計上するとは具体的にどういうこと?基準の選び方や注意点まで一挙に解説!

請求業務

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計上は、「予算に計上する」「売上として計上する」など経理や会計業務においてよく使われる言葉ですが、帳簿に記録することを指しています。
帳簿への記録は、その企業が「現在どのような状況なのか」「どのような活動をしてきたのか」という内容を表す重要な職務です。この記事では、計上の基礎知識から売上・仕入の際の基準までを詳しく解説します。

計上とは

計上の本来の意味は、「全体の数値(計算)の中に含めて、あるもの・あることを数え上げること」です。会計業務としての計上は、「帳簿に記入して決算書に反映させること」という意味にあたります。売上や費用にかかる数字をひとつずつ明らかにしていき、予算全体に含み、企業全体の金額を計算することを指しています。その中でも、収益や資産に計上することを「上げる」、費用に計上することを「落とす」という表現をすることもあります。計上はさまざまなシチュエーションにおいて利用されていることが分かります。

発生主義とは

企業における基本的な会計ルールとして、「企業会計原則」というものがあります。企業開会原則には「すべての費用および収益は、その支出及び収入に応じて計上し、その発生した期間に正しく割り当てられるように処理しなければならない」という記述があります。

会計の目的のひとつは、「正しく期間損益を計算すること」です。期間損益は特定の会計期間のなかで発生した利益のことで、収益から費用を差し引いた額のことです。この収益や費用を、いつ「計上する」かが重要なポイントになります。ここで使われる会計原則のひとつとして「発生主義」というものがあります。発生主義は、現金の収入または支出とは関係なく、経済的に物事が動いた時点で費用を計上しなければならないという考え方です。

取引が発生した時点で収益や費用の認識を行うため、仮に金銭のやり取りがその時になかったとしても計上することができます。費用の計上は、発生主義の考え方をもとにしていることが基本です。例えば何か備品を購入したとして、注文した時点ではまだ費用を計上しません。品物が納品されて、チェックが行われたあとに初めて費用として計上することになります。

ちなみに、現行の会計基準では「発生主義」は費用に対して行われ、収益は「実現主義」という考え方を採用しています。「収益については、未実現のものは計上してはならない」という会計規則があるため、収益は売上が確定した時点で計上しなければなりません。損益計上をするべきタイミングに気をつけましょう。

売上の計上基準とは

売上の計上には、売上高をいつ計上するかのタイミングを決める基準があります。これを売上計上基準と呼びます。もしも、売上をいつも異なる時期に計上している場合は会計期間中の正しい損益計算ができず、決算書が誤った内容になってしまいます。その場合、決算書をベースに作成される数々の書類にもミスが生じてしまいます。

このようなミスが生まれないよう、売上高の計上は明確な基準をもって設定する必要があります。特に、新規事業開発や、販売方法の刷新を図ったときは計上のタイミングを最初の段階からしっかりと判定しておく必要があるでしょう。

売上の種類

会計上、売上高を計上するタイミングは顧客に向けて販売したときです。実店舗のように、店舗内の商品を顧客にそのまま引き渡した場合であれば、そのタイミングを把握するのは簡単です。しかし、オンラインショッピングなど決済と納品が別々の日になるという販売形態も少なくありません。その場合、売上計上基準ではいくつかの基準を用いてその判定を行います。

・出荷基準
商品や製品を、在庫のある倉庫や店舗から出荷した日を売上計上の日とする基準です。そのため、発注した現物を顧客が受け取る前に収益が認識されることになります。出荷作業は販売側の企業が行う範疇の作業のため売上計上を行うには容易であり、実務においては広く採用されている基準方式です。

・検収基準
出荷した商品や製品が、取引先に到着して検収が終わった日、つまり検収印をもらった時や通知があった日を売上計上するという場合の基準です。取引先のチェックや検収が終わるまでは売上計上を行わないことで、出荷基準よりも確実な収益のみを計上する場合に利用されます。一方で検収のチェックのために書類を交わしてやりとりをする必要があるなど、出荷基準での売上計上と比べて少し煩雑になってしまう側面があります。

・検針基準
電気・ガス・水道の使用量など、検針などにより販売数量を確認した日に売上を計上する基準です。毎月の検針方法には、必ず月末に行う月末検針と自治体ごとに設定された日付で行われる分散検針があります。

・使用収益開始基準
取引先において、実際に商品や製品を使用できるようになった日をもって売上を計上する基準です。土地・建物などを販売する不動産業で採用されることが多くあります。

・役務提供完了基準
すべての役務提供が完了した日に売上を計上する基準です。主にサービス業で採用されています。継続的にサービスを提供する場合は、1ヶ月など期間を区切ってその期間ごとに売上を計上することになります。

・工事完成基準
建設工事等が完成し、引き渡しのあった日をもとに売上を計上する基準です。これは建設業などで多く採用されています。なお、工期が1年以上あり、請負金額が10億円を超える場合などの条件を満たした場合、工事の進行度に応じて売上を計上する「工事進行基準」という基準方式が採用される場合もあります。

売上の計上基準の注意点

売上の計上は企業が利益を得るために行う重要なプロセスですが、注意しなければならない点もあります。

・基準の選択は慎重に
まずは「売上計上基準は一度選択したら変更できない」という点です。企業種別によって選択されやすい計上基準はそれぞれ異なりますが、契約内容に著しい変化が生じた場合などの特別な理由がない限りは原則変更することができないため、基準の選択は熟考のうえで行うようにしましょう。なお、やむを得ず変更しなければならないという場合は、相応の理由を証明するために資料などを用意しておきましょう。

売掛金の取り扱い
2点目は「売掛金に注意する」ことです。取引先との取引で生じた代金のうち、後日受け取るために未収になっているものを計上する場合に使用する勘定科目が売掛金です。ただし、売上を計上しても取引先の倒産などのケースで売掛金として計上した金額が入らなくなってしまったという場合もあり得ます。取引先の経営状況を注視しつつ、請求金額が期日通りに確実に入金されているかどうか常にチェックするようにしましょう。

売上計上の流れ

商品の受け渡しや役務提供が完了したら、売上を計上して処理します。商品を売り上げた時の事務処理の流れは以下になります(ここでは商品発送をもって受上計上する場合を例に説明します)。

1. 証憑(見積書、請求書、納品書)を作成する

事業や取引先などによって必要な証憑は異なりますが、ここでは代表的な例を紹介します。

・見積書
発注依頼に基づいて金額や納期などの取引条件を書面に明記した文書です。正式に契約を締結する前に受注側へ発行する重要な書類で、取引の第一段階に位置付けられ、見積書で提示された取引条件によって発注側が正式に発注を行うかどうかの検討を行います。

・請求書
発生した取引においてどのような製品やサービスを提供し、その対価である金銭での支払額がいくらかを明記した文書です。取引先においては債務が生じた日付、金額、そして取引内容をもとにした会計処理のために必要となるものです。

・納品書
製品やサービスの提供と同時に取引先へ発行する文書です。物品の場合は商品に添付して、ソフトウェアなどの場合は郵送などを用いて納品書を発行します。

2. 商品を発送する

商品とともに、納品書も送付します。請求書と併せて送る場合もあります。また、納品書と請求書は、相手方と、手元に残しておく保存用の2部作成しましょう。

3. 帳簿に売上の仕訳を記入する

商品発送後、帳簿に売上の仕訳を記載します。未入金の場合は、売掛金として記入しておき、代金回収後にその旨を記載します。

4. 入金確認後、領収書を発行する

入金が確認できたら、領収書を作成し、相手方に送付します。5万円以上の商品の売買があった場合は、収入印紙を貼り付けましょう。詳細は国税庁発行の「印紙税額一覧表」に記載されているため、確認が必要な場合には参考にすると良いでしょう。

5.売掛金の残高を確認する

入金の仕訳が完了したら、帳簿と実際の売掛金残高を確認します。一致していれば処理は終了です。一致しない場合は、記入ミスや入金漏れなどの可能性があるため対応します。

仕入の計上基準とは

企業が収益を得るために外部から物品やサービスを購入することが仕入です。仕入の業務にも、代金の決済が行われるまでにさまざまな計上基準が設けられています。売上計上と同様に、これらの計上基準はそれぞれの企業が任意で選択することができますが、原則としてその基準を継続して利用しなければなりません。

売上計上の基準設定は非常にシビアですが、仕入計上の時期はそれほど重要ではないという場合もあります。なぜなら、仕入れた商品などは販売が行われるまで「棚卸資産」という勘定科目に分類され、決算書を作成しても所得金額自体には影響を与えないからです。

仕入の計上基準の種類

仕入計上の場合は、一般的に3種類の計上基準が存在します。仕入計上における基準は、「どのタイミングで記帳をするのか」ということを表しています。ここでは最も早いタイミングで計上を行う計上基準から順に紹介します。

・発送基準
仕入先が商品を発送した日を計上日とするものです。商品が実際に到着するよりも前に計上するということになるため、取引内容と実際がそぐわない内容であったり、期日通りに届かなかったり、不良品が届いてしまったりといったトラブルがあった場合は再度修正を行わなければなりません。大量に仕入を行うという場合に採用されることが多い基準です。

・入荷基準
商品が入荷した日を計上日とする場合はこれにあたります。受取基準とも呼ばれ、仕入の計上にあたってはもっとも一般的といえる計上基準です。実際に商品が到着し、現物と帳簿上のデータを認識・連携させやすいという点で広く採用されています。

・検収基準
検収が終わった段階で仕入計上を行うものです。納品された商品を検品し、問題がないことを精査したうえで正式に計上を行います。基本的に検収が終わると取引が確定したことになるため、クレームなどを伝えることはできなくなります。計上のタイミングとしてはもっとも遅いものですが、どうしても仕入時のトラブルを回避したい場合や品質重視の取引の場合に用いられます。

仕入の計上基準の注意点

売上の計上基準と同様に、仕入の計上基準にも注意点がみられます。仕入は所得や納税額にも大きく係わってくるため、チェックを怠らないことが重要です。確認してみましょう。

・売れ残り在庫の取り扱い
商品を仕入れたからといって、必ず期限内にすべての商品在庫をなくすということは難しく、持ち越しというケースになってしまう場合もあります。この場合、持ち越しとなってしまった売れ残り在庫は、次期の売上に対応するものとなります。そのため、売れ残り在庫をそのまま当期に費用として計上してしまうと、正確な利益の計算ができなくなってしまいます。この場合、持ち越しをするために「棚卸資産」というものとして扱い、次期に繰り越すことになります。

繰り越しを行うため、売れ残り在庫を次期までしっかりと把握しておくことが重要です。ミスが生じて棚卸資産の在庫数などを正確に把握できない場合、適切な仕入管理や帳簿の記入ができなくなってしまいます。

・買掛金の取り扱い
一般的な商品購入の取引では、その場で代金を差し出して商品を購入するという流れとなります。しかし、企業間の取引では先に商品やサービスを受け取って、後日に代金を支払うというケースが一般的です。この場合、後日に支払う代金は「買掛金」として計上することになります。買掛金の取り扱いは取引先や企業間によって異なるため、締日や支払内容などを事前にしっかりと把握する必要があります。1度の取引につきその都度請求書が発行される場合もあれば、一定期間内の取引をまとめて集計するという場合もあります。

買掛金は、自社と取引先との信用があって初めて成り立ちます。支払いの遅延や支払い忘れなどのミスが生じてしまった場合、企業としての信用問題が生じてしまいます。買掛金の管理はしっかりと行い、期日内に支払いを完了させるようにしましょう。

請負の計上基準とは

請負業の計上基準としては、「売上計上基準」の工事完成基準、そして工事進行基準の2つの基準が挙げられます。請負業とは一方が仕事の完成を約束し、相手方がその仕事内容に対して報酬を支払うという契約です。そのため、民法上報酬後払いの原則が適用されることから、工事の完成が終わり、引き渡しが完了した日を基本的には計上基準としています。具体的な引き渡し日としては、「作業を完了させた日」「相手方へ搬入を行った日」「相手方が検収を完了した日」「相手方で実際に使用できることとなった日」などがあります。その中で、契約状況などをふまえて計上を行うことになります。

工事進行基準が適用され、大規模な工事が行われている場合はもう少し複雑になります。建設工事のすべてが完成していない場合でも、その事業年度内において引き渡しが行われた部分的な単位を、その事業年度ごとに計上しなければなりません。

計上時期と税務調査の注意点

売上や経費が、本来計上されるべき年度とは異なる年度で計上されてしまっている状態のことを「期ずれ」と呼びます。売上や仕入の計上において計上する時期というのが重要になってくることはこれまで繰り返してきましたが、期ずれが税務調査で発覚すると、修正などで余分な手間や費用がかかり面倒なことになってしまいますので注意しましょう。

会計原則のひとつとして、「発生主義」があることは前述の通りです。売上や経費が発生した時点でこれらを計上しなければならない、という考え方です。これに加え、「経費を計上する時期に関して、収益と費用を出来得る限り企業活動上の経済的因果関係と対応するように把握すべき」という考え方として「費用収益対応の原則」というものがあります。その企業がどれだけの支出を行い、それに対してどれだけの収益を得たのかということをきちんと把握する必要がある、ということです。

これらの考え方をもとにすると「期ずれ」とは、「2つの原則を無視し、誤った時期に売上もしくは費用計上をすること」ということになります。なぜ税務調査でこの期ずれが厳しくチェックされるのかというと、調査した年度の法人税が正しく支払われなくなってしまうということが起こるからです。事業年度をまたいだ取引に関しては特に期ずれが起こりやすいため、入念にチェックするようにしましょう。もし売上の未計上などが把握した場合、ペナルティとして延滞税などの税金が発生してしまいます。

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売上や仕入計上を行うには、そのタイミングが非常に重要視されており、間違った時期に計上を行ってしまうと、後になって修正やペナルティに追われることになってしまいます。そのような事態になることは避けたいですよね。そこで、経理業務を正確に、分かりやすく反映させるためにソフトウェアの導入をご検討ください。

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監修
【監修】藤田 豪人 株式会社ROBOT PAYMENT 執行役員

2019年当社に入社、執行役員に就任。
当社に入社以前は株式会社カオナビにてコーポレート本部長、複数の情報IT企業にてCMOなどを歴任。
現在は、当社のフィナンシャルクラウド事業及びマーケティング全般を統括。