相殺とは?相殺請求書の書き方や相殺処理の仕方について詳しく解説

取引先と継続的に売買をしていると、「こちらは請求(売掛金)がある一方で、相手への支払い(買掛金・未払金)もある」といった状況が起こります。このようなときに、双方の債権・債務を差し引いて決済するのが相殺です。
本記事では、相殺の意味・法的ポイント、実務での進め方(相殺処理の仕方)、相殺請求書(相殺明細)の書き方、仕訳の例までをまとめて解説します。
※本記事は一般的な情報提供であり、個別案件の法的判断は契約内容や事実関係により異なります。
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相殺とは(相殺の意味)

相殺とは、当事者間で互いに負っている債権・債務を、対当額で差し引いて決済することです。
例えば、自社に取引先への請求(売掛金)があり、同時に取引先への支払い(買掛金・未払金など)もある場合、同じ金額分を差し引いて、実際の支払・入金を減らしたり、差額だけを支払ったりします。
なお、実務では「相殺処理」「相殺精算」「相殺取引」「相殺分」などの言い方もされます。
相殺が使われる代表的なケース
売掛金と買掛金(または未払金)を差し引く
互いに請求・支払がある継続取引で、差引して決済するケースです。
過入金を次回請求に充当(差引)する
取引先の入金が多かった場合、返金の代わりに次回請求で差し引く運用があり、これも実務上「相殺」と呼ばれることがあります。
※会計上は仮受金・前受金等の整理と、次回請求への充当が論点になります。
相殺は「法律上は一方的に成立し得る」が、実務では合意・通知が安全
相殺は、一定の要件(同種の債権債務であること、双方の債権が弁済期にあること、相殺禁止の合意や法令上の制限がないこと等)を満たすとき、民法上は相殺の意思表示によって成立し得ます。
ただし実務では、次の理由から事前の確認・合意(または少なくとも相殺通知)を推奨します。
・対象にする請求・支払がズレると、二重請求・二重払い等のトラブルになりやすい
・契約書に相殺禁止条項や事前承諾条項がある場合は、その定めが優先され得る
・監査・税務調査・社内統制の観点で、対象・金額・基準日が分かる記録が必要
相殺処理(相殺精算)の進め方(実務フロー)
相殺処理の進め方は、最終的には「何を」「いくら」「いつの基準日で」相殺したのかが第三者に説明できる形に整えるのがポイントです。
1. 対象の洗い出し
・相殺対象の請求書(売掛)と、支払予定(買掛/未払)を一覧化
・税率区分・取引日・請求書番号(支払側は発注番号等)も紐づけて整理
2. 取引先と意思確認
・相殺対象、相殺金額、差引後に「支払う/入金する」金額、基準日をすり合わせ
3. 相殺の記録を残す
・相殺合意書、相殺通知書、メール等で「対象・金額・基準日」を明確化
・電子でやり取りしたものは、電子帳簿保存法の要件に沿って保存
4. 会計処理(相殺仕訳)
・基準日(相殺の合意日・通知到達日など、社内ルールで決めた日)に相殺仕訳を計上
5. 差額の入金・支払(必要な場合)
・差額のみを通常通り決済(振込等)
請求書の相殺処理の仕方・仕訳方法
ここでは、B社側の会計処理を例に、表と対応する形で相殺の流れを説明します。
①当月:B社→A社の売上(200,000円)が発生
B社はA社に商品等を販売し、200,000円を請求します。B社では、売上計上に伴い売掛金200,000円が発生します。
(仕訳:売掛金 200,000円/売上 200,000円)
②当月:B社←A社の仕入(150,000円)が発生
同じ月に、B社はA社から商品等を購入し、150,000円の支払義務が発生します。B社では、仕入計上に伴い買掛金150,000円が発生します。
(仕訳:仕入 150,000円/買掛金 150,000円)
③翌月:相殺により差額だけを入金(50,000円)
当月時点で、B社は以下を同時に持っています。
・A社から回収する金額:売掛金200,000円
・A社へ支払う金額:買掛金150,000円
ここで両者が合意(または通知)したうえで、150,000円を相殺すると、B社の売掛金は 200,000円 − 150,000円 = 50,000円 だけ残ります。
その結果、翌月はA社からB社へ差額の50,000円のみが入金されます。
(仕訳:買掛金 150,000円/売掛金 150,000円 + 普通預金 50,000円/売掛金 50,000円)
以下が、上記の流れをそのまま仕訳表に落としたものです。
| 日付 | 勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|---|
| 当月処理 | 売掛金 | 200,000円 | 売上 | 200,000円 | A社への売上 |
| 仕入 | 150,000円 | 買掛金 | 150,000円 | A社からの仕入 | |
| 翌月処理 | 普通預金 | 50,000円 | 売掛金 | 50,000円 | A社からの入金 |
| 買掛金 | 150,000円 | 売掛金 | 150,000円 | A社取引の相殺処理 |
※上の表は理解しやすい典型例として「仕入/買掛金」で示していますが、実務では取引内容により「未払金(外注費・支払手数料等)」など別科目になることがあります。自社の会計方針・科目設計に沿って整理してください。
相殺請求書の書き方(インボイス制度の注意点)

相殺請求書に記載する内容
相殺を請求書上で明確にする場合、一般的な請求書項目(発行日、取引先名、自社情報、請求金額、振込先等)に加えて、以下をわかるようにします。
・相殺前の請求金額:本来の請求額
・相殺金額:相殺分
・差引請求額:実際に支払ってもらう金額
・相殺の対象明細:対象請求書番号、発行日、税率区分、金額(必要に応じて支払側の資料番号も)
インボイス制度における注意点
相殺は、基本的に「値引き(対価の返還)」ではなく決済方法(回収・支払の相殺)です。
したがって、適格請求書(インボイス)として必要な記載(税率ごとの対価の額、消費税額等)は、原則として取引の対価(相殺前の本来の売上)に基づいて整合的に記載します。
・実務で多い対応
① 相殺前の内容でインボイス要件を満たし、別欄で相殺明細(相殺額・差引請求額)を表示する
② 適格請求書(インボイス)と相殺通知(相殺明細)を分ける:適格請求書は全額で発行し、相殺通知で差引後の入金額を案内する
※「相殺」を値引きのように見せる記載(値引き理由のような書き方)にすると、取引実態とのズレや社内処理の誤りにつながるため、“買掛金(または未払金)との相殺である”ことがわかる文言にします。
相殺通知書(文書・メール)の書き方(例文)
では、② 適格請求書(インボイス)と相殺通知(相殺明細)を分けるを採用した場合の「相殺通知書(文書・メール)の書き方(例文)」について、お伝えしましょう。
相殺通知は、相殺の対象・金額・基準日を明確にしたうえで、「相殺させていただきます」という旨を伝えるイメージになります。
〇〇様
いつもお世話になっております。
〇〇株式会社の〇〇です。
下記の通り、貴社へのお支払予定額と、当社からのご請求額を
相殺により精算させていただきたくご連絡いたします。
【相殺基準日】2026年〇月〇日
【当社請求(売掛)】請求書No.XXXX(発行日:〇月〇日)200,000円(税率:〇%)
【当社支払(買掛/未払)】貴社請求書No.YYYY(発行日:〇月〇日)150,000円(税率:〇%)
【相殺金額】150,000円
【差引お支払(ご入金)額】50,000円(〇月〇日までにお振込み/ご入金予定)
上記内容で相違ないか、ご確認のうえご返信いただけますと幸いです。
何卒よろしくお願いいたします。
相殺領収書(相殺確認書)は必要?

相殺は入金を伴わないため、領収書の発行が法的に必須というわけではありません。
一方で、社内統制や取引先の運用上、相殺の事実を残すために、次のいずれかで対応することが多いです。
・相殺通知書(メール含む)
・相殺合意書
・相殺明細(対象請求書番号の一覧)
・(必要な場合)相殺確認書
また、文書を作る場合は、印紙税の観点からも、「金銭を受領した」旨の表現を避け、相殺による債権債務の消滅・充当の確認であることがわかる名称・文言にするのが安全です(課税文書該当性は記載内容に左右されます)。
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また、請求書での表示についても、合計金額を算出した後、入金繰越金額を差し引く形で表示されます。これにより顧客にも過入金分が次回請求で相殺されていることが明確に伝わります。
▼請求管理ロボで発行された相殺請求書の例

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