請求漏れ・支払い拒否にどう対応する?請求漏れへの具体的対策を解説
企業にとって代金未回収は避けたいリスクのひとつです。代金未回収が発生すると売上を計上しても利益を上げることができず、企業にとってはそのまま損失となります。そのため、請求漏れ・請求ミス・支払い漏れ・支払い拒否が起きた原因を突き止めて、早期に適切な対応を行うことが大切です。
この記事では、請求漏れや支払い拒否が起きたらどうするのか、またどうしたら請求漏れを効率的に防げるのかといったことを解説します。
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請求漏れ・請求ミス・支払い拒否・支払い漏れの発生原因と支払い義務
ここでは、請求漏れ・請求ミス・支払い拒否・支払い漏れの発生原因と、その場合の支払い義務について解説します。
請求漏れ・請求ミスが起こる原因
請求漏れ・請求ミスが起こる原因は、「業務プロセス上の問題」「システム関連の要因」「コミュニケーション不足の問題」などが挙げられます。
業務プロセス上の問題としては、作業の属人化やマニュアルの不備により、担当者によって処理方法が異なる点があります。また、チェック体制が不十分で、エラーの早期発見ができないことも原因です。書類の受け渡しや保管方法が不適切で、重要な文書の見落としや紛失があったり、請求書の作成・発行・送付自体が忘れられていたりするケースもあります。
次に、システム関連の要因としては、データ入力時の人的ミス、システム間の連携不具合、マスターデータの更新漏れなどが挙げられます。特に複数のシステムを使用している場合、データの整合性が取れていないことがよくあるので注意が必要です。
そして、コミュニケーション不足の問題については、部署間や取引先とのコミュニケーション不足により、価格や取引条件の認識違いが発生することがあります。また、変更情報が適切に共有されないことで、古い情報に基づいて請求処理をしてしまうケースもあります。
支払い拒否・支払い漏れが起こる原因
支払い拒否・支払い漏れが起こる原因は、「請求側の不備」「取引先側の業務プロセス上の問題」「取引先側の経営状態の問題」などが挙げられます。
請求側の不備としては、請求書を送付するタイミングが遅かったり、請求書の送付先や宛先に誤りがあって届いていなかったり、という点があります。また、請求内容に説明不足や不明確な記載がある、取引先の支払いサイクルを考慮しない支払い期日を設定している、納品書と請求書の内容が不一致、といったことが原因で、相手が不信感を持った可能性もあるでしょう。
次に、取引先側の業務プロセス上の問題としては、請求書の紛失や見落とし、支払い期日の管理ミス、請求書の電子化やペーパーレス化への対応の遅れなどにより、意図せず支払い漏れが起きている可能性も考えられます。
そして、最も憂慮すべきは、取引先側の経営状態の問題です。資金繰りの悪化により、意図的に支払い遅延や支払い拒否を起こしている可能性があります。この場合、取引先が支払い期限の延期を要請してくることもありますが、安易に了承すると自社の資金繰りが悪化するため、慎重な対応が必要です。
請求漏れ・請求ミスがあっても支払い義務はある
請求漏れ・請求ミスがあっても、先方には支払い義務があります。これは、実際に取引が行われていれば、たとえ請求書の金額が間違っていても、正しい金額分の支払い義務はあるということです。つまり、先方が請求漏れをしているので、払わないという対応は原則認められていません。
また、実際より少ない金額で請求してしまった場合(過小請求)、不足分を後から請求することができます。反対に、請求金額が実際よりも多すぎた場合(過大請求)、相手先には実際の取引額以上の支払い義務はありません。誤って多く支払ってしまった事業者は、払いすぎた分の返還を求めることができます。
ただし、これらの請求漏れに関する権利には時効があります。民法166条にもとづいて5年で売掛債権は時効消滅するのです。
つまり、5年を過ぎると、請求漏れや請求ミスがあってもさかのぼって請求することはできなくなってしまいます。そのため、請求ミスに気づいたら、できるだけ早く対応することが大切です。
請求漏れを未然に防ぐ対策
請求漏れは、請求管理業務の工夫次第である程度未然に防ぐことができます。以下で具体的な対策について解説します。
ナンバリングを行う
請求書に固有の番号を割り当てること(ナンバリング)も有効な対策です。特に取引を何度も行って請求書を何通も発行しているケースでは、請求書にナンバリングしておかないとどれが請求すべき案件かが分かりにくくなります。
取引に伴って生じる納品書や見積書にも請求書と同一の通し番号を打つことで、請求漏れを防ぎ、売上計上から請求管理までを一貫して処理できるようになります。また、請求に問題があった場合も、通し番号が割り当てられていれば、案件名と番号を伝えるだけで請求書を送った側と受け取った側での状況の共有が容易になり、取引が円滑に進むでしょう。一般的には見やすいように請求書の右上に通し番号を記載します。
チェックリストで徹底的に管理する
請求書の作成や発行の各段階で生じる作業を細かく洗い出して可視化し、チェックリスト化するのも有効です。チェックリスト化することで複数人による相互チェックが可能になるだけでなく、進捗が可視化されるので属人化の防止にも役立ちます。
営業部門とも状況を共有すれば、請求漏れや入金漏れの発生をいち早く検知して取引先に働きかける手がかりとなり、大きな問題に発展するのを未然に防止できます。
スケジュール管理を怠らない
請求書発行・送付のスケジュールをあらかじめ決めておくと良いでしょう。請求に関する業務は月末に集中することが多いことから、請求書の作成を月末に大量にまとめて行おうとすると業務の負荷が集中してミスが起きやすくなりがちです。そのため、取引先から受領証を受け取ってから何日の間に作成・送付するなどを取り決め、業務の負荷の平準化に配慮したスケジュールを組むと効果的でしょう。
また、入金期日を過ぎても入金されない場合に備え、経過した日数に応じて取るべき対応策を事前に明確にしておけば対応がスムーズになります。
支払い拒否・支払い漏れが起きたときの対応
支払い拒否・支払い漏れが起きたら、まずやるべき対応について、以下で解説します。
相手側が法人の場合
相手側が法人の場合、まずは話し合いによる解決を目指します。
請求書の送付を忘れていたというケースも珍しくないので、自社側で請求漏れがないか確認しましょう。未払いの原因が相手側にあり、例えば資金繰りに問題があるというなら、いつ・どのような方法なら支払えるのかなど話し合って支払いを促します。
話し合いで支払いに応じない場合は、書面で督促を行います。相手が支払いに応じない状態が続くのであれば、商品やサービスの納入を続けても損害を拡大させるだけなので、納入を停止することも必要です。
ここまでの手段を取っても効果がなければ、訴訟や調停などの法的手続きを利用します。ただし、裁判手続きを利用すると相手先との関係が悪化し、取引を継続できなくなることも覚悟しなければなりません。また、手続きを進めるには弁護士に依頼する必要があり、費用がかさみます。法的手続きは最後の手段として慎重に検討を進めましょう。
相手側が個人の場合
支払拒否をしているのが個人である場合も、法人の場合と対処方法は基本的に同じです。自社のミスでないことを確認し、まず話し合いを持ち、話し合いで埒が明かないならメールや内容証明郵便を送付して督促し、それでも効果がないなら法的手段に進みます。相手が経営者本人であれば、話し合いや督促をストレートに進めやすいでしょう。
個人を相手にいきなり訴訟を起こすのは躊躇われるというなら、支払い督促を利用することも考えられます。支払い督促とは、正式に裁判手続きを経なくても、裁判所から取引先に対して支払いを命じる督促状を送付してもらえる制度です。訴訟を起こして法廷で判決を出す通常の裁判手続きよりも簡単に行うことができ、費用も低額です。
請求漏れが決算後に見つかった場合の対応
請求漏れが決算後に見つかった場合、まず最初に、請求漏れの金額と取引内容を正確に確認し、関連する証憑書類を整理して発生時期を特定する必要があります。
そのうえで、金額の多寡に応じて適切な会計処理を選択します。
金額が大きい場合は、過年度修正として処理し、必要に応じて修正申告を行います。場合によっては株主総会での承認が必要となることもあります。
一方、金額が少ない場合は、当期の損益として計上するか、特別損益として処理することを検討します。
また、再発を防ぐため、請求プロセスの見直しやチェックリストの作成、定期的な残高確認の実施などの対策を講じることが重要です。これらの対応と並行して、経営陣への報告や、必要に応じて監査法人への相談、取引先への説明と対応の協議を行います。特に決算期末には、より慎重な確認作業を行うことをお勧めします。
今後の請求漏れ・請求ミスを防ぐためにできる対応
請求漏れを防止するには、アナログによる管理手法では限界があります。
ここでは、今後、請求漏れ・請求ミスを防ぐためにできる具体的な対応について、以下で解説します。
エクセルで管理する
エクセルを代表とする表計算ソフトは、多くの会社の経理部門で請求管理のためのツールとして広く利用されています。表計算ソフト自体は多くの方が使い慣れているうえに、カスタマイズも容易です。案件管理・請求スケジュール管理・請求ステータス管理など、管理情報ごとにシートを作成すれば、1つのファイル上で一括管理することも可能です。
ただし、デスクトップ版では同時に複数人で編集することは基本的にできません。リアルタイムで同時編集をするのであれば、サブスクリプション版のオフィス365を導入し、毎月サブスクリプション料金を払う必要があります。
請求書発行ツールを導入する
請求書発行ツールを導入すれば、取引先情報や請求情報などの必要項目を入力するだけで請求書や見積書が発行されます。請求書の発行にはメールでの送信や郵便による発送、取引先情報の管理、売上の分析など細かい作業がつきものです。
しかし、請求書発行ツールであれば、これらの事務作業を一括して1つのツール上でまとめて行うことが可能です。従来は手作業で行っていた作業をツール上で行うことにより、経理業務の効率化と人的ミスの防止が両立できます。
請求管理システムを導入する
一般的な請求管理システムは基本機能として請求書発行、納品書発行、支払明細書発行、請求書発行までの書類関連の作業をカバーしています。さらに進んだものでは、売上レポート出力、入金管理、支払い督促、決算書作成までの機能をカバーしているものもあり、請求管理にまつわる業務を完全に自動化することも可能です。
また、多くのシステムはクラウド型のSaaS(Software as a Service)で、インターネットを介することで場所を問わず業務が行えます。そのため、テレワークの導入やBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)の施策の1つとしたい企業にもおすすめのシステムです。
請求管理システムはどのように選べばよいか
請求管理システムは現在多くのサービスが市場で展開されています。そのため、しっかりとした軸を持って自社に適した請求管理システムを選ぶ必要があります。ここでは、必ず確認すべき項目を3つご紹介します。
対応する業務範囲の確認
請求管理システムが対応できる業務の範囲は、単に請求書の発行・送付だけというシンプルなものから、取引開始前の与信審査から請求後の入金消込や督促まで対応するような高度なものまであります。そして、一般的に機能が増えるほどシステムの利用にかかる料金は高くなります。
選ぶ基準としてまずはシステムで対応する業務範囲を決め、過不足なく必要最小限の範囲の機能を持ったシステムを選定すれば、機能面でも費用面でも過不足のないものを導入できるでしょう。
既存システムとの連携可否
請求管理システムの選定にあたっては、既存のシステムと連携ができるかも大きなポイントです。販売管理システムやCRMなどと連携できれば請求書情報の入力を省略したり、銀行口座と連携できれば入出金データを取り込んで消込作業を自動的に処理したりといったことが可能です。
また、業態に合った発行方式を選べるかも確認しましょう。年単位のサブスクリプション契約で月々に請求をする事業形態の場合、月々の請求を契約単位で一括して管理できたほうが便利です。
連携方式は、CSVファイルのやり取りとAPI連携の2通りあります。
月に何度も請求書の発行があるならば、既存システムからCSVファイルを度々出力して請求管理システムにインポートするのは煩雑すぎる作業となるでしょう。効率化を図るなら、APIでシステム同士が直接連携できるほうが望ましいと言えます。
セキュリティ対策の水準
クラウド型の請求管理システムでは、サーバやシステムの管理はシステムベンダーに委ねることになります。そのため、セキュリティ対策はよく説明を求めて確認しましょう。また、外部からアクセス可能なシステムであるため、悪意を持った第三者による不正なアクセスによって情報が漏洩するのを防止する対策が取られているかも確認します。
社内のセキュリティ対策としてユーザーIDとパスワードによる管理がありますが、システムベンダーがこれらの情報を無断で取得できないようになっている必要もあります。
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