経理ならではの財務分析2~売上債権回転率は経理の姿勢が見える~
皆さんは日頃から、
お客様に対して、請求書を発行→入金の確認→回収状況の把握
という売上債権の管理業務をされていると思います。
その中で、感覚値として「A社は、いつも支払が早いなぁ」とか「普段ならもう入金してくれているはずのB社、今月はまだだな、どうしたんだろう」といったものをお持ちではないでしょうか。
今回は、この感覚を財務分析に当てはめた上で、会社の経営に与える影響と、その改善案を考えていきましょう。
財務分析では、資産をどのくらい効率よく回して利益をあげているか、を見る効率性分析というものに当てはまります。
真のお得意様は誰だ~売上債権回転率・売上債権回転期間~
この指標は言葉どおり、売上債権の回収率を明らかにします。
売上債権回転率 = 売上高 ÷ 売上債権
回転率が高いほど、売上高に占める売上債権が低いことになり、効率的に回収出来ていることになります。
また、売上債権回転期間という指標もあります。これは、回収するのにかかる月数(日数)を出す指標です。
売上債権回転期間 = 売上債権 / 売上高 ÷ 12ヶ月
これを出すと、回収までに平均何日かかっているかが分かります。
顧客別に計算すれば、この期間が短いお客様こそ、会社にとって本当の意味で優良なお客様といえます。
売上債権を回収できないことの恐ろしさ
売上債権回転率が低い、ということは前回のブログ「経理ならではの財務分析1 ~流動比率が良いほど、経営はピンチかも?!~」にも書きましたが、売上債権のうち現金化できる見込の低いものが多い、ということになります。
また、売上債権回転率が低くなってきていることを見過ごしていると、最悪の場合、
お客様から「払わなくても大丈夫な会社だ」と思われ、ますます払ってもらえない
→自社が取引先に対して支払うための資金がショートする
→自社の信用を失う
といった怖い事態に陥ります。
ここまではいかないにしても、銀行や投資家など外部から、
・返済能力の低い会社だ (いざという時に現金と同等の価値を持つ資産が少ないから)
・取引先の管理ができていないだらしない会社だ
・キャッシュを必要としていない成長性の低い会社なのか
とマイナスの印象を持たれてしまうリスクがあります。
経理の姿勢が問われる
以上のように、売上債権回転率の低さは、会社としての経営姿勢が見えてきますが、日々の業務においては、経理が会社の資金繰りや信用にまで目を向けられているか、取引先とやりとりができているか、を問われることになります。
それでは、売上債権回転率を改善させるにはどうしたらよいでしょうか。
まずは回転率を下げている原因をはっきりさせなくてはいけません。先ほども述べましたが、売上債権を顧客別に分解してみましょう。
さらに、顧客ごとに売上を立ててから、何ヶ月(何日)で現金を回収できているか、売上債権回転期間を計算してみます。
同じ1万円の債権でも、A社は来月末が支払期限であるのに対して、B社は先月末までに払わなくてはいけない分だった、など債権の質の違いをつかむことができます。
経理が毎月、指標の推移を追っていれば、たとえば、急に売上債権回転期間の長くなった会社を発見できます。この場合、相手の経営状況が悪化している危険があるので、事情を確認し、場合によっては取引を止めるなど適切なアクションに移すことができるのです。
次に、確実に回収するためのルールを決めて、実行していくことも大切です。
・支払期限を○日過ぎたら、催促のメールを出す。
・さらに○日過ぎたら、電話をかける。
・○ヶ月経過した相手には、内容証明を送る。
・その他少額訴訟など法的手段も把握し、ルールに盛り込んでおく
面倒くさいと感じますが、逆の立場で考えると、たとえば1日過ぎただけで「払ってください」とメールが送られてきたら、「しっかりしているな、期日までに払わなくては…!」という気持ちにさせられませんか。
さらに、回収状況の悪いお客様に関しては、法務部門などとも連携し、与信枠の引き下げなども検討すべきです。
経理が部門を超えて働きかけていくことによって、お金は払ってもらえないのに、商品はどんどん売ってしまい損害を被った、という結末を防ぐこともできます。
効率性を意識して、会社の利益を本物にしましょう
売上債権を回収できない限り、いくら数字上は利益が出ていても、それは見せかけです。経理 の売上債権の管理姿勢によって、会社の利益ははじめて現金のともなう本物の利益になっていきます。
売上債権の状況を分析し、改善していくことをスタートに、経営や資金繰り、といった会社の未来を見通したアクションがとれる経理へとステップアップしていきましょう!