インフラ事業者の督促業務とは?電気・ガス料金の未払い対応と自動化の進め方

電気やガスの料金は、少額の請求が毎月大量に発生します。口座振替の残高不足やクレジットカードの決済エラーで未払いが出るたびに、担当者がメールや電話で督促するのは大きな負担です。
さらに、電力・ガスの小売事業者が未払いを理由に契約を解除する場合は、経済産業省の指針に沿った予告手続きが必要です。督促が遅れると予告の期限に間に合わず、未収金がそのまま積み上がります。
本記事では、電力・ガスなどインフラ事業者の督促業務の特徴、供給停止までの流れ、解除日から逆算した段階督促の設計方法、自動化のポイントを解説します。
インフラ事業者の督促業務が他業界と違う3つの特徴
インフラ事業者の督促は、BtoBの売掛金回収とは前提が大きく異なります。一般的な督促の進め方は「督促とは?催促との違い・督促状の書き方と例文」で解説しています。ここではインフラ特有の3点を整理します。
少額・大量の個人債権を毎月回収する
電気・ガス料金の請求先の多くは一般家庭です。1件あたりの金額は数千円〜数万円と小さく、件数は顧客数に比例して増えます。
1件ごとに電話をかけると、回収額より人件費の方が大きくなるケースもあります。そのため、メールやSMSなど低コストの手段で大半を回収し、人が対応するのは高額・長期の滞納に絞る設計が必要です。
供給停止には指針で定められた予告手続きが必要
電力・ガスの小売事業者は、料金を滞納した顧客の供給をすぐに止めることはできません。経済産業省の「電力の小売営業に関する指針」「ガスの小売営業に関する指針」で、解除日を明示した予告通知が求められているためです。
つまり、督促のスケジュールは「いつまでに予告を送るか」から逆算して組む必要があります。具体的な日数は次の見出しで解説します。
「絶やさない」配慮と「未収を放置しない」管理の両立
電気・ガスは生活に欠かせないため、供給停止は最終手段です。ガスの指針では、在宅医療者や生活保護受給者等であることが確認できた場合の配慮措置にも触れています。
一方で、未払いを放置すると他の顧客との公平性が保てず、事業者のキャッシュフローも悪化します。供給停止に至る前に支払いを促し、停止を避けるための早い督促が、顧客と事業者の双方にとって重要です。
電気・ガス料金の未払いから供給停止までの流れ
未払いを理由に契約を解除する場合、電気もガスも「解除日の15日程度前の予告」が基本です。支払期日から何日後に解除するかは指針では定められておらず、各社の約款で定めます。
| 手続き | 電気 | ガス |
|---|---|---|
| 顧客への解除予告 | 解除日の15日程度前 | 解除日の15日程度前と5日程度前の2回 |
| 予告に記載する事項 | 解除日、無契約になると供給が止まるおそれがあること | 解除日、無契約になるとガスが止まること、最終保障供給の申込方法 |
| 送配電/導管事業者への連絡 | 解除日の10日程度前までに託送供給契約の廃止を申込 | 解除日の10日程度前までに解除理由を明示して連絡 |
| 解除を伴わない供給停止 | — | 閉栓日の15日程度前と5日程度前に予告 |
出典:電力小売全面自由化に関するよくあるご質問と回答集(電力・ガス取引監視等委員会)、関西電力送配電 FAQ、ガスの小売営業に関する指針(令和7年3月31日改定)
電気:解除予告は15日程度前、送配電への連絡は10日程度前
電力・ガス取引監視等委員会のFAQでは、料金を滞納しても「直ちに電気を止められることはない」とし、解除の15日程度前に需要家へ予告することを指針で求めていると説明しています。
あわせて、小売電気事業者は解除日の10日程度前までに、一般送配電事業者へ託送供給契約の廃止を申し込みます。つまり「15日前に予告」「10日前に送配電へ連絡」の2つの期限を管理する必要があります。
ガス:予告は15日程度前と5日程度前の2回
ガスの小売営業に関する指針では、解除日の15日程度前及び5日程度前までに、解除日を明示して予告通知を行うことが求められています。契約を解除せずに閉栓する場合も、同じく15日程度前と5日程度前の予告が必要です。
導管事業者へは、解除日の10日程度前までに解除理由を明示して連絡し、閉栓後は速やかに通知します。予告が2回ある分、電気よりも管理する期限が多くなります。
解除後の顧客への案内(無契約・最終保障供給)
契約を解除された顧客は無契約状態となり、供給が止まる可能性があります。そのため解除予告では、無契約になると供給が止まることと、最終保障供給(他の小売事業者と契約できない場合のセーフティネット)の申込方法を伝えます。
この案内を曖昧にすると、「突然止められた」という苦情につながります。予告通知の文面はテンプレート化し、記載漏れを防ぎましょう。
インフラ料金の督促でよくある課題
インフラ事業者の督促では、件数の多さと予告期限の厳しさが重なり、次の3つの課題が起きやすくなります。
件数が多く、手作業では予告期限に間に合わない
未払い顧客の抽出、督促メールの送信、予告通知の印刷・発送を手作業で行うと、件数が増えた月に作業が遅れます。予告が解除日の15日前に届かなければ、解除日を後ろにずらすしかなく、未収期間が伸びます。
入金との行き違いで「払ったのに督促が来た」が起きる
コンビニ払いや振込は、入金が事業者側で確認できるまでに時間がかかります。大手電力会社のFAQでも、入金確認と供給停止のお知らせが行き違う場合があると案内されています(東京電力エナジーパートナー)。
支払済みの顧客に督促が届くと、問い合わせや苦情が増え、督促担当者の負担がさらに重くなります。
電話督促が属人化し、担当者の負担が大きい
電話での督促は、話し方や対応判断が担当者の経験に依存します。未払い顧客とのやり取りは精神的な負担も大きく、退職や異動でノウハウが失われるリスクもあります。電話督促の負担を減らす具体策は「督促電話のストレスを減らし業務を効率化する方法」で解説しています。
供給停止日から逆算する段階督促の設計方法
インフラ料金の督促は、解除日を先に決め、予告・連絡の期限から逆算して組みます。予告より前の期間に、低コストな手段から順に督促を重ね、予告対象をできるだけ減らすのが基本です。
督促スケジュール例(支払期日〜解除日)
次の表は、約款で「支払期日の35日後に解除できる」と定めた場合の例です。実際の日数は自社の約款に合わせて調整してください。
| 支払期日からの日数(例) | 解除日からの逆算 | 対応 | 主なチャネル |
|---|---|---|---|
| 3日前 | — | 支払期日のリマインド(口座残高・支払方法の確認) | メール |
| 翌日〜3日後 | — | 未入金のお知らせと支払方法の案内 | メール・SMS |
| 10日後 | — | 再督促。支払約束日を取得 | SMS・オートコール |
| 20日後 | 15日前 | 解除予告(解除日・無契約時の供給停止・最終保障供給を明記) | 郵送・SMS |
| 25日後 | 10日前 | 送配電事業者/導管事業者へ連絡 | — |
| 30日後 | 5日前 | ガスは2回目の解除予告。電気も最終督促として連絡 | 郵送・SMS・オートコール |
| 35日後 | 当日 | 契約解除 | — |
各段階の前に入金状況を確認し、支払済みの顧客を対象から外すことが前提です。
チャネルの使い分け(メール・SMS・オートコール・郵送)
チャネルごとにコストと強さが異なるため、段階に合わせて使い分けます。
| チャネル | 向いている段階 | 特徴 |
|---|---|---|
| メール | 期日前リマインド・初回督促 | 大量送信できコストが最も低い。迷惑メールフォルダに入ると読まれない |
| SMS | 初回〜最終督促 | 携帯番号宛てで目に入りやすい。決済リンクを載せるとその場で支払える |
| オートコール(IVR) | 再督促・最終督促 | 自動音声で一斉発信し、番号入力で支払約束日を取得できる |
| 郵送 | 解除予告 | 通知した記録を書面で残せる。印刷・封入・発送の手間と郵送費がかかる |
オートコールの仕組みや導入効果は「督促電話のストレスを減らし業務を効率化する方法」をご覧ください。
督促時に守るべき法令と注意点
インフラ料金の督促で確認しておきたい法令・ルールは次の5つです。
• 電力/ガスの小売営業に関する指針:解除予告の時期と記載事項。前述のとおりです。
• 個人情報保護法:携帯番号やメールアドレスを督促に使う場合、利用目的に含まれているかを確認します。
• 特定電子メール法:督促SMSは広告ではなく「通知」にあたり、事前同意は不要とされています(アスピック)。宣伝文を混ぜると広告とみなされるおそれがあるため、督促の内容だけを記載します。
• 債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法):督促を外部に委託する場合、委託先が法務省の許可を受けたサービサーかを確認します。自社での督促は対象外です。
• 民法(消滅時効):2020年4月1日施行の改正民法で、債権は権利を行使できると知った時から5年で時効を迎える原則に統一されました(BUSINESS LAWYERS)。解除後の未収金も放置せず督促を続けます。
なお、貸金業法では午後9時から午前8時の取立てを禁止しています(金融庁)。電気・ガス料金は同法の対象外ですが、オートコールやSMSの送信時間帯を決める際の目安になります。
インフラ事業者が督促を自動化するときのポイント
件数が多く期限管理が厳しいインフラ料金の督促は、自動化との相性が高い業務です。導入時は次の3点を確認しましょう。
入金データと連動させ、支払済み顧客を自動で除外する
督促を自動化しても、入金データの反映が手作業のままだと、支払済みの顧客に督促が届きます。請求・消込のシステムと連携し、未入金の顧客だけを自動で抽出できるかを確認します。
債権額・滞留期間ごとにシナリオを分ける
初めての未払いの顧客と、毎月遅れる顧客では、効果のある督促が異なります。低圧の家庭向けと法人向け、債権額の大小、滞留期間などで顧客を分け、それぞれに督促の順番とチャネルを設定できるかが重要です。
督促履歴を残し、問い合わせ対応に使う
「予告が届いていない」という問い合わせには、いつ・どの手段で通知したかの記録で答えます。送信履歴や支払約束日を顧客ごとに一元管理できれば、コールセンターも同じ情報を見て対応できます。
インフラ料金の督促を自動化するなら「債権回収ロボ」

| 督促シナリオ設計 | 顧客属性・滞留期間ごとの督促シナリオを自動設定/独自テンプレートの作成にも対応 |
|---|---|
| 督促手段 | 自動リマインドメール/SMS送信/オートコール(IVR)による自動架電/郵送(印刷・封入・投函まで自動化) |
| 回収状況の可視化 | 債権者ごとの送信・返信履歴を一元管理/回収状況をダッシュボードで可視化 |
| 外部連携 | 既存の請求管理・債権管理システムとの連携に対応 |
債権回収ロボは、「いつ・誰に・どの手段で」督促するかをシナリオで設定し、自動で実行する債権回収サービスです。解除日から逆算した段階督促をそのままシナリオにできます。
電気料金プランを提供するアルカナエナジー株式会社様では、営業担当2名が督促業務を兼務し、月間48時間を督促に費やしていました。属人化や手作業による誤送信リスクを解消し、365日自動で督促が動く体制をつくるために債権回収ロボを導入しています。
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