期ずれとは?対処法・予防法や売上計上の原則なども解説

経理

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その年に計上するべき売上や経費を、前年や翌年に計上することを「期ずれ」といいます。そのつもりがなくても、もし期ずれを利用した課税逃れだとみなされた場合、重加算税が課される可能性もあるため、十分な注意が必要です。たとえ悪意のない計上ミスでも、税務調査で指摘を受けた場合は、修正申告もしくは追加納税となる場合もあります。今回は、売上計上の落とし穴となる「期ずれ」について解説します。

期ずれとは

期ずれは、その年度に計上するべき売上や経費を、前年や翌年など別の年度に計上することをいいます。ここでは、期ずれが税務調査で重要視される理由と、どのような場合に起こるのかという2点について解説していきます。

税務調査で重要視される理由

「期ずれが発生するとその年度の法人税が正しく計算されない」という理由から、税務調査官は期ずれを厳しく調査せざるを得ません。
法人税は、売上から経費を引いた利益に法人税率をかけて算出します。税法では、入金のタイミングに関係なく、売上は商品を引き渡した時点で計上することが義務付けられています。

例えば、期中に取引があったにもかかわらず、入金が翌期だったからという理由で翌期の売上に計上した場合、税務調査官から「売上計上漏れ」もしくは「棚卸計上漏れ」を指摘されることになります。期ずれが発生すると本来の利益と額が変わるため、結果として法人税を過少申告したとみなされてしまうのです。この場合、過少申告加算税の支払対象となるため注意しましょう。

期ずれの主な事例

期ずれの事例として、以下のようなケースが挙げられます。

事例1:3月分の取引を翌年度に計上した
請求書締切日が毎月20日の場合、21日以降に発生した取引は翌月の処理となります。しかし、決算日が3月31日の場合に限り、3月21日から3月31日に発生した取引を期中に計上しなければなりません。したがって、この期間内に発生した取引を翌年度に計上してしまうと、期ずれが起きてしまいます。

事例2:翌期に納品される商品を前払いした
前払いで商品を購入して翌事業年度に納品される場合、発生主義の原則に基づき、商品が引き渡された時点で売上を計上する必要があります。家賃をはじめとした月額費用と同じく、翌事業年度分をまとめて前払いするケースがあるため、計上すべき年度をよく確認しておきましょう。発生主義については後述します。

事例3:消耗品を購入した
消耗品の費用は使用した時点で経費として計上しますが、企業における消耗品のほとんどは事前にまとめて購入して徐々に消費するため、決算時には未使用のものもあります。この理由から、消耗品は未使用でも購入時期の経費としての計上が可能です。ただし、利益対策として消耗品を年末に過剰に購入する際は、税務署から指摘されることもあるため避けた方が良いでしょう。

売上計上の原則

大手ハウスメーカーが決算に未完成の住宅を売上計上し、粉飾決算で問題になったことがあります。実は、これこそ典型的な期ずれです。

売上及び費用は「発生主義」により計上するのが原則です。発生主義とは、現預金の収支とは関係なく売上・費用が発生した時に計上を行うという意味です。つまり、お金が動いた日や請求書を発行した日ではなく、収益や費用の事実が発生した時が売上計上時期ということです。

例えば、商品をローンで売った場合、入金される日ではなく商品を購入者に渡した日が売上計上時期になります。

3月中に売上が出て入金があったのが4月の場合、売上は実際に入金があった4月ではなく3月分として計上します。費用についても同じで、実際にお金が動いた日ではなく売上が出た日に、一緒に計上するのです。なお、こちらが買い手になった時の先払いも同じです。

先にお金が動く場合は、商品が届いた日が費用を計上する日になります。費用は商品やサービスの提供を受けた日に計上するため、工事費や家賃など前払いした費用は「前払金」などの資産勘定科目で処理し、商品の引き渡し日に費用を計上します。

また、売上と費用は常に同時に発生するため、期ずれが起こるのは「発生主義」「費用収益対応の原則」を忘れてしまった時です。
ここでは、発生主義や実現主義、費用収益対応の原則の概要を簡潔に解説します。

発生主義

発生主義とは、お金の動きに関係なく取引が発生した時点で費用と収益を計上する考え方です。原則として、売上の収入や費用の支出が確定した時点、すなわち納品が完了した時点で計上します。現金の収入や支出がなくても、取引が確定している場合は売掛金や買掛金の計上が可能です。この考え方により、2か月に1度支払う水道料金も毎月均等に費用計上を行います。

実現主義

実現主義とは、実際に代金やその他の等価物により収益を実現したタイミングで収益を確定、計上する考え方です。収益は対価を得た事実に基づき計上しなければなりません。収益は原則として「未実現収益」を当期の損益計算に計上してはいけないためです。

なお、売上高などの収益を発生主義に基づいて計上すると、商品を販売する前に売上が計上され、実際よりも高い利益を上げているように業績を偽る「粉飾決算」が可能になってしまいます。受注した製品を納品し、取引先が製品に問題がないことを確認し、検収した時点で収益とする「検収基準」も実現主義の一つです。

費用収益対応の原則

費用収益対応の原則とは、会社の経営成績を適性に表示するために、売上と原価は対応させて損益計算書に計上しなければならないという考えです。すなわち、経費を計上するにあたって、どれだけの支出に対して収益を得たのかを対応させるための原則となります。

費用収益対応の原則には以下の2つの形態があります。

●個別的対応
製品の売上や、製品の製造・販売に必要な売上原価の関係など、製品を通じて個別的に費用と収益の関係が確認できるもの。

●期間的対応
売上に直接結びつかない家賃や水道光熱費、広告宣伝費など、会計年度を基準として、間接的に費用と収益の対応が確認できるもの。

製品を製造するための費用は売上のための費用です。売上の計上と共に関連する費用を計上することで、損益計算書の費用と収益が対応します。費用と収益が対応していない場合、会社の経営成績を表す損益計算書を適切に表示していないことになります。会社の経営成績を適切に表示するためにも、費用収益対応の原則は不可欠です。

意図的な期ずれを行った場合

期ずれは、事業年度をまたいだ取引が行われた場合や、代金の前払いが生じた場合などの計上ミスによって起こります。しかし、法人税を低くするために意図的に期ずれを行った場合は、重加算税が課されたり、会社の信用が失墜したりするため要注意です。

節税対策を希望するのであれば、より効果の高い節税方法を提案してくれる税理士に相談した方が得策です。ここでは、どのような行為が意図的な期ずれ、すなわち「利益操作」に該当するのか確認しておきましょう。

売上の除外

意図的な利益操作として、売上があったにもかかわらず売上を計上しない事例が挙げられます。例えば、売上代金を会社以外の預金口座に入金したり、現金で回収したりするなどといった行為です。入金に伴う請求書は破棄されていることが多く、この行為は仮想隠蔽行為に該当します。

売上原価の架空計上

取引の事実がないにもかかわらず、売上原価を計上することも立派な仮想隠蔽行為です。虚偽の納品書や請求書を作成し、材料費や外注費の計上を行う行為が一例として挙げられます。

期ずれの対処法・予防法

意図していない計上ミスによる期ずれであっても、延滞税や加算税がかかってしまうケースがあります。ここでは、期ずれに気付いた際にとるべき対処法について説明します。以下を踏まえ、日頃から意識して期ずれを防ぎましょう。

期ずれに気が付いたら修正申告を行う

税務調査で期ずれを指摘されたら、速やかに修正申告を行うことが大切です。修正申告が遅れると、延滞税や加算税の金額が増えてしまうため注意しましょう。

決算末期の取引で決算確定までに入金がない場合は難しいのですが、通常の取引であれば、計上漏れが生じても売上代金の入金があった時点で計上漏れに気が付きます。計上漏れに気が付いた時点で修正することも、大切な期ずれ防止策の一つです。

正確な会計処理の徹底

日頃から売上と原価を1つずつ対応させるよう、こまめで且つ正確な会計処理を徹底しましょう。記帳を丁寧に行えば計上ミスを防げます。特に期ずれが起こりやすい事業年度をまたいだ取引や代金の前払いが生じるタイミングでは、計上すべき年度や当期に納品される費用かどうかをよく確認しましょう。

また、正確な会計処理を徹底するためには、信頼できる税理士に依頼するのも効果的です。しかし、税理士とはいえ、売上原価が認容可能なことを知らない方や、売上と原価を個別に対応させて一つひとつ確認する作業を行わない方も少なくありません。税理士に会計処理を丸投げする場合は、自分でも期ずれに関する知識を身につけ、依頼する弁護士が期ずれに対する正しい知識を持っているか確認しておくと安心でしょう。

決算をまたぐ売上計上

期ずれが起こるのは決算をまたぐ取引の売上計上です。期ずれは課される法人税にも関わってくるため、税務調査でも厳しくチェックされる項目です。

前述の通り、よくあるのが締め後の売上計上です。
毎月20日が締日の場合、21日から月末の取引は通常なら翌月分として処理されますが、決算が3月末だった場合、この3月21から3月31日までの取引も3月中の取引に含めなければなりません。帳簿の中から21日から31日までの納品分を探し出し、売上高として計上する必要があります。

なお、売上計上のタイミングで商品を「引き渡した日」は、商品によって出荷基準、検収基準、使用収益開始基準、検針日基準という4つの基準があります。どの基準を使うかは会社の事業内容によって変わりますが、採用した基準は毎期継続して使用し続けなくてはなりません。

期ずれを起こさないためにはツールの導入を検討しましょう

紙媒体での請求書の場合、発行・郵送などに手間がかかるだけでなく、入金消込を手作業で行うことで期ずれが生じる要因にもなります。

期ずれを防ぐための売上管理方法の例は以下の通りです。

●Excel
費用をかけずにすぐに始めたいのであればExcelが適しています。社内でフォーマットを統一しておくことで、売上計上業務もスムーズにできるでしょう。ただし、操作ミスで関数が崩れてしまうとエラーが起こったり、誤った数値になったりするため管理が難しい面もあります。

●会計ソフト
会計ソフトとは、会計処理を記録し、決算に必要な帳簿書類を作成するためのソフトウェアです。導入するだけで、売上計上をはじめとするさまざまな会計業務の効率化も可能です。Excelのように関数が崩れるようなことも起きにくいため、人的ミスを軽減できるでしょう。

●販売管理システム
企業が注文を受けてから商品を納品するまでの一連の販売業務を統括して管理するシステムです。販売管理機能、在庫管理機能、購買管理機能などを有しています。複雑な売上計上ルールも、事前に登録しておけば自動集計でき、人的ミスを防げます。

他にも売上管理方法はあるので、自社に合ったやり方を探すと良いでしょう。
期ずれを起こさないことはもちろん、業務効率化を図るためにもツールの導入は有効といえます。

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まとめ

ここまで、期ずれについて解説しました。期ずれは事業年度をまたいだ取引が行われた場合や、代金の前払いが生じた場合などに計上ミスによって起こります。期ずれを防ぐには、日頃から正確な会計処理を徹底することが大切です。税務調査で期ずれを指摘された場合は、迅速に修正申告して再発を防ぎましょう。人的ミスを未然に防ぎつつ請求業務の効率化を図りたいとお考えなら、ぜひROBOT PAYMENTの「請求管理ロボ」にお任せください。

監修
【監修】藤田 豪人 株式会社ROBOT PAYMENT 執行役員

2019年当社に入社、執行役員に就任。
当社に入社以前は株式会社カオナビにてコーポレート本部長、複数の情報IT企業にてCMOなどを歴任。
現在は、当社のフィナンシャルクラウド事業及びマーケティング全般を統括。
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