支払いサイトとは?基本的な考え方やすぐに活用できるテクニックを解説!

請求業務

企業間の取引では、「掛け払い」という一定期間を経た後にまとめて支払いを行う、といった方式をとることが一般的です。都度払いよりも業務的負担が軽くなるといった大きなメリットがある一方、売り手側にとっては回収のリスクや資金繰りに影響が出るといった可能性もあります。

このような課題を把握したうえで円滑な資金繰りを目指すためには、支払いが発生するまでの期間、つまり「支払いサイト」を適切に設定する必要があります。

この記事では、支払いサイトの概要から基本的な理念、資金繰りを改善するためのノウハウなどを詳しく解説します。

支払いサイトとはどんなもの?

まず始めに、「支払いサイト」とはそもそもどのようなものなのか、概要を説明しましょう。

支払いサイトとは

「支払いサイト」とは、取引における締め日から、実際に売上金額が支払われる日までの期間のことを指します。

身近な例を挙げるならば、個人がクレジットカードで商品を購入した際、該当月における請求金額が確定してから、実際に指定口座より引き落とされるまでの期間ということになります。

「掛け払い」や「約束手形」を用いた取引の場合、主に「支払いサイト」が重要視されます。

なお、法律などで支払いサイトの期間が定められているわけではないため、企業によってその長さが異なるのが大きな特徴といえるでしょう。

支払い「サイト」の語源

そもそも「サイト」という単語の由来は、古くから貿易用語として用いられていた「at sight」という表現からきています。

この言葉自体は「一覧払い」という意味になりますが、「at 7days sight」(7日後に一覧払いを実施)というように、期間を付け足して用いていたことで次第に意味が転じ、「支払いサイト」という言葉が誕生したようです。つまり、「Sight」という単語自体には期間や猶予を指す意味がないということになります。

そのため、英語圏では「支払いサイト」という表現が通じず、「Terms of Payment」(支払い期間)や「Usance」(支払い猶予)と表現することが一般的です。

支払いサイトから企業の財務状態が分かる

支払いサイトを適切に設定することで、自社のキャッシュフローが円滑になるかどうかが大きく左右されます。

支払いサイトが設けられる取引では、「仕入債務」がどの程度発生しているか、またどの程度の期間で支払いを行うかを計算し、財政状態を把握する一つの指標としましょう。

ちなみに仕入債務とは、商品やサービスの仕入れを行っているものの、代金の支払いが済んでいないもの、つまり「買掛金」を指します。この仕入債務を含めた状態でのキャッシュフローの回転率は、以下に挙げる2つの計算式によって求められます。

● 仕入債務回転率
(売上原価÷仕入債務)×100

上記の計算式は仕入債務と原価のバランスを把握するもので、回転率が高ければ効率的に支払いが行われていると判断できます。ただし回転率が高ければ高いほど良いというわけではなく、余裕をもってキャッシュフローを回すためにあえて支払いまでの猶予を持たせることも重要です。

● 仕入債務回転期間
月間算出の場合:仕入債務÷(売上原価÷12)
日間算出の場合:仕入債務÷(売上原価÷365)

こちらは、仕入から代金の支払いが完了するまでの期間を、月間もしくは日間単位で算出する計算式です。売上原価の代わりに、仕入れ高を組み込む場合もあります。

この期間が長いほど手元に資金が残る期間も長くなりますが、ただ長ければ良いというわけではなく、取引先との兼ね合いを見ながらバランスを整える必要があるでしょう。

支払いサイトの一般的な長さ

前述したように、支払いサイトの期間は厳格に定められているわけではありませんが、一般的な傾向としてはどの程度の長さなのでしょうか。以下、代表的な例を3つ挙げて解説します。

月末締め・翌月末払い

最も代表的な支払いサイトの期間は、「月末締め翌月未払い」というパターンです。期間を端的に表現するため「30日サイト」とも表現されるケースもあります。

月単位で仕入債務や売上高を把握できることで、買い手・売り手側ともに支払いや入金の管理がしやすく、多くの企業で採用されています。

月末締め・翌々月末払い

次に代表的な例は「月末締め翌々月未払い」というものです。これも「30日サイト」と同様に、「60日サイト」と呼ばれることがあります。

売り手側にとっては、締めの月を含め最大で3ヶ月分の支払い遅延が発生するため、キャッシュフローに余裕がない場合は注意が必要です。

90~120日サイト(手形利用)

掛け取引において実際にキャッシュを振り込みなどで支払う場合、あまりに回収までの期間が長いとキャッシュフローに大きな影響を及ぼすため、60日を超えることはほとんどありません。

しかし、手形を経て取引を行う場合は、例外としてこれよりも長い支払いサイトに及ぶこともあります。

支払いサイトの基本的な考え方

ここまで支払いサイトの一般的な長さについて解説しましたが、効率的な企業運営を図るには支払いサイトをどのように設定すれば良いのでしょうか。ここからは、基本となるキャッシュフローと支払いサイトの性質を振り返ってみましょう。

回収サイトはできるだけ短く

支払いサイトの概念を売り手側の視点から見たとき、「回収サイト」と呼ばれることもあります。売り手側としてはやはり、代金を早く回収することが重要となるため、回収サイトを短く設定することが求められるでしょう。

仮に手元の資金に余裕がないまま回収サイトを引き延ばしてしまうと、文字通り自転車操業になりかねません。したがって、手元に早く資金が戻るように設定することで、より安定したキャッシュフローが実現する可能性が高くなります。

特にスタートアップ企業や積極的な事業投資を実施している企業の場合は、売掛金の回収が遅くなることで、最悪「黒字倒産」に陥るケースも考えられるため、注意が必要でしょう。

支払いサイトはできるだけ長く

買い手側としては反対に支払いサイトを長めに設定することで、キャッシュフローの安定が図りやすくなります。支払いサイトが長くなるほど手元に残る資金が長く残せるため、資金繰りの運用がしやすくなるという点が大きなメリットです。

とはいえ、ただ長く引き延ばせば良いというわけではありません。

支払いサイトを安易に長く設定できない理由として、売り手側からの同意が得にくいという面と、法律によって上限が決められているという側面があるからです。

なお、「下請代金支払遅延等防止法」では、「下請代金の支払期日は(中略)事業者の給付を受領した日から起算して、60日を経過した日の前日が下請代金の支払期日と定められたものとみなす(第2条の2)」としています。

つまり、現金取引においては60日サイト以上の支払いサイトを認めないということになります。

手形の支払いサイトは長くなる

現金取引の場合は60日サイト以上の支払いサイトを認めないとする一方、手形を使用した取引では、支払いサイトが最大120日と長くなる可能性があります。なぜなら、手形を取引先に渡したタイミングと、実際に代金として受け取るタイミングが異なるからです。

そのため、「取引としての支払いサイト」とは別に「手形としての支払いサイト」を考慮する必要があり、最大で90~120日と長めに支払いサイトを設定している企業もあります。

ただし、近年の金融情勢やビジネススタイルを鑑みて、手形のサイトであっても60日以内を目途とする見直しが公正取引委員会で検討されているという動きもあります。手形を使用した取引をメインとしている企業は、念のため留意しましょう。

支払いサイトの短縮方法について

まず前提として、支払いサイトを取引中に変更することは容易ではありません。しかし、あまりにも支払いサイトが長すぎてキャッシュフローが改善されない場合は、早急に改善策を講じる必要があります。その際に、どのようなプロセスを踏めばいいのか、主な方法を3つ挙げて解説しましょう。

取引先と交渉する

まずは、改めて取引先と契約内容の変更を交渉するという方法です。

しかし、一度取引内容が締結されている状態で変更を申し入れることになるため、双方が納得のできる内容である必要があります。まして、「資金繰りが厳しいから」という理由が透けて見えてしまっては、企業の信用問題に関わるでしょう。

そのため、双方が納得できるよう「交換条件を提示する」という方法をとりつつ、交渉を進めるのが有効となります。

例えば、「こちらの支払いサイトを短縮させる代わりに、取引金額を割引する」といった条件を提示したとしましょう。早めに代金を支払う必要はありますが、仕入れ額を抑える条件を提示しているため、先方としても納得してもらえる可能性が高まります。

手形取引から現金取引に切り替える

本来、手形を使用して取引をするのはあまり一般的ではありませんが、業種によっては手形での取引が通常となる場合もあります。しかし、先ほども触れたように、手形取引は支払いサイトを長く設定している場合もあるため、キャッシュフローに余裕がない企業にとってはデメリットの方が大きいといえるでしょう。

とはいえ、いきなり「現金払いの取引にしてほしい」と交渉するのが難しいケースもあります。その場合は、50%を現金払いにする、もしくは前受金という形で売上の一部を先に支払ってもらう、手形で支払う限度額を設定する、といった内容を提示して譲歩するのもひとつの手段です。

手形割引を活用する

どうしても手形取引からの切り替えが難しい場合は、「手形割引」という制度を利用することでキャッシュフローの改善が見込める可能性もあります。

そもそも手形取引の場合、手元に現金が入ってくるタイミングは取引が発生してから数か月後に設定されていることが多く、手形に記載された「満期日」まで待つ必要があります。しかし、金融機関などで手形を買い取ってもらう「手形割引」の制度を行使すると、指定期日よりも前に代金を現金化できるため、支払いサイトが短縮されるという大きな利点があるのです。

ちなみに、手形割引を実施するには買い取り先の金融機関や業者による審査が必要となりますが、融資などの方法と比較しても条件が厳格ではないことが多く、短期間で審査結果が出やすいという特徴があります。

ただし、手形割引を介した場合、金額の一部が手数料として差し引かれるため、満額を受け取ることができないという点には注意しなければいけません。

あくまでも、「早めに現金を受け取りたい」というニーズに対応した制度だということを認識しておきましょう。

ファクタリングを利用する

最後に、「ファクタリング」の制度を活用するという方法もあります。

ファクタリングは、掛け取引などで発生した売掛債権をファクタリング事業者などに買いとってもらうことで、本来設定されている支払いサイトよりも早く現金化できるという仕組みです。

現金化される金額は手形割引と同様に満額ではなく、「割引率」によって決定された手数料が引かれた状態で手元に残ります。なお、割引率は固定ではなく、支払いサイトや各企業の与信審査の結果などで異なります。

例えば、「支払いサイトが長い」「事業規模が小さい」といった要素を持つ取引の場合、回収リスクが高いと判断されやすく割引率のパーセンテージが高くなる、といった傾向が見られるでしょう。

また、ファクタリングには「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」という2種類の仕組みが存在します。

2社間ファクタリングの場合、取引先にファクタリングの利用が知らされることはありませんが、取引先が関与しないことで回収リスクは高まります。そのため、3社間ファクタリングよりも手数料が高くなりやすいという特徴があり、注意が必要です。

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監修
【監修】藤田 豪人 株式会社ROBOT PAYMENT 執行役員

2019年当社に入社、執行役員に就任。
当社に入社以前は株式会社カオナビにてコーポレート本部長、複数の情報IT企業にてCMOなどを歴任。
現在は、当社のフィナンシャルクラウド事業及びマーケティング全般を統括。