与信審査を確実に行うためには?確認すべきポイントや一連の流れを解説!

経理

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ひと月に数回の取引が発生する企業間の取引では、「掛取引」が行われています。しかし、「掛取引」には貸し倒れのリスクがあるため「与信枠」などと呼ばれる上限を設定し、その枠内で行われるのが一般的です。この「与信枠」の設定と与信枠の設定のための調査を「相手をどこまで信用するか」という意味で「与信」と呼びます。そして、与信は取引を継続する限り常に実施する必要があります。

この記事では「与信」が果たす役割とは何かを解説すると同時に、取り入れるべき分析手法や審査のポイントをご紹介します。

与信審査とは?

与信を行うには、まずは取引相手となる企業について知らなければなりません。そのために企業はさまざまな情報を集めて調査する必要がありますが、これを「与信審査」と呼びます。

相手の企業について公開されている情報を収集する、ネット上のものも含めて評判を調べる、相手企業の代表者に直接会って能力を潜在的なものも含めて見極める、相手に必要な資料を提出してもらう、信用調査会社に依頼するなどが主な調査方法です。一般的な企業が行える範囲で必要な情報は集められるので、さまざまな角度の情報から経営状況を審査します。

与信承認プロセスで実施すべき分析手法

ここでは、与信枠を設定するプロセスにおいて、相手企業についての情報を集めたら一般的に情報のどの部分がどのような形の分析対象に挙げられるのかを解説します。

決算書で経営状態を把握する

決算書に掲載されている数値データを対象として分析することを「定量分析」と呼びます。そして、定量分析を行うには、最低限貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)は入手する必要があります。

相手から直接提出してもらうのは自分が金融機関でない場合は信頼関係がないと難しいですが、新規の取引を始める際は比較的に提出の要望が受け入れられやすいでしょう。直接の入手が不可能な場合は、官報などの公開情報や外部の企業信用調査会社を通せば入手可能な場合もあります。

ただし、決算書は相手企業が当事者となって過去に関するデータをまとめたものであるという点に注意する必要があります。これは、相手企業が示した決算書が粉飾されている可能性が拭えないということです。

また、あくまで過去のデータなのでこれから取引を始めた場合、将来の経営状況を確実に示すものではありません。そのため、決算書の数字の分析だけでは与信承認のためのデータとしては不十分であり、次項で述べる「定性分析」で補う必要があります。

財務状況以外の情報を分析する

単純な数値で表すことが困難なデータを分析することを「定性分析」と呼び、近年重要視されつつある視点です。代表的なものとして、「代表者の分析」「株主と背景」「企業の風評」が挙げられます。他にも商品とその業界について調べることなど、さまざまな事柄が定性分析には含まれています。

代表者の分析は可能であれば面談を行い、代表者の能力、特に経理・財務の数字の理解能力や人柄、生活ぶり、性格などを評価します。また、直接面談しない場合も交友関係、とりわけ反社との交友関係の有無や、個人資産の有無などを取引先から聞き出すなどして情報収集します。

株主と背景については株主や設立の背景、系列会社や親会社の経営状況、取引銀行などを見ます。企業の風評については、現在ではインターネットでの風評の拡散が最終的に企業を倒産にまで至らしめてしまう事例が増えてきているので、リアルタイムで情報を収集し、不審な情報が入ってきた際には適宜与信を見直す必要があります。

商品については、業界は市場拡大のチャンスがある分野か衰退しているのか、法規制など関係法規に変化が見られるか、競合他社は多いか、参入障壁の高低、異業種との競争、仕入れ先・取引先は安定しているかどうかなどが見るべきポイントとして挙げられます。

このように、単純な数値に表せないものの、経営に影響を及ぼす可能性がある点は全て分析対象となります。

商流もリサーチしておく

相手企業について、商売の全体像(商流)を分析することを「商流分析」と言います。仕入れ先と販売先を把握すること、取引の動機、仕入れ先への支払猶予と販売先からの回収サイト(回収までにかかる期間)の整合性、販売や納品にかかる期間と納品場所、仕入れの数量が企業規模と比較して適正か、などの点を確認します。

また、商流分析を通じて与信の最重要事項の1つである「決済条件」を決めます。決済条件は自分と相手の力関係によって決まる面もあるので理想的な条件に収めるのは困難ですが、一度決めてしまうと後から変更するのが困難なので最初が肝心です。なお、売掛金の回収期限を先にすればするほど、大きな与信枠の設定が必要になる点に注意しておきましょう。

商流分析の中で集まったデータを用いて、決済条件が商慣行と比較して妥当か、相手が自分に支払う代金はどこから来ていてそれは安定した回収が望めるのか判断します。さらに、相手企業を単体として見た場合の倒産リスク、相手企業が連鎖倒産に巻き込まれるリスクはどうかといった点も評価します。

与信限度額の決め方

必要な情報を集め、それらの分析が終わったら「与信枠」と呼ばれることもある与信限度額を実際に決めることになります。与信限度額を決める際には、与信限度額で取引をする期限も合わせて設定する必要があります。

与信限度額は「必要かつ安全な範囲」で設定することが重要です。「必要」な限度額というのは、見込まれる取引額と回収サイトをかけ合わせて計算します。手形による決済の場合は、「手形を振り出すまで」ではなく「手形を換金できるまで」を回収サイトとして計算する必要があるため注意が必要です。

「安全」の度合いは財務内容や販売先のシェアで測ります。財務内容としては相手の純資産、自社の売上債権、相手の仕入れ債務などが参考になります。財務内容のうちどれを物差しにするべきかは、相手の企業のタイプや取引の性質によって変わります。通常は異なる基準から算出された複数の与信限度額のうち安全のために一番低いものを採用する、という形で決めるのが一般的です。

与信審査のポイント

ここまで与信に必要な審査について、どのような情報を集めて分析するのかを解説してきました。ここでは、審査で注意すべきポイントを解説していきます。

キャッシュフローに着目する

入ってくるお金の量と出ていくお金の量、それぞれの名目であるキャッシュフローは、相手企業の状態を分かりやすく伝えてくれるデータです。キャッシュフローは「営業活動におけるキャッシュフロー」「投資活動によるキャッシュフロー」「財務活動によるキャッシュフロー」の3つに分けられます。

営業キャッシュフローでは受取手形・売掛金の現金化が滞っていないか、投資キャッシュフローでは将来性のある投資でマイナスなのかどうか、財務キャッシュフローは資金調達によるプラスか資金の返済・株主への還元によってマイナスのどちらになっているかなどをチェックしておきましょう。

安全分析を行う

企業が黒字なのに倒産してしまうのは、資産があっても短期的な支払いに充てられる資産がないという事態が発生し得るからです。そこで「流動比率」「当座比率」という2つの数字を計算して「安全分析」を行う必要が生じます。

「流動比率」とは短期的な支払いを表す「流動負債」と流動負債の支払いに充てることが可能な「流動資産」との比率のことです。流動資産は2倍超あるのが望ましいとされており、短期支払い能力を分析する際の最もポピュラーな指標です。

「当座比率」は流動負債と当座資産の割合を示すもので、当座資産が1倍超であれば安全性が高いと認められます。流動資産に含まれる「棚卸資産」は即座に換金ができず、短期的な支払い能力に貢献しないという性質があるため、当座比率の方がより厳密な指標です。

資産の換金力に注目する

相手企業が支払期限までに現金を用意できなかった場合は、資産を売却して支払いをしてもらいます。資産を換金可能性で評価したものをストックと呼び、支払能力の評価対象とします。

ストックがあれば、キャッシュフローがショートしても売掛金の回収がある程度見込めるため、リスクに備えることが可能です。与信審査ではキャッシュフローのみならず、有事に備えてストックについても精査しておくようにしましょう。

評価の統一的な基準を設ける

ここまで与信を行うにあたって何を調べて評価の対象にするべきかという話をしてきましたが、「このような複雑で高度な業務は専門家に任せるしかないのでは?」という印象を持った方もいるでしょう。

高度な仕事だからと与信を属人的な業務にしてしまうと、与信審査に関して多大なコストが発生する、社内の他の人間が与信の重要性を理解できなくなるといった弊害があります。また、その他にも目先の売り上げを優先しがちな営業部門をけん制するという与信の重要な役割が果たせなくなる、与信の業務の引継ぎが困難になるなど、さまざまな問題が発生します。

これらの問題を防ぐためにも、「与信における評価の統一的な基準を設ける」ことが有効です。煩雑なステップになりがちな与信審査に一定の評価基準を持たせることで、社内の誰もが常に客観的に評価を行えるようになり、安易にリスクのある取引を行わずに済むというメリットがあります。

取引開始後の与信管理とは?

取引先について、取引を開始する時しか情報を調べないのでは与信を行う意味がありません。重要なことは、取引をしている間は常に問題が発生しないか取引先を管理することです。このプロセスは「与信管理」と呼ばれます。

入金に遅れはないか、与信限度の超過はないか、信用不安に関わる情報はないか、経営が悪化していないかなど、状態の把握に常時努める必要があります。現在では与信審査同様に、統一した評価基準によって点数化して管理するのが一般的です。

支払いが遅れたり、評価点数から倒産リスクの上昇が見られたりする場合、速やかに債権の回収に動く必要があります。また、リスクの上昇が見られない場合でも、1年に1回は取引先の情報を分析し、与信限度額を見直しましょう。

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与信は重要なプロセスです。与信は、取引の開始を検討した時から取引をやめるまでの間は常に相手企業について情報を集め、管理し続けなければなりません。しかし、いくら与信が重要な業務だと言われても、この記事で解説されてきたような業務を遂行するノウハウがない、専門家を常駐させるのが難しい、そもそも人手が足りないとお悩みの企業も多いことでしょう。

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まとめ

この記事では与信とは何かという話から始めて、与信に当たって実際に行われるべき業務を具体的に解説してきました。近年、与信は「ミスが起こらないようにコストをかけるもの」ではなく「与信を適切に行って自社の信用を高め、新たなビジネスチャンスを獲得する機会となるもの」というポジティブな評価が広まりつつあり、与信の重要性は益々高まっていると言えます。

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監修
【監修】藤田 豪人 株式会社ROBOT PAYMENT 執行役員

2019年当社に入社、執行役員に就任。
当社に入社以前は株式会社カオナビにてコーポレート本部長、複数の情報IT企業にてCMOなどを歴任。
現在は、当社のフィナンシャルクラウド事業及びマーケティング全般を統括。
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