請求書には有効期限がある!未払い時の対処法とリスク回避のポイント

請求業務

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取引においてやりとりされる請求書は、債権者側から見れば、書面に残すことで相手方に対し請求の事実を確定させる役割を持つ重要な書類の1つです。しかし、債権には民法の消滅時効の規定が適用されます。では、たとえ相手方に請求書を送付してあったとしても、未回収のまま時が過ぎてしまえばその代金・報酬の請求権を確定的に失ってしまうのでしょうか。

今回は、法律を根拠に請求書の有効期限について明らかにするとともに、代金が支払われない場合の対処法とリスク回避のポイントについて解説していきます。

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請求書の期限とは?

請求書を送ったにもかかわらず代金が支払われないとなれば、請求書の有効期限がまず気になるポイントでしょう。また、相手方から迅速かつ確実に支払いを受けるためには、請求書の支払期限の設定についても考えておく必要があります。以下、順にみていきましょう。

法律上の有効期限

これまで民法では、以下に該当する債権を2年間行使しないと消滅すると定めていました(旧第173条)。

1. 生産者、卸売商人又は小売商人が売却した産物又は商品の代価に係る債権
2. 自己の技能を用い、注文を受けて、物を製作し又は自己の仕事場で他人のために仕事をすることを業とする者の仕事に関する債権
3. 学芸又は技能の教育を行う者が生徒の教育、衣食又は寄宿の代価について有する債権

本条は、日常頻繁になされる取引における権利関係を早期に確定させる趣旨から、2年間という短い消滅時効を規定したものです。したがって、旧法によれば、未払いのまま支払期日の翌日から2年が経過してしまえば請求書自体も期限切れとなり、代金が支払われないことが確定していました。

しかし、2017年の民法大改正により、短期かつ職業別の消滅時効制度の廃止と債権の消滅時効期間の統一が図られます。そして、新民法166条1項1号により、原則として支払期日の翌日から5年で消滅時効になり、請求書の法律上の有効期限も5年に延びることになりました。

なお、新民法の施行日は2020年4月1日です。当該債権の発生がこの日よりも前であれば改正前の旧民法が、以降の場合には改正された新民法が適用されることになります。

入金サイトの設定方法

請求書には法律上の有効期限があるため、健全な資金繰り維持の観点からは、期限到来までに未払い債権を確実に回収していくことが大切です。

請求書による回収では、一般的には商品やサービスの提供ごとに請求する「都度方式」ではなく、「締め方式」である月末締め翌月末払い、あるいは翌々月末払いといった、一定の入金サイクルが採られます。このような入金までの猶予期間のことを「入金サイト」と言い、普通は契約締結時に取り決めることになります。

入金サイトの設定に関して、これといった法律上の決まりはありませんが、資金繰りの良し悪しに直結することなので、「支払いサイト」とのバランスをとるなど最適化は必須です。また、通常使われない入金サイトを設けると取引先を混乱させるだけでなく、支払いミスを誘発する危険性もあります。一般とは異なる入金サイトにするのであれば、あらかじめその旨を取引先に伝えておいたり、請求書に明記したりするなどの配慮が求められるでしょう。

なお、下請取引の公正化と下請事業者の利益保護を目的とする「下請代金支払遅延等防止法」では、支払期日は役務の提供を受けた日から「60日以内で、かつできるだけ短い期間内でなければならない」と規定されています。したがって、本法令の趣旨に鑑みれば、早期の支払いを促す入金サイトの設定が求められることになるでしょう。

祝日や年末年始を挟む場合

請求書の支払期日として好ましくないとされるのが、土日を含む祝日や年末年始です。これらの日は通常金融機関が休みになりますから、支払期限を前後にずらすとよいでしょう。

締め日が「土日に重なる場合は直前の平日払いとする」、あるいは「年末年始は特別に翌月5日払いとする」というような取り決めを事前に取引先と交わしておくことで、期限にまつわるトラブルを未然に防ぐことができます。

請求書の期限を決めないことによるリスク

契約を口頭のみで受注していたり、書面であっても支払期日を決めていなかったりすれば、支払い遅延・買い叩きをはじめとするさまざまなトラブルを誘発するリスクが高くなるでしょう。

請求書は、証憑書類として取引の証拠となるものであり、代金・報酬を支払期限までに確実に回収するうえで欠かすことのできない書類の1つです。後になって無用な言いがかりを受けることを防ぐためにも、請求書に支払期日を明記しておくことが大切です。

支払が行われない場合の対処法

期限を過ぎているにもかかわらず支払いが行われない場合、どうすればよいのでしょうか。ここでは対処法を紹介していきます。

自社のミスかどうか確認

自社が請求書を送付し忘れていたり、送ったとしても請求先を間違えたりということはないでしょうか。

また、届いているとしても、記載した期日が間違っていて未対応である場合や、請求内容が誤って記載されていたために、受理されず未払いとなっている可能性もあります。

そして、いちばん気をつけるべきなのは、取引先からの「クレームを理由とする未払い」です。このようなときに安易に代金請求の連絡を入れてしまえば、相手方の感情を逆なですることにも成り兼ねません。事前に取引先との間に何か問題が生じていないかを確認しておくことが大切です。

直接連絡による支払い要求

自社にミスがなく、取引先からのクレームも入っていないことが明らかになったら、直接連絡して支払いを催促することになります。

単なる支払い忘れであれば、連絡により速やかに対応してくれることがほとんどです。改めて支払い期日を設定したり、取引先からの支払い期日に関する相談に応じたりすることで事足りると考えてよいでしょう。

連絡手段としては電話やメールが考えられますが、一長一短がありますから状況に応じて使い分けることがおすすめです。直接相手方と話ができる電話によれば、確度の高い催促をすばやく行うことが可能です。ただし、履歴を残すのが難しい面があるので、やりとりを確実に把握しておきたいといった事情がある場合にはメールの方が向いています。

なお、電話やメールによる催促にもかかわらず未払い状態が続くときには、直接取引先を訪ねるやり方も考えられます。

内容証明書の送付

直接連絡による催促をしてなお支払われない場合には、取引先に「内容証明書」を送付します。内容証明書とは、いつ、どのような内容の文書が誰から誰宛に差し出されたかについて、郵便局が証明する通知書のことを指します。

法的効力こそないものの、支払い期日を含めた取引の内容が明記された内容証明書を郵送することは相手方への有効な警告となり得るので、支払いを促す効果は十分期待できます。ただし、心理的圧迫感が強い手段でもあるため、あらかじめ電話やメールで送付する旨を伝えたうえで送るようにしましょう。

なお、内容証明書の送付は、民法上の時効中断事由の1つである「催告」にあたるため、時効期間、すなわち請求書の有効期限を6ヶ月延長することができます。ただし、催告はこの6ヶ月間に裁判上の請求や差押、仮処分などの手続きをとらないと時効中断の効力が失われ、再度の催告による時効期間の延長も認められないものとされています。内容証明書の送付だけで時効中断の効力が確定的に得られるわけではないので注意が必要です。

支払督促の申請

支払督促とは、裁判所に申立てをして相手方に債務の履行を求める手続きを言います。相手方に支払いを命じるかどうかの判断は、申立人が提出した書類の審査のみでなされます。訴訟の場合と異なり裁判所に出向く必要がなく、証拠の提出も不要です。また、裁判所に納める手数料が訴訟の半額で済むなど、簡易な手続きによって迅速に債権回収を図れるメリットがあります。

裁判所による支払督促の通知によっても相手方が支払いに応じず、かつ異議申し立てもしない場合には、「仮執行宣言の申立」を行いましょう。そして、仮執行宣言付支払督促が相手方に届いてから2週間以内に異議申し立てがなされなければ、支払督促は確定判決と同一の効力を有することになり、強制執行により財産を差押さえることが可能になります。

しかし、相手方から異議を出されるとそれだけで支払督促が無効となってしまうだけでなく、そのまま、自動的に通常の民事訴訟手続きに移行することになります。加えて、支払督促で異議を出されると基本的には相手方の住所地の裁判所が管轄となります。もし、相手方が遠方に在れば、裁判所に出向く時間や労力、さらには交通費の負担が期日が延びる分だけ重くのしかかることになるでしょう。

請求書を受け取った側のケース別対応方法


ビジネスの世界では、取引において常に請求書を「発行する」側に立つわけではありません。商品・サービスを購入したり、仕事を外注したりすれば債務者として請求書を「受け取る側」に回ることになるでしょう。ここでは、請求書を受け取った側が直面しがちな問題への対応方法をケース別にご紹介します。

支払い期限が短すぎる場合

契約締結の段階で取り決めていなければ、支払期限を設定するのは発行側になります。

前述のとおり、法は早期の支払いを促すサイト設定を促していることは確かです。しかし、請求書で示された支払期限が、たとえば3日後といったように極端に短すぎる場合には、債務者としては対応が難しいでしょう。

こういった場合には、支払期限が短すぎて支払いが困難なので、期限を延ばす方向での変更が可能であるか、電話やメールで相手方に問い合わせてみるとよいでしょう。

支払い期限を過ぎてしまった場合

請求書到着の遅延や受領済みであってもうっかり支払期限を失念していたことで、支払い期限を過ぎてしまったということもあるかもしれません。

多かれ少なかれ相手方の資金繰りに影響を与えることになるため、できるだけ早く連絡を行い、謝罪とともにいつまでに入金できるのかを明確に伝えることが肝要です。

支払い期限が請求書に記載されていない場合

支払い期限が請求書に記載されていないケースもしばしば散見されます。こうしたときには、基本的には常識の範囲内であれば支払うのがいつになっても構わないと考えてよいでしょう。

ただし、相手方との信頼関係維持の観点からは、支払日の連絡は必須と言えます。また、相手方が下請けの場合であれば、法が定める役務の提供日から、遅くとも60日以内には必ず支払うことが大切です。

請求書の未払いを防ぐポイント


これまでみてきたとおり、請求書の未払いは、発行側には資金繰りの停滞や最悪時効による期限切れによる債権の回収不能をもたらします。一方、受け取る側にとっても、未払いにより一時的には得したように思われても、中長期的には信用を失うことで、以後の経営存続が厳しくなる環境を自ら招く恐れが出てくるでしょう。

債権者・債務者ともに可能な限り避けたい事態である請求書の未払いを防ぐポイントについて、ここではそれぞれの立場からみていきましょう。

請求書の管理を徹底する

まず、受け取る側からの未払いを防ぐためには、請求書の管理を徹底することが重要です。請求書とひと口に言ってもさまざまな請求先があり、支払いステータスもまちまちですから、効率的な管理方法を考えておく必要があるでしょう。

請求書を受け取ったら、まず請求金額と債務の内容が一致しているか確認し、支払い期限の到来順にファイリングして保管しておくと、管理しやすく、支払い漏れを防ぐことも期待できます。そして、支払いが完了した請求書については日付などを必ず記入するようにし、さらに未払い請求書とは分けて保管することで支払いの有無が一目瞭然になるので、二重払いを避けられるでしょう。

日頃から与信管理を行う

請求書の発行側については、取引先情報の収集・分析を基にした取引先の信用力・将来性とリスクとの比較衡量を行い、損失を抑えながら確実に代金を回収してできるよう管理していくこと、すなわち「与信管理」を日頃から行っていくことが重要です。

あらかじめ設定した限度額や与信枠を、取引先の債務の履行状況という客観的な事実に基づいて定期的に組み直すようにしましょう。取引先の信用悪化が表面化してから動き出すのではなく、危険な兆候をすばやく見抜き、先手の対応を打ち出していくために、入念な与信管理は不可欠な活動なのです。

未払いを防ぐ体制をつくる

請求書の未払いを防ぐためには、代金回収までがビジネスという意識を会社全体で持つよう、社員への理解促進や体制・仕組みづくりも重要です。

方法のひとつとして、「請求まるなげロボ」のような売掛金100%保証の請求代行サービスを活用することも検討してみてはいかがでしょうか。未回収のリスクを避けながら、資金繰りも楽になり、事業契約の見通しも立てやすくなるため、請求書の未払いを防ぐ体制づくりを実現できます。

請求書の期限管理は「請求管理ロボ」におまかせ!

確実な代金回収のためには手抜かりのない与信管理が求められますが、手動で1つ1つの案件に向き合っていくことは必ずしも簡単なことではありません。

そこで、適切な請求書の期限管理方法をお探しの方に、請求業務の自動化を実現する「請求管理ロボ」のご利用を提案いたします。請求管理ロボは、請求書の発行・送付はもちろんのこと、入金消込や期日切れの売掛金に対する支払い催促などの入金管理業務全般に対応しています。

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まとめ

請求書は、発行側にとっては相手方に対し請求の事実を証明するうえで大切な書類です。有効期限を把握しておくこと、未払い時の対処法や未払いによるリスク回避のポイントについてあらかじめ押さえておくことが大切です。

効率的かつ安全な請求書の期限管理を目指される方は、「請求管理ロボ」の導入をご検討ください。

監修
【監修】藤田 豪人 株式会社ROBOT PAYMENT 執行役員

2019年当社に入社、執行役員に就任。
当社に入社以前は株式会社カオナビにてコーポレート本部長、複数の情報IT企業にてCMOなどを歴任。
現在は、当社のフィナンシャルクラウド事業及びマーケティング全般を統括。