税込経理と税抜経理の3つの違い!~ 青色申告(消費税) を前提とした場合~
税込経理と税抜経理の具体的な違い3つ(青色申告を前提とした場合)
消費税課税事業者の経理処理には、「税込経理」と「税抜経理」の2つの方法があり、日常の業務ではいずれか一方を選んで行っていることと思います。
税込経理と税抜経理では、どのような点が変わってくるのかをご存知でしょうか?
それぞれの特性や、生じる違いについてお伝えします。
消費税の税込経理と税抜経理とは
税込処理とは仕訳処理をするときに取引の総額で処理する方法のことを言います。
税抜処理とは仕訳処理をするときに取引金額に含まれる消費税を分けて処理する方法のことを言います。
中小企業においては、経理処理が簡単であることから税込処理が採用されていることが多いのではないでしょうか。
例 材料を108円(消費税8円含む)で現金購入し、その後216円(消費税16円含む)で販売した場合
税込処理の場合 |
(借方)仕入 108 /(貸方)現金 108 |
現金 216 / 売上 216 |
租税公課 8 / 未払消費税 8 |
税抜処理の場合 |
(借方)仕入 100 / (貸方)現金 108 |
仮払消費税 8 / |
現金 216 / 売上 200 |
/ 仮受消費税 16 |
※税抜処理はその後仮払消費税と仮受消費税を相殺し未払消費税8となる。
税込経理と税抜経理で何が変わる?
損益計算書上の損益は同額となるため、表示上の金額の大小を除けば変わりません。
しかし、税込処理は総額で仕訳を処理するため、法人税法上の処理を行う際に税抜処理と比較するとさまざまな点で差異が出てきます。
(1)交際費課税
現在資本金1億円以下の中小企業(大企業の子会社等一定の中小企業を除く)は交際費が年間800万円までは損金として認められています。税込処理で経理していると総額処理するため税抜処理より交際費が増えていくことから、税抜で740万程使うと税込800万に到達してしまいます。税抜処理なら800万丸々使えることになるためその差額60万程の差が出ることになります。
また1人当たり5,000円以下の飲食費を交際費から除外する場合にも、税込処理の場合は税抜で4,629円使用すると5,000円に到達してしまうことになります。
結論として、交際費の場合は税込処理よりも税抜処理が有利だと言えるでしょう。
(2)減価償却資産
法人税法上取得価額10万未満のものは即時償却として購入年度の損金、10万以上20万のものは一括償却資産として3年均等償却、30万未満のものは少額減価償却資産として購入年度の損金に算入することが出来ると規定されています(10万以上20万未満の資産の処理方法は会社の選択による)。
この場合の取得価額の判定は会社経理によることとされており、税込処理の場合取得価額が大きくなることになります。
例えば税込10万(税抜92,592)の資産の場合、税抜処理なら10万未満で即時損金ですが、税込処理の場合3年均等償却になり損金は減少し、少額減価償却資産の特例を使った場合、即時損金は一緒だが、償却資産税が別途かかってしまうため差異が出ます。
結論として、減価償却資産の判定上では、税込処理よりも税抜処理が有利となります。
(3)特別償却、特別控除
一定の要件が整うと、通常の減価償却より割り増して償却できる特別償却、法人税から一定額が減額できる特別控除がある。この判定の要素に取得価額がある。この場合には税込処理を採用していると取得価額が大きくなるので有利となります。
特別償却、特別控除の判定上では、税抜処理も税込処理が有利となります。
以上のように(3)以外は税込処理の場合不利になることも多く、また決算書等に出てくる数字も実態の数字ではなくなり理解が難しくなること、また経理処理もさまざまなシステムの普及により以前より簡便になっていること等踏まえると税抜方式を採用することが望ましいと言えるでしょう。
【この記事の著者紹介】
鈴木 雅嗣(すずき まさつぐ)
税理士
enrolled&memoire合同会社 代表社員
取り巻く環境が複雑であることを背景に、画一的なサービスを提供せずクライアント1人1人とコミュニケーションを取った上での提案業務を主とする。
業務の基本として税理士業務はもちろんのこと、従業員教育、資産形成、経理のアウトソーシング等、業務範囲は問わず多岐に渡る。また税理士事務所にありがちな依頼がいつ終わるのか?と待たせることをせず、納期を設定の上、質を担保した上でのスピードも重視している。
契約可能地域は関東東京近郊を主とするが、一定の条件を満たすことで日本全国可能。顧問料は各自のニーズに合わせて納得いく金額を協議の上決める。通称税務で食わない税理士。
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