業及びマーケティング全般を統括。