健康診断費用は法人に請求できる?福利厚生費になる場合・ならない場合の違いとは

請求業務

Facebook にシェア
Pocket

日々の健康を守るために定期的に受診したい健康診断。会社に所属して働いている人はその費用を会社に請求できるのでしょうか。また、請求できるのであれば何か条件はあるのでしょうか。

本記事ではそんな健康診断について、会社における健康診断の概要から会計上の規則、健康診断実施時に会社が注意すべきことまで解説します。ぜひ健康診断を手配する際や受診する際、経費計上する際などの参考にしてみてください。

会社の健康診断は義務?

健康診断は労働安全衛生法によって会社に対して実施が義務付けられています。「従業員が健康に働けるように」という目的のもと複数種類の健康診断が法律によって定められており、会社は各健康診断の種類ごとに決められた頻度やタイミングで実施する必要があります。

一般健康診断と特殊健康診断がある

健康診断には大きく「一般健康診断」と「特殊健康診断」の2種類があります。それぞれの特徴について見ていきましょう。

● 一般健康診断
職種を問わず会社に実施が義務付けられている健康診断です。一般健康診断には5つの種類があります。

全従業員が対象で年に1度の実施が義務付けられている「定期健康診断」、全従業員が対象で雇入れ時に行われる「雇入れ時の健康診断」、特別な業務に常時従事する従業員が対象の「特定業務従事者の健康診断」、海外派遣が6ヶ月以上となる従業員と海外勤務から帰国し国内で業務に就く従業員が対象の「海外派遣労働者の健康診断」、給食業務に従事する従業員が対象の「給食従業員の検便」です。

● 特殊健康診断
労働安全衛生法で有害と定められている業務に従事する従業員に対して実施が義務付けられた健康診断です。有害業務として定められている業務内容は、高気圧業務・放射線業務・特定化学物質業務・石綿業務・鉛業務・四アルキル鉛業務・有機溶剤業務です。

特定健康診断は、雇入れ時・配置換え時・6ヶ月以内に1度のタイミングで実施します。受診する項目は職種によって異なるため、健康診断を手配する際は従業員に受診させるべき項目を確認しておきましょう。

法律で定められている診断項目

労働安全衛生法で定められている健康診断の項目を、年に1度の受診が義務付けられている定期健康診断を例に解説します。必須項目は以下11項目です。

1. 既往歴及び業務歴の調査
2. 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
3. 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
4. 胸部エックス線検査及び喀(かく)痰(たん)検査
5. 血圧の測定
6. 貧血検査
7. 肝機能検査
8. 血中脂質検査
9. 血糖検査
10. 尿検査
11. 心電図検査

上記項目はあくまで定期健康診断における項目です。健康診断の種類によって受診が義務付けられている項目が変わるので、手配する際や受診する際は注意しましょう。

健康診断における請求管理の事例を見る>>

健康診断の費用

健康診断は保険適用外のため自由診療となります。その費用は地域や医療機関によってさまざまですが、1人あたり5,000円~15,000円前後に設定している医療機関・健診機関がほとんどです。

前述のとおり健康診断の実施は法律によって会社に義務付けられているため、原則費用は会社が負担します。しかし、会社が負担する費用はあくまで法律で定められている項目のみです。中には自己負担になる項目もあるため注意しましょう。後ほど自己負担になる項目についても詳しく解説します。

健康診断は経費計上できる?

法律で会社に実施が義務付けられている健康診断ですが、経費計上はできるのでしょうか。
続いて、健康診断費用の経費処理について解説します。

原則「福利厚生費」として計上される

従業員の健康診断費用は福利厚生費として計上できます。健康診断の受診によって、従業員の心身の健康を保つことができコンディションを整えて就業してもらえるため、福利厚生費として扱います。

福利厚生には法律で定められた法定福利とそれ以外の法定外福利があります。従業員の健康診断費用を会社が負担することは法律で定められていません。ですが、従業員への健康診断の実施は会社の義務であると労働安全衛生法で定められていること、従業員が健康診断を受けやすい環境整備の面から、福利厚生費の法定外福利としてその費用を会社が負担することが一般的です。

また、福利厚生費として計上するための条件として、全従業員が対象であること・常識範囲内の費用に留める・企業が費用を医療機関に直接支払うという条件があります。

支払いに関して言うと、一旦従業員に健康診断の費用を支払ってもらい後からその分を従業員に支給する、という方法では福利厚生費として計上できません。この場合は給与として計上しなければならないので注意しましょう。

会社負担になる項目

健康診断費用で会社負担になる項目は、労働安全衛生法で義務付けられている健康診断の項目のみです。その健康診断の種類は、前述の「一般健康診断」と「特殊健康診断」に「じん肺健康診断」と「歯科医師による健康診断」を加えた4種類です。

じん肺健康診断は、粉じんを吸い込むことによって引き起こされる肺の病気を予防するための健康診断です。対象者は現在常時粉じん作業に従事している従業員、過去に粉じん作業に従事していたが現在は従事していない従業員です。

歯科医師による健康診断は、労働安全衛生法によって歯等に有害な業務に従事する従業員に対して歯科医師に健康診断を実施し、結果を所管労働基準監督署長局への報告が義務付けられていることから実施されます。

会社負担にならない項目

一方、健康診断費用で会社負担にならない項目は追加のオプション検査です。オプション検査には胃カメラや子宮頸がん検査、乳がん検査などが含まれます。

前述したように、法律により会社へ健康診断の実施が義務付けられている背景から、その費用は原則会社負担です。ですが、オプション検査については法律で実施が義務付けられていないため、その費用は原則従業員の自己負担です。

ただし、産業医が就業判定を行う際にオプション検査の結果が必要と判断した場合には、会社負担とすることが望ましいとされています。

オプション検査を会社負担とする場合は、担当者の判断だけでなく従業員と会社の間で労使合意を行い、今後の取り決めを議事録に記録し策定するのが適切です。

健康診断実施時に会社が注意すべきことは?

ここまで健康診断の種類や健康診断費用の計上、会社負担の範囲について解説してきました。続いて、そのほかの健康診断実施時に会社が注意すべきことを解説します。

従業員の受診は「義務」

前述の通り、従業員に対して健康診断を実施することは労働安全衛生法によって会社の義務として定められているので、従業員全員が受診できるように手配しましょう。会社がこの義務を果たさなかった場合は罰金50万円以下が課せられるため、対象となる従業員全員に必ず法律で定められた健康診断を受けさせる必要があります。

また、アルバイトやパートといった非正規雇用者も以下条件を満たしている場合には、健康診断を実施しなくてはなりません。会社が条件を満たしている非正規雇用者に健康診断を受診させなかった場合も法律違反となるため注意しましょう。

● 条件:無期契約または契約期間が1年以上の有期契約(契約更新により1年以上になる場合を含む)により労働する者

現場で働く役員も「義務」

役員も従業員ですが、健康診断実施の義務の対象の役員と対象でない役員がいるので注意しましょう。現場で働いている役員の場合は、健康診断実施義務の対象となります。

一方、代表取締役社長は従業員ではなく事業主となるため、健康診断実施義務の対象にはなりません。基本的に現場で働いているかどうかで実施義務の対象か否かが判断されます。

ですが、法律的な義務は一旦置いておいて、実務上は現場で働いていない役員の健康管理義務が会社にないということはありません。役員の健康状態が悪化すれば、経営に悪影響が出る可能性があります。

なので「法律上の義務がなくとも、役員が健康診断を実施しないことで実務上のリスクを抱える」ということは念頭においておきましょう。

受診時間中も給与は発生する

健康診断の受診時間中も給与が発生することが一般的なので注意しましょう。会社への健康診断の実施義務は法律によって定められており、その背景から法律に定められた項目の健康診断費用を負担することが原則です。

ですが、健康診断を受診時間中の給与の支払い義務は定められていません。なので、健康診断を受診中の給与の支払いは労使間協議による取り決めに従うとされています。

ですが、従業員の円滑な健康診断実施を考えると受診時間中の給与を支払うことが望ましいとされており、大部分の会社が健康診断中の給与を支払っています。

中でも、特殊健康診断については業務の遂行に直接関わる健康診断のため、特殊健康診断を受けている時間は労働時間として見做されます。そのため給与の支払いも発生するので注意しましょう。

診断結果は適正に保管する

会社には従業員の健康診断結果を保管する「保管義務」があるため、健康診断結果は適正に保管しましょう。業務災害が疑われる健康被害が発生した際に、過去の健康診断結果を確認したり保健指導をしたりするために義務付けられています。検査結果の個人表が作成されてから5年間の保管義務があります。

あわせて、検査結果を保管するにあたっては従業員本人から承諾を得る必要もあります。確認する手間を省くために、健康診断の受診と健康診断結果の保管に関するルールを就業規則へ記載しておくと良いでしょう。

経費になるか迷いやすい健康診断のケース

健康診断を経費計上するにはルールが定められていますが、会社としてその費用を経費計上できるか悩ましい健康診断もあります。続いて、経費になるか迷いやすい健康診断のケースについて解説します。

人間ドックの費用

人間ドックはオプション検査と同様、法律に定められた項目以外の項目も含まれていることから基本的には従業員の自己負担になります。また、一般的に高額な費用となる人間ドックは、福利厚生費として計上する条件にあった「常識範囲内の費用に留める」から外れるため、一般的には自己負担です。

ですが、前述の通り人間ドックの費用は高額です。中には福利厚生の一環として検査費用の全額または一部を会社が負担するケースや、自治体・健康保険組合からの補助金を利用して一部を会社が負担するケースがあります。会社の就業規則やこれまでの担当者に確認し、人間ドックの費用負担をどのようにしていたのか把握しましょう。

再検査となった場合の費用

健康診断結果で所見が見つかった場合の再検査は、基本的に義務付けされていないため従業員の自己負担になります。費用を負担しない代わりに会社側でできる配慮をしましょう。例えば、再検査になった従業員が受診しやすいように再検査実施日に有休取得を促したり、業務調整をしたりするのが適切です。

ただし、健康診断の中でも特殊健康診断において「有所見(異常あり)」となった場合は、再検査を受ける義務があり、その費用も会社負担となるため注意しましょう。

経費精算に万全を期すなら「請求管理ロボ」におまかせ

このように従業員の健康診断費用の経費精算も担っている経理担当者ですが、中でも煩雑になりやすい請求管理業務をシステムにまかせることで、経理の日常業務に余裕が生まれるためおすすめです。

そこでご検討いただきたいのが「請求管理ロボ」です。「請求管理ロボ」は請求管理業務を自動化するクラウド型自動化システムです。請求書の発行から送付、集金、入金消込、未収金管理、督促などを一括管理できます。

請求管理業務の一括管理・自動化することで、経理担当者の負担軽減につながります。また、管理情報はリアルタイムで反映されるため状況をいつ誰がどこからでも確認可能で、透明性の高いキャッシュフロー管理を実現します。

健康診断における請求管理の事例を見る>>

まとめ

ここまで会社で実施する健康診断について解説してきましたが、その重要性や経費計上の条件などご理解いただけたでしょうか。健康診断の実施義務は全従業員が対象のため、その経費精算の数は膨大なものになるでしょう。

しかし、経理担当者の業務内容は他にも多数あり、さらには一つひとつの業務に正確性が求められます。会社としては、すこしでも経理担当者の負担を軽減して業務に集中しやすい環境づくりをしたいところでしょう。

DX化推進の動きもあるため、システム導入によって自動化できる業務はシステムに頼り、経理担当者はマンパワーが必要な業務に集中できるように業務改善を図ってみてはいかがでしょうか。ご検討の際はぜひこの記事を参考にしてみてください。

監修
【監修】藤田 豪人 株式会社ROBOT PAYMENT 執行役員

2019年当社に入社、執行役員に就任。
当社に入社以前は株式会社カオナビにてコーポレート本部長、複数の情報IT企業にてCMOなどを歴任。
現在は、当社のフィナンシャルクラウド事業及びマーケティング全般を統括。