取引先が給与締日や支払日の変更を要請してきた際の注意点とポイント

経理

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会社を経営する上で、社員の存在は必要不可欠です。そして社員を雇用するなら、給料日は必ず設けなければなりません。昨今では働き方改革の一環として、今まで雇用形態ごとに異なっていた給料の締め日や支払日を統一することで業務効率化の側面が期待されています。

また、会社によっては給料計算や支払い業務を自社でなく他社に外注している会社もあるでしょう。あらかじめ給料に関する情報を取引先と共有しておけば、三者間であっても社員は給料を受け取れます。

では、もし取引先から締め日や支払日の変更を要請されてしまったら、どうすれば良いのでしょうか。この記事では、給料の締め日や支払日変更に関する抑えておきたいポイントをいくつかご紹介します。給料日の変更について疑問を抱えている方はぜひ参考にしてください。

締め日・支払日の設定方法


そもそも給料日の締め日や支払日はどのようにして設定すれば良いのでしょうか。給料には労働基準法で定められている5つの原則(賃金支払の5原則)があります。

・通貨で支払う
現金通貨で支払われなければならず、社員の合意があれば振り込みも可能です。外貨の支払いは認められないため、外国人雇用者に対しても日本国内で通用力のある日本円で支払われます。

・直接労働者に支払う
未成年者であっても必ず本人にし支払われなければなりません。なお、労働者の使者(労働者本人が病気療養時の家族、秘書など)が代わりに受け取ることは可能です。

・全額支払う
全額を支払わなければならず、強制貯金などは全額支払いとして認められません。なお、所得税や住民税、社会保険料の控除および社員が依頼したことで生じる費用の給与引きは認められます。

・毎月1回以上支払う
毎月1日から末日までの間に1回以上給料が支払われるものと決められています。

・一定期日を定めて支払う
毎月第4金曜日など、曜日ではなく必ず特定の日にちを給料日として定めなければなりません。
ただし、月末日として定めることは可能です。

この中で給料の締め日や支払日に関係する項目である「毎月1回以上支払う」と「一定期日を定めて支払う」を考慮して各日にちを設定します。

資金繰りスケジュールを考慮

事業を運営していく上で、経営者が第一に気にかけるべきは資金繰りです。給料日を含めた資金全体の流れを把握してコントロールするためにも、必ず資金繰りスケジュールを考慮しましょう。資金繰りスケジュール表を作成しておくと、将来に向けて必要な施策を打てたり財務状況を明かさせないための対策を取れたりといったメリットだけでなく、給料日の細かな設定にも役立ちます。

特にお金の流れが活発な時期をあらかじめ把握することで、お金のトラブルが起きにくい日に給料日を設定しやすくなります。資金にゆとりのある日に設定しておけば、給料の未納などで社員とトラブルになるのも防げるでしょう。そのため、給料の締め日、支払日は資金繰りスケジュールに沿って適切な日にちを設定し、引き落としや支払いの直前の日を取引先からの入金日に設定することは避けましょう。

締め日と支払い日の間隔を一定期間開ける

給与計算は、給与支払対象月間における各社員の勤怠実績を基に計算されます。勤怠を一定期間ごとに締めないと、残業代などの計算に必要な情報を正しく収集できなくなってしまうでしょう。そのため、締め日から支払日までに一定期間を設け、その間に計算処理を行います。したがって、締め日から支払い期限を短く設定してしまうと、取引先が期限までに入金しづらいと感じてしまうでしょう。

取引先の信頼を得るだけでなく、取引を継続するためにも、締め日と支払い日は最低でも2週間~1ヵ月程度の適切な間隔を空けるようにしましょう。なお、覚えやすい、月末の決算に合わせて少し早めに設定したい、末日にすると支給日が毎月異なってしまうなどの観点から、給料の支払日は一般的にはいわゆる五十日(ごとおび)が多いといわれています。

取引先から締め日・支払日の変更要請があった際の確認ポイント


前述の通り、取引先から締日や支払日など取引条件の変更を求められることがあります。単なるシステム変更などが理由の場合は問題ありませんが、経営悪化などが理由となっている場合は無条件に受け入れるわけにはいきません。ここでは、取引条件の変更を要請された場合の対応方法と、注意すべき点などについて解説します。

取引条件変更の内容

取引先から給料日に関する各種日にちの変更要請があった際には、迅速に現状の支払条件と変更依頼の内容を明確にしましょう。例えば現在毎月何日締めの何日払いなのか、現金か手形か、手形の場合は自己手形か回し手形のどちらかなどです。

債権状況だけでなく、その条件が継続的か一時的なのか、または全取引か案件単位なのかなども確認する必要があります。また、支払条件に関連するものとして、以下のルールがあります。

・物流ルール
商品の配送についての運賃の扱い、時間決め配送、自社による配達、車上渡し、運送会社の利用、運賃は元払いか着払いかなど。またパッケージングや仕分けなどの流通加工、保管する場合の保管料、取付や据付の料金などの条件。

・取引ルール
売買契約書や契約保証人、メール、電話などの取引開始後の受発注、注文書の作成方法、指定伝票の内容など。

このように、業種や企業間のルールになっているものを把握し、負担割合などについても確認しましょう。

取引条件変更の理由

取引条件の変更を求められた時には、まずは現状の取引内容に対してどのような変更を希望しているのかを明確にします。変更は一時的か継続的か、変更は対象案件のみか全取引か。締日の変更ならば何日締めの何日払いか。支払方法の変更であれば現金か手形か。また、手形なら自己手形か回し手形かなどです。

同時に、すべての債権の状況や変更理由についても確認が必要です。なぜ変更が必要になったのか、変更理由は自社にとってマイナスかプラス、どちらの理由かを具体的に確認しましょう。

取引先が締め日・支払日の変更要請をした場合の対応策


ここでは、取引先が締め日、支払日の変更要請をした場合を想定した対策を解説します。

支払日程に関する変更要請の場合

事務処理の統一や効率化という観点では、締日や支払日、支払期日などを前倒しにするのは自社にとってはプラスであり、反対に後方への延長は自社にとってマイナスと捉えるのが通例です。
なお、後方へ支払を遅らせてきた場合は取引先の資金繰りが厳しくなっている可能性が高いといえるでしょう。代表的な変更理由として「手形ジャンプ」や「手形サイトの延長」などがあります。

・手形ジャンプの変更
手形ジャンプとは、当初予定していた期日に入金することができないために支払い期日を延ばすことを指します。主な変更手段として、手形の支払期日を訂正変更する方法と、手形を書き換える方法があります。後方へと変更になり、自社にとってマイナスになってしまうため、なるべく避けたい状況です。一方で状況によっては手形ジャンプに応じつつ、債権の回収を図ることもできます。

・手形サイトの変更
手形サイトの変更は支払日が短縮されるケースも多いため、その場合は歓迎すべきでしょう。反対に、通常取り決められた手形サイトよりも長期間に及ぶなら、手形ジャンプ同様資金繰りが厳しいと捉えることができます。この場合、受け取る側の承諾なしに延長される恐れがあるため、注意が必要です。経理部門が手形台帳などでしっかりと期日管理をしておきましょう。

支払手段に関する変更要請の場合

次に支払い手段に関する変更要請について解説します。支払手段の変更には「回し手形から自己手形へ」「現金(小切手)から手形(自己や回し)へ」「現金払いから小切手へ」の変更などがあり、これらは基本的にはマイナスと判断し、これと逆の変更はプラスと捉えることができます。

・回し手形から自己手形への変更
状況によってはプラスもあり得ますが、可能な限り避けたい変更要請です。回し手形は裏書があるため、発行元が不渡りの際には裏書人に債権を請求でき、リスクの分散につながります。一方で自己手形の場合、請求先は発行者のみになってしまうため、取引先の信用度が重要です。

・現金(小切手)から手形(自己や回し)への変更
ほとんどのケースでマイナスとなるため、非常に避けたい変更要請です。ただし、資金繰りが厳しくなった以外にも、取引規模が拡大して手形に変更するということもあるため、その際は取引先の信用度を考慮して要請を受け入れることもあります。

・現金払いから小切手への変更
現金払いの原則から逸れてしまう変更となるため、判断は容易ではありません。代金は現金での回収が理想ですが、取引頻度が増大するにつれ小切手で一括の方が事務処理の効率化につながるケースもあり、ケースバイケースといえます。

・その他のルール変更
物流ルールや取引ルールなどの変更を要請されることもあります。どちらに関しても、内容を把握して取引先とその負担割合を交渉して変更していけば、コスト面に良い影響を出せます。

取引先からの変更要請を受け入れるかどうか


変更要請があった場合、内容とその理由を明確にした上で、変更の受け入れ可否を判断することになります。ポイントは、取引条件の変更が自社にとって有利か不利かを見極めるという点です。変更による売上や利益の増減、想定されるリスクなどを正確に把握するため、取引先の経営状況や方針も調べておく必要があるでしょう。実際、変更要請への対応パターンは以下の通りです。

無条件で受け入れる

信用上の問題無い取引先からの「システム変更で支払方法や支払日を一律にしたい」といった事務的な理由での要請であった際、懸念点が無ければ無条件で受け入れても問題ないでしょう。自社にとって多少不利な変更であったとしても、将来性の見込める取引先などの場合は不利の状況となること「貸し」を作る意味でも共有した上で代替条件なしの受け入れも検討します。

代替条件を付ける

無条件で要請を受け入れるのではなく、こちらから積極的に交換条件を要求するという対応も考えられます。代表的な代替条件としては取引量の拡大や値引き・リベート(売上や取引高に応じた一部の代金の割り戻し)の設定、相殺による回収などが中心です。このほか物流ルール・取引ルールの変更やこれまで無料だった便宜の取りやめなども挙げられます。

いったん断って交渉を重ねる

組織の決定事項としての変更要請ではなく、こちらの様子を確認してきたような要請のパターンも考えられます。この場合、すぐに変更要請を受け入れずいったん断った上で交渉を継続するという対応もあるでしょう。交渉を重ねていくうち、はじめよりも自社にとって有利な条件が出てくることもあるため、より緩い条件を引き出すためにも、数回の交渉を重ねて様子を見ましょう。

要請を拒否する

条件が合わず、今後の取引が無くなることを加味してもやむを得ないという場合は、要請を断るという対応も視野に入れましょう。その際は次につなげることができるよう節度ある態度で断ることが大切です。

ビジネスの世界では、いつ何時取引先などの相手方と取引解消になるか分からないリスクも少なからずあります。突如取引解消になってしまうことも想定し、その後の取引先やエンドユーザーとの関係など、債権の早期回収に動く必要についても備えておきましょう。

請求業務の課題


請求業務とは、サービスや商品を提供した取引先に対し、代金を請求(請求書発行)から代金回収までの一連の業務を指します。代金が回収できないと、自社の資金繰りに影響が出てしまうため、適切に業務を進められるよう日々業務を見直すことが大切です。

また、毎回同じような流れで繰り返し行う業務なので、効率的に進められるような基盤を整える工夫も有効です。

人的ミスが発生しやすい

人が確認するため、書類の目視やデータの入力などは人的ミスが発生しやすい傾向があります。数字を扱う頻度も多いので、1か所のタイプミスや数字の見間違いが大きなトラブルに発展する恐れもあるでしょう。請求業務は取引件数に応じて増えるため、業務工数の増加と共にミスの発生も増えてしまいます。

業務工数がかかりがち

ミスを発生させないために、チェックを厳重にしている場合も少なくありません。企業の多くはダブルチェックを取り入れていますが、この方法だと時間と人件費などコストが多くかかります。

さらに、上長承認に時間がかかってしまうケースもあります。この時も「紙の書類をデスクの上に置いておく」という方法ではほかの書類に紛れてしまうため、チェックが遅れたり、最悪の場合、書類が紛失してしまうというトラブルが発生します。

管理・保管が難しい

紙の請求書は紛失しやすく、管理や保管も手間がかかります。処理後一定期間までは、定期的に請求書を整理やファイリングして保管をしますが、大量のファイルと保管スペースの確保が必要です。

また、保存義務期間(7~10年程度)が過ぎた請求書の処分業務もあります。間違った場所に格納された場合、後で探し出すことが難しくなってしまいます。保管後に請求書の修正を行った場合、誤って古い方の請求書を処分し忘れてしまう例もあります。

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まとめ


今回は、取引先から給料の締め日や支払日、手段の変更要請があった際の対応をパターン別に解説しました。急な給料の締め日や支払日変更要請は取引先だけでなく、社員ともトラブルを引き起こしかねません。現在そのような変更対応に追われている方や追われた経験があるという方は、請求管理ロボによる自動化で業務効率が改善するかもしれません。今回の記事を参考にぜひ、ROBOT PAYMENTまでお問い合わせください。

監修
【監修】藤田 豪人 株式会社ROBOT PAYMENT 執行役員

2019年当社に入社、執行役員に就任。
当社に入社以前は株式会社カオナビにてコーポレート本部長、複数の情報IT企業にてCMOなどを歴任。
現在は、当社のフィナンシャルクラウド事業及びマーケティング全般を統括。
  • 請求管理クラウドサービス「請求管理ロボ」
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