インボイス制度の廃止案が挙がる要因とは?廃止された場合の対策なども紹介
軽減税率制度の実施により消費税が複数税率化されてから、2022年10月1日で3年が経ちます。現在は、仕入税額控除を行う際の消費税算出方法には「区分記載請求書等保存方式」が採用されていますが、これは猶予措置に過ぎません。
正確な消費税計算に基づく適正な課税の確保に向けた本格的な仕組みが、「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」です。この制度は2023年10月1日の導入に向けすでに待機状態にあります。
ところが導入が近づく現在、インボイス制度には各方面からの不満や懸念も高まっており、2022年6月10日には野党4党共同でインボイス制度の廃止などを盛り込んだ議員立法「時限的消費税減税法案」が提出されるまでに至っています。
では、インボイス制度とはどのような仕組みであり、何が問題視されているのでしょうか。この記事では、インボイス制度の仕組みやインボイス制度の廃止案が挙がる要因、インボイス制度に関連する法律、さらにはインボイス制度に向けた準備のポイントなどをご紹介していきます。
インボイス制度とは?
インボイス制度とは、軽減税率実施に伴う異なる税率の混在から生じかねない不正やミスを防ぐことを目的に、2023年10月1日より導入される新たな仕組みです。
ここでは、制度の仕組みと求められる請求書の記載項目の解説を通じて、インボイス制度の概要を明らかにしていきます。
インボイス制度の仕組み
インボイス制度は、インボイス(適格請求書)の様式に則った消費税計算と徴収の運用ルールを定めた仕組みです。
インボイスでは、現行の区分記載請求書の項目に加え、登録番号、適用税率および税率ごとに区分した消費税額等の記載が必要になります。そして、買い手はこれらの記載要項を満たした請求書や納品書を売り手に交付してもらい、かつ保存していなければ、原則として仕入税額控除を受けられません。
インボイス制度が必要とされる背景には、2019年の消費税率引き上げに伴う軽減税率制度の実施があります。8%と10%の2種類の消費税率が混在している状態では、請求書でそれぞれの適用税率とその合計額が不明確なままだとミスが多発したり、不正が横行したりしかねません。インボイスを用いることで、事業者が行う経理処理の正確性向上が期待できます。透明性の高い仕組みによる適正な課税の実現は、複雑化した税率の下で確実に税徴収を行うためには欠かせないといえるでしょう。
インボイス制度で求められる請求書の記載項目
インボイス制度で求められる適格請求書の記載項目は、次の6つです。
●発行者の氏名又は名称、および登録番号
●取引年月日
●取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
●税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜または税込)、および適用税率
●税率ごとに区分した消費税額等(端数計算は1つの適格請求書につき、税率ごとに1回ずつ)
●受領者の氏名又は名称
従来の区分記載請求書よりも記載事項が増えるため、経理業務の煩雑化が予想されます。さらに適格請求書は原則受領者側での修正が認められていないため、交付した適格請求書の記載事項に漏れや誤りがあった場合は、修正した適格請求書等を改めて交付しなければなりません。
また、適格請求書を発行できるのは、 税務署長に申請して登録を受けた課税事業者に限られます。
インボイス制度の廃止・延期案が挙がっている要因
インボイス制度は、消費税額を正確に把握する目的で導入が決まった仕組みです。しかし、冒頭でも述べたように、現在インボイス制度の導入に対してさまざまな問題が指摘されています。
ここでは、インボイス制度導入により想定されるデメリットについて、免税事業者・課税事業者それぞれの視点から解説していきます。
免税事業者への影響
買い手側の事業者が仕入税額控除を受けるには、インボイスが必要です。しかし、インボイスを発行できるのは課税事業者に限られます。そのため売り手が免税事業者のままでは、仕入税額控除が受けられなくなることを理由に、取引先から契約を打ち切られる可能性が出てきます。あるいは打ち切られないにしても、見返りに消費税分の値引きを要求されるかもしれません。
課税事業者になって取引先との関係性の継続を図ることもできますが、そうなると以後は消費税を納めなければならなくなります。これまで丸々利益にできた消費税分が手元に残らなくなることでもたらされる収入減は大きな痛手となるでしょう。特に年間の売上高が1,000万円未満のフリーランスの方や個人事業主の方にとっては、経営の圧迫による廃業や経営破綻にもつながりかねません。
経理業務やコストの増加
インボイス制度の導入は、課税事業者にも大きな影響を及ぼします。
第1に、経理業務の負担増です。買い手は、売り手から受領した請求書がインボイスの基準を満たしているかを都度確認していかなければなりません。また、納税額の算出もインボイスに記載された消費税額を基に行うことになります。作業が増えることに加え、業務フローの変更が必要になる場合もあるでしょう。
第2に、コストの増加です。既存の会計システムがインボイス制度に未対応であれば、システム改修や新システム導入に伴うコスト負担が避けられません。さらに、先に述べた経理業務の負担を解消するために人員の補充が必要になれば、その分人件費もかさみます。このようなコスト増加は、インボイスを交付する側にもインボイスを受領する側にもどちらにも起こりうる懸念と言えます。
インボイス制度に関連する法律
インボイス制度が開始されると、適格請求書の発行や受領した適格請求書の確認、さらには7年間の適格請求書等の保存など、売り手・買い手どちらの事業者にもさまざまな義務や作業が発生します。そのため、電子化により保存にかかるコストや負担を軽減したいと考える事業者も少なくないでしょう。
ここではインボイス制度に関連する2つの法律である、電子帳簿保存法とe-文書法について解説していきます。
電子帳簿保存法
電子帳簿保存法(電帳法)とは、国税関係の帳簿や領収書・請求書などの書類を電子データで保存するためのルールを定めた法律です。従来の紙保存にかかる手間やコスト負担を軽減する趣旨で1998年に制定されました。ペーパーレス化によるDX推進の流れもあり、近年になって要件が緩和されたことで、導入する企業が増えています。
直近の2022年1月施行の改正電帳法では、事前承認制度の廃止、システム要件やスキャナ保存のタイムスタンプ要件の緩和、電子データ化した紙原本の廃棄容認などの電子化を促す大幅な見直しが行われました。紙で受け取った請求書については、紙形式での保存を原則とするものの、スキャンにより電子データ化して保存することが認められています。
一方で、この改正により電子データとして受け取った請求書について、真実性の確保と可視性の確保という2つの要件を満たしたうえでの電子保存が義務付けられた点には注意が必要です。これにより、電子データを紙に出力しての保存は原則できなくなりました。一定の要件を満たしている場合に限り2年の猶予期間が設けられているものの、これまで紙に出力して保存していた企業や事業者は新たなルール作りを急ぐ必要があるでしょう。
紙と電子の適格請求書が混在したままでは管理の煩雑化は必須のため、適格請求書については、電子保存による一元化を図ることをおすすめします。
e-文書法
e-文書法とは、法人税法や会社法などで義務付けられている文書や帳簿、請求書などにつき、紙媒体だけでなく電子化による保存も容認する法律です。e-文書法は通称で、正確には2005年4月に施行された民間事業者の書面の保存に関する「通則法」と「整備法」の2つの法律から成ります。なお、通則法は電子化を容認する包括的な法律であり、対象となる法律は250本ほどあると言われます。
電子帳簿保存法同様、e-文書法もペーパーレス化を推進しようとする法律である点は変わりません。しかし、対象となる文書が国税関係書類のみに限られる電帳法とは異なり、e-文書法の対象は民間企業において保存義務のある法定文書全般と多岐にわたります。また、以前は電子化にあたり税務署長による承認を受ける必要のないことが電子帳簿保存法との大きな違いでした。
インボイス制度との関わりで考えられるのは、適格請求書の記載項目の一部が、電子帳簿保存法の対象を外れる法定保存文書に記載されているケースです。この場合には、文書の対象範囲が広いe-文書法に則った電子化保存が必要になる可能性があります。その際、e-文書法と電帳法では文書を電子保存するための要件が異なるため、該当する各府省の主務省令や通達などで詳細を確認しておくことが大切です。
今からでも遅くない!インボイス制度に向けての準備
インボイス制度がスタートすると、仕⼊税額控除手続きを行うには適格請求書が必要になります。ここでは、インボイス制度に向けて準備すべき2つのポイントを解説していきます。
適格請求書発行事業者への登録申請
適格請求書発行事業者になるためには、登録申請書を提出しなければなりません。登録申請はすでに受付を開始しており、インボイス制度開始日から登録を受けるためには、原則として2023年3月31日までに税務署長宛ての登録申請書の提出を済ませる必要があります。
登録申請は所轄の税務署はもちろん、e-Taxでも受け付けています。制度開始に確実に間に合わせたいのであれば、早めに済ませておくか、e-Taxの利用がおすすめです。期限間近は確定申告の時期と重なるため、税務署内の混雑が予想されます。また、免税事業者の場合は、適格請求書発行事業者の申請を行うには課税事業者に転換しなければならないため、余裕を持って手続きを行いましょう。
システムの見直し
手続きだけではなく、インボイス制度導入に向けたシステムの確認も欠かせません。既存の請求管理システムが適格請求書に対応しておらず、Excelなどで請求書を発行している場合には、システムの改修や見直しが必要です。
先述したように、インボイスでは現行の区分記載請求書の記載事項に加え、登録番号・適用税率・税率ごとに区分した消費税額等の3項目が必要になります。そのため、請求書はもちろん、帳簿等でもこれらの記載事項を満たしたフォーマットを整えておくのは最低ラインの準備と言えるでしょう。
また、インボイス開始後に仕入れ先にインボイスを発行できない免税事業者がいる場合には、課税事業者と分けた経理処理が必要になります。このようなケースで課税・免税の識別ができないシステムでは、仕⼊税額控除の計算に必要な書類の取捨選択に手間と時間がかかり、経理事務が煩雑化しかねません。
現在市場に出回る販売管理や請求書発行のシステム・サービスの多くが、インボイス制度の開始に照準を合わせ、すでに適格請求書の記載ルール対応に向けた準備を終えています。現存のシステムでかかる手間やコストを考えれば、この機会に対応システムへの移行を図るのもおすすめです。
インボイス制度に対応した請求書の発行・管理は請求管理ロボにお任せ!
インボイス制度が開始された後の経理業務、請求書の発行・管理業務においては、授受した適格請求書の保存については電子化したうえで、システムで管理していくのがおすすめです。数ある請求管理システムの中から何を選ぶべきかお悩み中の担当者様は、株式会社ROBOT PAYMENTが提供する「請求管理ロボ」のご利用をぜひご検討ください。
請求管理ロボは、毎月の請求業務を約80%削減するクラウドサービスです。請求書の発行から集金、消込、催促までのフローの自動化により、入金消込の煩雑さからの解放と回収率の向上が実現します。また、会計ソフトとの仕訳連携を図ることで、会計業務を効率化できます
定期的なアップデートによる最新機能の常時提供も、請求管理ロボの特長の1つです。インボイス制度開始時の新フォーマットへの自動対応はもちろん、発行したインボイスについてはインターネット環境であればいつでも閲覧が可能で、紛失の心配もありません。現在申請中である電子帳簿保存法に対応した「JIIMA認証」取得により、申請手続きの簡略化も実現可能です。
さらに、日本版Peppolへの対応も予定しており、電子インボイスの標準仕様化に向けた準備についてもワンストップにてお任せいただけます。
まとめ
インボイス制度導入についてはさまざまな問題点が指摘されており、もたらされる影響の大きさもあって、現在各方面から廃止や延期を求める声が数多く寄せられているのが実情です。しかし、今のところ導入予定に変更はなく、免税事業者・課税事業者どちらの立場からも相応の準備が必要であることに変わりはありません。
インボイス制度の対応に手間やコストがかかるのは避けられないにしても、自社の請求業務を見直す絶好のチャンスと捉え直すことも可能ではないでしょうか。
インボイス制度へのスムーズな対応をお望みであれば、この機会にぜひROBOT PAYMENTが提供する「請求管理ロボ」の導入をご検討ください。